第45話 生ごみリサイクル装置

 関西某所の某研究室の一角で、その装置は誕生した。

 名前はシンプルに生ごみリサイクル装置である。その辺の堆肥でも作るのに使われていそうな凡庸なネーミングのそれは、しかし途方もない性能を誇る装置だった。

 その装置のリサイクル効果は分子レベルに及ぶのだ。詳細なメカニズムは不明であるが、ごみとして入れた物がごみではない状態で戻ってくると言えば良いだろう。

 残飯であれば食する前の料理になり、金属片であれば元の缶などに戻る。それだけの性能を誇っていた。

 二十一世紀の大発明と言っても良かっただろう。


「さて、性能テストも行ったし、実際のごみで試してみようか」


 何度も性能テストを行ったのちに実機試験に移るのは当然の事であろう。博士のその言葉に研究員たちは頷いた。

 のみならず、気の早い研究員の一人は早々に研究室を飛び出し、ゴミステーションに棄てられたごみを回収しに向かったのだった。


 研究員の一人が用意したのは三十リットル袋に入れられたごみだった。満面の笑みで装置にごみを投入するのを、博士も助手も研究員たちも見つめていた。

 ごみの主は肉の下ごしらえに奮闘していたのだろうか? 鉄と微かな腐臭が周囲に漂っていた。


 処理を行っている間、装置の電子音とは異なる音声が中から聞こえていた。聞きなれぬ音に研究室のメンバーは首をかしげていたが、その正体はすぐに判明した。

 生ごみリサイクル装置の下部から、一羽の小鳥が飛び出してきたからである。

 

 実機テストでリサイクルされたのは、猫二匹と兎三羽、そして小型のインコ八羽だった。

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