第20話 スキル獲得

 無事に家を借りる事ができ、俺は予定どうりに女神神殿へ行ってメインの第十一競争の表彰式を予知した。


 俺の【予知】には表彰される、十一番のゼッケンをつけた女の子がはっきりと視えた。

 投票するための個室へと入場する。


 不思議な部屋だった。

 個室の中は、一切の念話やスキルの使用ができない構造になってるそうで、勿論完全防音で人との会話が遮断されている。


 この部屋に入る前にすでに俺の【予知】は結果が見えているので関係無いんだけどね。

 でも……【予知】をした結果が人に喋れないとか、文字を書こうとしても駄目だったりだとか、俺だけにしか使えない状況になるって事は、このスキルを手にしたら、他のスキルが取り放題になってしまう事は、女神オグリーヌもわかっていたんではないだろうか? その上で俺にこのスキルを与えたことに意味があるのか?


 一番から十二番のボックスがあり、自分で予想した任意のボックスの中にカードを差し込むと投票完了だ。


 競争が始まる。

 今日のメイン競争はA級の千五百メートル走だ。


 俺の賭けた十一番の女の子は、三周回までを中断待機で走り、四周目に突入すると一気に先頭に躍り出て、そのまま問題無くゴールした。


 すると、俺の差し込んだ十一番のボックスからカードが戻される。

 ホタルからアルファベットの文字だけは教わっていたので、Iランクになっている事が確認できた。


(……折角当てても、ギフトの内容が読めねぇ)


 だが、無事に文字列が二列になってるので、増えてるのは間違いないな。

 あれ? 

 ここに書き込まれてるのを読まないと、何のスキルを授かったか解らないなら、スキルが千個とかなったら、どうやって読むんだ?


 やはり、まだホタルと行動しないと色々不便だな。

 

  ◇◆◇◆ 


 屋敷へと戻ると、ホタルが奴隷の四人の女の子たちを使いながら部屋の掃除と片づけをしていた。

 アダムさんは、キッチンの使い勝手を確かめながらハンバーガーの試作品を作っていた。


 パンも焼ける大型のオーブンが備え付けてあったので、生地をこねてパンを焼くところから始めた本格的なハンバーガーだ。

 パンのサイズも日本で見慣れたサイズよりは一回り大きい。

 

 肉のパティは、ミノタウロスの肉を使用した商品だ。


 ミノタウロスの赤身肉に脂身を加えて曳いたミンチの肉は安くはないが、ハンバーガーで提供する程度の量であれば、五百ゴル程度の売値で十分にやって行けるという判断だった。

 勿論、チーズやトマト、レタスなどのバリエーションによって値段は上がるみたいだけど、千ゴルを超えるような設定にはならないと言っていた。


 問題はスパイス関係だが、胡椒以外はこの国のマーケットで手に入る物で、味を調えたと言っていた。

 手に職があるっていいよな。


 部屋の片付けも大体終わり、みんなでアダムさんの作ったハンバーガーの試食をしたが、流石プロっていうか日本で食べたハンバーガーよりはるかに美味しい仕上がりだった。


 アダムさんとホタルが打ち合わせをして、メニュー表を書きだし、メインの売り子をするニャルと、フローラとフラワーにも商品の説明と売り方をレクチャーしていた。


 奴隷の四人の女の子達にも勿論、試食をしてもらったがスパイシーなパティや、生野菜の部分にかかっている手作りのマヨネーズの味に感動していた。


「こんな商品見たこともありません。絶対売れますよ! 私たち奴隷なのにこんなに美味しいものを食べさせていただいた上に、仕事もやりがいがありそうなお仕事を申しつけていただいて、本当にありがとうございます」


 と、幸せそうな表情をしている。

  

 アンドレ隊長は、俺が女神神殿に行ってる間にベーアとカールさんとミッシェルを連れて、武器屋へ行って来てたみたいでベーア用のタワーシールドを買ってきていた。

 熊獣人のベーアは女性だが力は凄く強くて、俺だと持っただけでよろけるような盾を軽々と持っていた。


 俺も、ステータスが上がれば、持てるようになるのか?

