ギルド

 ギルドに足を踏み込むと、暴言と思われる言葉を喚き散らしている男がいた。昔の嫌いな彼を思い出させる男に、僕は気が悪くなった。男は机に手を置いて、威圧感を与えていたが、ギルド職員の女性はそんな脅迫に怖気ないよう、相手を真っ直ぐ見つめていた。が、本当は怖がっていると震える体で分かった。


「だから、本物と言っているだろ? 俺が言っているのだぞ! 分からないのか? ギルドはこんなにも落ちこぼれたのか? おい、お前。俺の話をちゃんと聞いているか?」


 出来れば無視をしたい気もあったが、今度は自分でも誰かの力になれると思った。その気持ちが偽物ではないと、心から思えた。ここで何をしなければ、自分も彼と同じ悪人になる。


「どうしたのですか?」

 と、僕は間に入った。


 人々の視線が一気に刺さるのを、感じる。怒っている男と、ギルド職員の女性もこちらを見た。女性は救われたような顔をしていた。


「あぁ? お前は誰だ…まぁ。いいか、こいつよりかは」

 と、男はギルド職員である女性を下げながら、カウンターに置かれたそれを指した。


「これだ。遺跡で見つけた物だ。だけど、こいつは偽物といちゃもんを付けるのだ」


「だって、それはっ」

 と、ギルド職員の女性は反論しようとしたが、僕に任せるように黙った。


 それは僕が手に入れた、あの魔銃と似た形をしていた。が、明らかに本物ではない雑な作りをしていた。おもちゃのレプリカのように。魔銃のような力も感じられない。

 男がお金を稼ぐために、偽物を本物と言っているのだろう。


「──これは偽物だな」


 僕の言葉に男は怒った。彼から取ったら、当然の反応だろう。ここで引き下がれば、お金にならないからである。


「おい、嘘を付くなよ。じゃあ、聞くがこれが偽物だと何故言えるのだ? これを否定するのなら、証拠もちゃんと言えるのだろうな」

 と、男はしつこく聞いて来た。どこかの子供のように。


 僕はこんな事で時間を無駄にしたくないので、収納魔法で本物の魔銃を取り出した。突然、現れた魔銃に二人は驚きを表していた。僕は魔銃を偽物の隣に置いた。


「見比べてみたら、分かるだろ? 形の出来が明らかに違う。これでも文句を言うのなら、ギルドに調べてもらってもいいぞ」

 と、僕は正論を打つけた。


 何も反論出来ない男は奥歯をぎりぎり噛む顔をした。ここまで言われた事がないのだろう。良くそんなので、金儲けをして来たものだ。

 だが、いきなり気持ち悪いほどに、爽やかな顔をした。


「そうだな。俺が間違っていたよ……っと、言うと思ったか? 全ては先に取った者の勝ちだ!」

 と、男は鼻で笑いながら、魔銃を奪い取ると走り去って行った。



 最初から演技が下手な人が、無理矢理演技をすると可笑し過ぎる。

 それに、その行動は強奪である。

 先に取ったと言うのなら、僕が先である。

 そんなに、何もせずに僕が価値ある物を置いていると、本気で思ったのか?


 と、僕は言いたくなった。

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