第60話 管狐ダイエット
ダイエットという名の減量に失敗し通しだった丸山氏は、何と半年で六十キロものダイエットに成功してしまった。
そんな驚異的なダイエットを可能にしたのは管狐だったのだ。丸山氏は何と管狐を自身の身体に憑依させ、それにより痩せたのである。その話はまるで、かつての女優やオペラ歌手が痩せるためにサナダムシを呑んだという逸話と恐ろしいほどに酷似していた。
実際問題、管狐を憑依させたその日から、丸山氏は効果を実感したのだという。管狐も消化を進めているという関係上、食べる量はむしろ若干増えたくらいだった。しかしながら胃もたれするとかそう言った気配は感じられなかった。
そうこうしているうちに、丸山氏は食べる量を減らす事無く減量に成功してしまったのだ。
また、管狐は管狐らしく神通力らしきものも具えていた。つまるところ丸山氏が仕事で行き詰まった時や何か解決したい事柄が起きると、管狐が助言してくれたのだ。それもかなり的確に。
これはもう管狐さまさまじゃあないか……丸山氏はそう思ってホクホク顔だった。何せその頃には人望も出てモテ始めてもいたのだから。
とはいえ、それだけで話が終わるほど世の中は甘くはない。
憑依していた管狐が、徐々に丸山氏の行動をコントロールし始めたのだ。とはいえ管狐が邪悪な性質ではない事は丸山氏も知っていた。むしろ管狐が主導権を握って行動を起こしていた方が、何かと周囲の人物も感心したり喜んでいたりしたのだから。管狐もどちらかと言えば、「こうしたほうが宿主も喜ぶであろう」という考えを持って動いていたらしいのだから、尚更ややこしい話だった。
もっとも、丸山氏は段々とその管狐の事を厄介に思い始めていたのだが。
そんなわけで、丸山氏はつてを頼って憑依した管狐を外してもらう事にした。桐谷とかいう術者は、どんぶりからうどんの麺をつまみ上げるかのような気軽さで丸山氏から管狐を外した。管狐は抵抗もせず、観念したフェレットのようにぶら下がっているだけだった。
あの管狐がどうなったのかは丸山氏も解らない。しかしあの管狐なしでの生活はどうなってしまうのだろうか。丸山氏はそのような不安を抱えていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます