第15話 ドッキリその後

 某テレビ局がある年に収録したドッキリ映像はお蔵入りになったまま、伝説のVTRと化していた。お蔵入りになっているからもちろん内容を見た者は殆どいない。それでもお蔵入り、曰く付きと言う内容は皆の心を魅了するらしく、真贋はさておき件のVTRの内容という物は噂として伝播していた次第である。もちろん、噂をする者も噂を聞く者もそれが真実なのかはっきりとは知らない。ただただ、噂だけが浮きあがっているだけなのだ。


 ドッキリの内容自体はごくありふれた代物である。真夏の夜、肝試しで有名な跡地にて「仕込み」のお化けがターゲットを驚かせるという内容だった。

 予算の関係か当時の潮流なのか、ターゲットは芸能人や有名人ではなく、一人の冴えない若者だった。単なるサラリーマンだったとか、フリーターだったとか、あるいは画家だったという憶測まであるがそれは脇に置いておこう。

 件の青年はやはりドッキリがドッキリと知らずに驚き、慌てふためき、それらの様子は余すところなく収録されていた。そこまでは何一つ問題ないのだ。

 問題はドッキリの終盤、ネタばらしの部分だった。ネタばらしだと聞いた直後、青年は安堵したような表情で呟いたのである。


「ああ、ドッキリだったんですね。思っていた以上にドッキリが多かった気もしたのですが……スタッフも張り切っていたのかと思いました。ですがドッキリの度合いに濃淡があって、地味なのと派手なのと交互にあったからなんでだろうと思ったのです」


 青年の言葉にスタッフたちは固まっていた。彼らが用意したドッキリはそう多くはなかったのだ。青年の言を借りれば割と派手目なドッキリが、ドッキリだったのである。


 ずっと後になって判明した事であるが、件の青年は怪現象を引き寄せやすい体質だったという事である。但し、彼が今何を行っているのかは誰も知らない。 

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