第31話 先輩冒険者に絡まれる
ノックスの街で冒険者登録を済ませたところだ。
受付嬢にお礼を言って、受付から離れる。
と、そのとき。
「おいおい。何だよ、オッサン。見たところ鍛えられてはいるが、丸腰じゃねえか」
「ギャハハハハ! 剣を買う金もねえのかよ!」
「何なら、俺の実家のクワでも貸してやろうか? その方がお似合いだぜ!」
そう下品な声をかけてきたのは、3人組のチンピラだ。
なるほど、俺が丸腰だから侮っているわけか。
先ほどから感じていた不穏な視線の正体は彼らのようだ。
侮られて絡まれるのは、めったにない経験である。
俺の鍛えられた体を見て絡むような命知らずは、地球にはほとんどいない。
せいぜい、銃を突きつけられて金を要求されたことが数回あるぐらいか。
懐かしい思い出だ。
「なんだ、お前たちは? その貧相な腕で剣を振れるのか? その辺の枝を振るのが精一杯な筋肉しかないようだが」
俺はそう言う。
彼らの腕は、実際のところ太くはないが細くもない。
日本のチンピラ基準でいえば、十分に上位に入るだろう。
しかし、挑発のためにあえて過小評価しておく。
少しは面白いことになるかもしれない。
「ああん!? てめえ、言ってくれるじゃねえか!」
「ギャハハハハ! 泣く子も黙る、俺たち赤い三連星にケンカを売るとはな!」
「覚悟はできてんだろうな!」
赤い三連星とやらの3人組が、凄みながら俺に近づいてくる。
腰に携えている剣は、どうやら抜かないようだ。
しかし、迫力がないな。
彼ら程度の肉体で凄まれても、大した脅威を感じない。
彼らが俺に絡むのであれば、銃か刀剣ぐらいは必須だと思うが。
格闘技で俺に勝てると思うな。
「リ、リキヤ殿……。ここは謝った方が……。彼らはCランク冒険者。実力は確かです」
受付嬢がそう言う。
Cランクは、中堅だ。
先ほどの説明では、E~Aランクまであるそうだからな。
ちなみに俺は登録したてのEランクだ。
彼女は俺の体を見て強そうだと期待してくれていた。
しかし、さすがに中堅冒険者の3人を撃退するほどの実力はないと思っているのだろう。
俺も過小評価されたものだ。
「ふん。お前たちがCランクだと? このギルドは相当な人材不足のようだな。同情するぜ」
俺はそう言い放つ。
申し訳ないが、受付嬢の忠告は無視させてもらう。
「て、てめえ!」
「泣いて謝っても、もう許さねえぜ!」
「ボコボコにしてやらあ!」
男たちがブチ切れてそう言う。
沸点が低い。
こういう精神的な強さも大切なんだぞ。
「そ、そこまでです! それ以上の狼藉は許しません」
受付嬢がそう言う。
声が震えている。
冒険者を管理する受付嬢という立場でも、やはり荒くれ者の相手は怖いのだろう。
「ああん!? 受付嬢ごときが何を偉そうに」
「俺たちのやることに文句あんのか!?」
「夜道には気をつけたほうがいいぜえ! ギャハハハハ!」
3人組が受付嬢にそう凄む。
冒険者とはいっても、半分はチンピラみたいなものだな。
全員がこうなのか、コイツラがたまたまこうなのかは知らないが。
精神的に未熟な者が半端な力を手に入れると、このようになってしまう者も多い。
「ひっ! し、しかし、ギルド内で争いごとを見過ごすわけにはいきません……」
受付嬢がビクつきながらそう言う。
既に半泣きになっている。
ギルド内での争いごとがダメなのか。
それなら……。
「ふん。俺がやるのは、争いではない。稽古をつけてやるだけさ。この三馬鹿にな」
稽古ならセーフだろう。
実際、俺がこいつらに負けることはあり得ない。
彼らは最低限は鍛えられている。
日本で言えば、なかなか気合の入ったチンピラといったところだ。
技術や判断力を身に着け、さらに体をもっと鍛えれば、まだまだ強くなれる。
将来的に俺のライバルとなることも不可能ではないかもしれない。
若者を導いてやることにしよう。
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