第48話 クリア過ぎた夢
彼女の最近の悩みは、夢がどうにも味気ない事だった。
少し前までは不眠に悩まされていたのだが、最近は刺激的な出来事――カラフルでオウムのように喋る電話ボックス、見知った職場なのに間取りやフロア数まで秒で変化する驚きのリフォームぶり、目もくらむような高所での買い物――が多くてよく眠れるようになっていた。
それで夢を見る余裕も出来たのだが、やはり人の悩みや欲望は限りない物なのかもしれない。
不眠から脱した彼女の夢は、驚くほど単調な物だった。職場に向かい、仕事をして、帰宅してくつろぐ。他にもあるのかもしれないが、印象的なシーンは薄い。薄いにもかかわらず妙に記憶に残る。そんな夢ばかり見るのだ。
それならば夢を見ない方がましだと思う位に。
診療所で治療を受けた彼女は思いがけぬ事を知ってしまった。
不眠は治ったものの、どういう原理なのか夢と現実が彼女の意識の中で逆転していたのだ。
すなわち、刺激的で充実した日常こそが夢で、単調で眠気を誘う夢こそが現実だったという事である。
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