第32話 三馬鹿との戦い
冒険者登録を済ませたところ、先輩冒険者3人組に絡まれた。
赤い三連星の名乗るCランク冒険者の男たちだ。
「ギ、ギルド内の修練場を使ってください……。外で争うと、衛兵が来ちゃうので……」
受付嬢の先導のもと、ギルドの修練場とやらに向かっている。
彼女は赤い三連星にビビっている様子だ。
こいつらの根性を叩き直して、堂々と仕事ができるようにしてあげないとな。
「こ、こちらです。木剣や防具も用意していますので、好きに使ってください」
ふむ。
修練場は、少し小さな道場といった感じの大きさだ。
部屋の隅には、木剣や防具が用意されている。
「へっへっへ。木剣だろうと、まともに当たれば骨の1本や2本は折れちまうものだぜ?」
「ギャハハハハ! まっ、せいぜい当たりどころがいいことを祈れ」
「覚悟しな」
三馬鹿がそう言う。
「へっへっへ。ここは俺にやらせてもらうぜ」
三馬鹿のリーダー格が木剣を手に取り、そう言う。
「そりゃねえよ、リーダー!」
「俺にやらせてくれよ!」
残りの2人がそう食い下がる。
生意気な新人をボコるという遊びは、さぞや楽しいだろう。
その権利を取り合っているわけか。
「おいおい。まさか、1人ずつ俺と戦うつもりだったのか? お前らごときが、1対1で俺に勝てるわけがないだろうが」
俺はそう言う。
まさか1対1で倒せると思われるまで侮られているとは思わなかった。
まあ、1対3でもまず負けないだろうが。
「なにい?」
「いい度胸だ、ルーキー」
「1対3で勝てると思ってんのか? バカが」
三馬鹿がそう言う。
リーダー以外の2人も木剣を握る。
「御託はいい。さっさとかかってきな」
チョイチョイ。
俺は手招きして、彼らを挑発する。
「ちっ! くたばれやコラ!」
リーダー格がそう言って、俺に斬りかかってくる。
三馬鹿の頂点に立つだけあって、動きはそこそこか?
村の若者や盗賊団メンバーよりも少し強い感じだ。
とはいえ、期待外れだな。
Cランク冒険者というからにはもう少し強いかと思ったんだが。
俺は特に回避動作も防御体勢も取らず、棒立ちで木剣を受ける。
バキッ!
木剣が折れ……ない?
木剣ごときを俺の体に勢いよく打ちつけて、折れないはずがないのだが。
フィーナを襲っていた盗賊たちの金属製の剣を受けた際には、あっさりと折れていた。
あのときとの違いはなんだ?
振り下ろされる速度自体は、盗賊たちよりもこの冒険者たちのほうが少し速い。
「ほう……。俺の体を打ち付けて、木剣が折れないとはな。なかなかいい素材を使っているようだ。それとも、お前が何かしたのか?」
俺はそう問う。
気術や魔法などという不思議な技術がある世界だし、俺の知らない別の技術がまだまだあっても不思議ではない。
「ちっ! 気を込めた攻撃をモロに受けて、なぜ平然としてやがるんだ」
「ば、化け物かよ、このおっさん」
「ふざけやがって。何かの間違いだぜ!」
三馬鹿がそう言う。
俺の問いにまともに答えてくれていないが、ヒントはあった。
どうやら、相手の木剣には”気”とやらが込められているようだ。
身体能力を向上させる気術とやらの応用だろうか。
「おらぁ!」
「くたばりやがれ!」
「ぬうんっ!」
三馬鹿が、気を取り直して俺にラッシュをかけてくる。
もちろんそのまま受けてもいいが、何度も受けているとさすがに木剣が折れてしまうかもしれない。
剣が折れると、試合が終わってしまう。
もう少しこいつらの技を観察したい。
ここは、回避する。
そして、俺は回避しつつ三馬鹿の木剣に目を凝らす。
「ふむ……。なるほど。確かに、木剣が何かで覆われているようだ」
俺はそうつぶやく。
木剣の周りに何やらオーラのようなものがある。
これが気とやらだろう。
「気術も知らねえ素人かよ!」
「けっ! Cランクである俺たちに勝てると思うな!」
「くたばれやあああぁ!」
三馬鹿が最後の一撃とばかりに、多めの気を木剣に込めて攻撃してくる。
気術の雰囲気は掴めた。
そろそろこの試合を終えることにしよう。
三馬鹿の攻撃はそのまま受けてもいいし、回避してもいい。
だが、ここはーー。
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