第13話 ギャンブリーの街

(ホタル視点)


 私はヨーゼフさん家族と一緒に街へと向かった。

 街の門で衛兵さんに入場料の五千ゴルを払い、街への入場を果たす。


 仮入街証を渡され「一週間以内に商業ギルドか、冒険者ギルドで正規の身分証明書を作らなければ、仮入街証は無効になるのでお気を付けください」と言われた。


 ヨーゼフさんに確認する。


「一週間って何日ですか?」

「闇、火、水、風、土、光、聖の七日だよ、魔法の属性の名前が付いている」


 門をくぐり街に入ると、マルサさんとマーニャちゃんは自宅へ帰っていった。

 別れ際にマーニャちゃんが「チョコレートとっても美味しかったよ。また食べたいな」と言ったので、チョコレートは無かったけど飴があったので渡した。


「これは飴ちゃんだよ、これも甘くて美味しいけど、噛んで食べるんじゃなくてお口の中で舐めて溶かすようにして食べてね」

「お姉ちゃん、ありがとう」


 満面の笑顔で、マルサさんと家に戻って行った。

 私は、ヨーゼフさんと二人で商業ギルドへと向かう。


 両替と書いた看板があるところに、ヨーゼフさんと二人で並んだ。

 身分証が必要と言われ、仮入街証でいいか確認を取ると、それでは駄目だと言われたので、商業ギルドで身分証の発行を頼むと「小金貨一枚かかります」と言われた。


「あら、足りないよ。ヨーゼフさんは身分証はあるんですよね?」

「当然だよ。俺が先にさっきの金貨を両替して、ホタルに小金貨一枚を渡すから、それで登録しな」


「すいません。後でちゃんと返しますね」


 ヨーゼフさんがカジノコインの両替を頼むと、金の純度や重さを調べられて、一枚が二十五万ゴルの価値があると解った。


「ホタル、こんなに高く売れるんなら、小金貨は返してくれなくて大丈夫だ」

 

 そう言いながら、小金貨を一枚渡してくれた。

 仮入街証を提示して、商業ギルドの登録を済ませる。


「この商業ギルドの会員証があれば、登録された街の出入りは無料になります。この街以外では一律、千ゴルの入場料となります。ホタルさんはFランクの商人として登録されましたので。街の広場で露店を出す権利を持たれました。商店用のワゴンの貸し付けなどもギルドで行ってますので、ご利用ください。広場の出展料金は売上の十パーセントとなります。売上一千万ゴルを達成されればランクが上がります。Eランクに上がれば他の街への行商の資格を得ることができますので頑張ってくださいね」

 

 登録が済んだので早速、カジノコイン十枚をこの国の貨幣へと両替して貰った。

 金貨十五枚と、小金貨百枚で受け取る。


 ちょっとお金持ちになった気分だ。

 ダニエルさんは五百枚持って来てたって言ってたから、全部で一億二千五百万ゴルか……結構な大金だったんだね。


 でも金貨で十キロとか普通に重いよね。

 そう言えば一億円分を一万円札にしたら十キログラムって聞いた覚えがあるから、あんまり変わらないのか。


「ヨーゼフさん。この街で過ごして違和感のない服を買いに行きたいので、案内していただけませんか?」

「ああ、いいとも。金貨のお陰で二か月分の稼ぎと変わらないくらいの収入になったから、どこだって案内するよ」


「そう言えば宿屋さんは、いくらくらいかかるんですか?」

「そうだな、安い所なら個室で食事無しなら三千ゴルくらいからあるけど、ある程度綺麗な所なら一泊七千ゴルくらいはするかな。朝と夜の食事付きで一万ゴルくらいが普通だと思うよ」


 どうやら、この国のゴルという通貨の価値は、ほぼ日本円と同じ感覚で考えてよさそうかな?


「そう言えば冒険者ギルドの登録料金はいくらくらいかかるんですか?」

「冒険者ギルドだったら、商業ギルドの半額だね五千ゴルで登録ができるよ。でも他の人達はこの国の言葉が解らないんだろ? 少し大変かもしれないな」


「そうですね、でも基本私が通訳しますから大丈夫です」

「そうか、それなら安心かもしれないな。依頼は受けなくてもモンスターの素材の納品をすればお金は稼げるしね」


 その後、衣料品を買い揃え、宿屋と冒険者ギルドの位置を確認した後で、ヨーゼフさんにお礼を言って別れて、作業小屋で待ってる先輩たちの所へと戻って行った。

 六人分の服一式は結構、大荷物だったけど、思ったよりも重くは感じなかった。

 もしかしたら、ギフトカードを手にしたことで、若干でもステータスの向上の効果があったのかもしれない。


「お待たせしました。カジノコインは一枚が二十五万ゴルの価値になりましたよ。ざっと二千五百USドルくらいの価値です」

「そうか、それなら当分は資金に問題は無いな」


 金の価値が地球と変わらないくらいに高かったことに一同が安堵した。

 ミッシェルが『ダービーキングダム』の中にある遺品や残りのカジノチップをどうするのかを話題に出した。


「助かってくれれば一番いいんだけど、可能性は極めて低い、あのまま放置されてても、この世界の人間に荒らされるだけだし、それなら俺達が有効活用するべきだだろうな」


 すると船のクルーの二人、アダムさんとダニエルさんが聞いて来た。


「もし、ですよ。地球に戻る事が出来れば遺品は渡したいと思いますが、それは聞き入れてもらえますか?」

「二人の言いたい事は解かるが、あの船の乗客たちは誰もがそれなりに社会的ステータスを持った人たちだった。誰かの遺品だけを持って帰るような事があれば、それはその対象に選ばれなかった人の遺族から、猛烈な抗議が来る事が予想できないか? それならば誰の遺品も持ち帰らずこの世界で処分をするべきだ。二千人分の遺品を持って歩く事は不可能だからな」


 少し、しんみりとなったけど、意見としてはアンドレ隊長の言うことが正論だと思う。


 場の空気を変えるかのように先輩が話し始めた。


「ホタル、ヨーゼフさんの言ってた女神の神殿の場所は解ったのか?」

「あ、それは聞いて無かったですね。でも、街に行けばすぐに冒険者ギルドに向かいますから、そこで聞けば大丈夫だと思いますよ」


「そっか、この国で暮らさなければいけない可能性を考えたら、ホタルのスキルが一番有用だったな……」

「言葉は一年も暮らせば嫌でも覚えちゃいますよ」


「そんなもんなのかな?」

「私が外国語を覚えたのは外国人の友達を沢山作って、会話をしてたからですし、先輩だってきっと覚えますって?」


「疑問形で言うなよ。全然自信がない」

「みなさん、日が暮れる前に町に行って冒険者ギルドの登録とか済ませたいので、早く服を着替えて下さいね」


「ああ、了解だ」


 小屋の中ではミッシェルと私だけになって、男性陣には外で着替えて貰った。

 ミッシェルは背も百七十センチメートルくらいあって、金髪でそうとうな美人さんだ。

 鍛え上げられた肉体は同性の私が見ても、ほれぼれしちゃう感じだ。

 筋肉質なんだけど、出るとこは出て絞るところは絞っている。

 とても羨ましい……


 全員が着替え終わったので、持ち物を持ってギャンブリーの街へと向かった。

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