エギーナの街

 目を開けると、どこかの家だった。交番のような。何も分からずベッドの上で止まっていると、扉が開いた。鎧を着て剣を吊るしている男が現れた。

 あの男を何となく思わせる男に、僕は後退った。心で思っていなくても、体がその恐怖を未だ忘れられずにいた。きっと凄く恐れている顔をしている僕に、その男は安心させようと、更に近付こうとはしなかった。


「君は私のような者から危害を加えられたのか?」

 と、男は聞いて来た。


 僕は頷きながら、収納魔法であの男の死骸を男の近くに置いた。突然、現れた死骸に驚きながらも、男は攻撃ではないと知り、緊張を解いた。


「次からは何かをする時に教えてくれ」


「分かった」

 と、僕は無意識に布団を寄せながら答えた。


 男はあの男を見ながら、言った。

「グズー・グージランドじゃないか。我々が困っていた犯罪者を君は捕まえてくれたのか、ありがとうな。君の名前は何だい? 見た所お金がなさそうだが…」


 僕は少し悩みながら、答えた。昔の自分は自分の中では、死んでいるも当然であった。

「…リル。お金はないので」

 と、僕は収納魔法で今度は魔銃を取り出した。


「これはっ。リル、早く仕舞うのだ。これは遺跡に置かれている物で凄く価値がある。だから、本当にお金が足りない時に使うべきだ。グズーを捕まえた事で、このエギーナの街に入るお金はある。と言うか足り過ぎるから、残りは後から払うな。良ければ、こいつをもう一度、仕舞って別の所に運んでくれるか?」


「いいですよ」

 と、僕はグズーの全てを直した。血の一滴さえ戻すので、どこも汚れていない。


「その魔法も凄いなぁ……あっ。言い忘れていたな、俺はフィラーソンだ。付いて来てくれるか」



 僕は了解して、フィラーソンの後を追った。表の敷地にグズーを置き捨てた。部屋の中だと持ち運びも大変なので。グズーの姿を見て、この世界で悪人にはならないようにしよう、と思った。


「それ以外に何かあるか?」


「狼に角が生えた獣も狩ったのだけど」


「それは衛兵である俺より、ギルドに持って行った方がいいぞ。いいか、リル。衛兵には犯罪者を連れて行っていいが、獣を持っていっても大したお金にならない。ギルドは直線に進んだら、あるぞ。大きくて立派だから、すぐに分かるだろう」


 僕はフィラーソンに感謝を述べてから、去った。



 フィラーソンの言っていた通り、そこにはギルドらしき建物があった。冒険者らしい人々が集っていた。初めての世界に僕は心から、わくわくした。この世界を訪れてから、初めての事だと思った。

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