第56話 無理ゲーは死にゲー
俺はかつて無理ゲー専門のオタクであり、そう言った同好の士も少数だが存在していた。難易度がえげつない無理ゲーの理不尽さを一周回って笑い、或いは無理さ加減を攻略して楽しむ。そう言った事に力を入れていたのだ。
友人から教えられたそのゲーム――申し訳ないが名前は教えられない――は、ある種の異質なゲームだった。オンラインにつなげるRPGなのだが、所謂MMORPGとは異なり普通のRPGに近かった。しかし難易度が高く、よくゲームオーバーになりやすい。
異質なのはゲームオーバーになった時のコンティニュー画面だ。画面上に課題が示され、その課題を行うと続けることができるようになるという仕組みだったそうだ。課題を行った証拠に画像を然るべき場所にアップすればまたゲームが続けられるという仕組みらしい。
「すべてを喪ってもゲームを続けられますか――?」その文言と共に課題が示されると友人は言っていた。その課題もまた次第に難易度が上がっていくのだという。始めはデスクの片付け、部屋掃除、一品料理など他愛のないものだが、途中から好きな本を手放す、思い出の品を焼き捨てるなどという物があったらしい。
……そう言えば久しぶりに友人宅に行ってみたのだが、あまりに殺風景になっていたので驚いた。何より可愛がっていたはずの猫がいない事に驚いた。あの猫はまだ四歳くらいで、元気な年頃のはずなのに。
※
嘘かまことか定かではないが、あのゲームの最後の課題として、おのれの生命を断つ事を迫られる事すらあるのだという。だからこそ「すべてを喪っても……」などという文言が出てくるのだろう。
俺は無理ゲーの世界から身を引いた。しかし友人がどうなったのかは知らない。
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