 アダムさんのハンバーガー屋台は、什器の準備などをして一週間以内くらいでオープンにこぎつけたいという事だ。


 ハンバーガーの試食を終えて、俺は自分の部屋へホタルを呼んで話していた。


「先輩、問題無くスキルの獲得は出来たみたいですね。先輩のお告げカードですけど、今日増えたスキルは、知能プラス十っていう能力ですね。ランク一のスキルです。でも先輩?」

「ん? どうした」


「明日も当たれば、四つになるんですよね? スキル」

「そのはずだが」


「その場合って、お告げカードの枠は四つに増えるんですか?」

「あれ? どうなんだろう。当たるたびにひとつづつランクが上がるって聞いたような気がするけど」


「じゃぁ、増えても使えないスキルがあるって事なんですか?」

「どうなんだろうな? 明日はホタルも二時から一時間ほど神殿に付き合ってくれよ。神殿の神官に聞いたら教えて貰えるだろ?」


「それと、もう一つ気になるのはレベルが上がったスキルの場合なんですけど、使ったスキルの個数分の数と判断されるのか、合成しちゃったら一つの扱いになるのかがわからないですね」

「あー確かにそうだな。まだわからない事が多いな。まぁ毎日やって行けばそのうち疑問点は解消するだろ?」


「そうですね」


 ◇◆◇◆ 


 そして翌日、メインレースに合わせてホタルと二人で神殿へと出かけた。

 フローラとフラワーには広い屋敷の掃除を頼んである。


 ベーアはアンドレ隊長たちと狩りに出かけているが、ニャルはまだ屋台が出店してないので掃除の手伝いをしてくれてる。


 レースは問題無く的中させて、スキルが四つに増えたがお告げカードのランクはHだった。

 そして……スキルの装備は三個しかできない。


 だが、それは反映されるスキルが三個同時までというだけで、カードを持った状態で意識すればアクティブスキルが切り替えられる仕様だった。

 ただし、意識しないといけないから自分で所持しているスキルをちゃんと把握してないといけない。

 今はまだ少ないからいいけど、増えてきたら大変だな。


 今日手に入ったスキルはランク一の攻撃力プラス十ともう一つはランク二のポータースキルだった。


「ポーターってことはあれか? 空間収納みたいなスキルなのか? ランク二って低いな便利そうなのに」

「鑑定が無いから、詳細がわからないですね。鑑定もアダムさんのレベル一だとほとんど意味がないし……」


「でも、この神殿のスキル売り場に行けば教えてもらえるんじゃないか?」

「そうですね、聞きに行きましょう」


 売り場に行って、馬獣人の売り子にポータースキルのことをたずねた。


「ポータースキルは、レベル一だと一辺一メートルの立方体の容量が、体感重量無しで所持する事ができます。レベル二になれば一辺二メートルの立方体の容量になるので、使い勝手一気にが広がります」


 想像どうりだけど、これがレベル十とかなったらめちゃ凄そうだな。

 時間経過は普通にあるみたいだし、その機能は上位スキルに進化させれば追加能力でつくのかもしれないな。


「自分のステータスや、カードの詳細を見るのに必要な能力は何があるんですか?」


 ホタルが続けて聞いてくれる。


「鑑定のレベル三でステータスが見えるようになります。カードの詳細はレベル五の鑑定で見えます」


 やはりあるのか……ステータス。

 ホタルに頼んでもう一つ聞いて貰った。


「お告げカードのランクが上がってもステータスは伸びないのですか?」

「ステータスの上昇は、自身を鍛えるかスキルでしか上がりません。カードのランクはスキルをより多く設定できますので、それによるステータスの上昇がしやすいということですね」


「解りました。ありがとうございます」


 その質問の返事を聞いて、俺は満足し屋敷へと戻った。

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