始めよう

 辺りを見渡せば、緑がひたすら続いていた。


 この世界に訪れてから、僕が望む事は何も起きていない。

 以前とは違い、報われる世界に行けたと思ったのに、この地の方が辛い。

 全ての計画が失敗していると思わせるほど。


 これまで何度も、空に向けて叫び続けた。


 自分の運のなさを恨んでいた。

 いつまで自分が不運である必要があるのかが、理解出来なかった。自分の他にも不幸になれる人々がいるのに。


 何故、自分だけに試練が与えられるのか? 


 今更信じない、神と言う存在に聞きたくなった。もう、遅いとしても、一度ぐらいは。


 嘆く一方で、新しい発見も多少あった。

 この世界では月がすごく青い。そして、星空の代わりに月の周りを飛ぶ、色別の星と思われる星があった。

 空が暗闇に包まれる事はなく、日別に見えるその星が違った。曜日のように、パターン性もあるようだった。

 纏めると、そこだけが別世界である感じをさせた。真新しい環境に放り込まれて、空しか眺められない僕は、その発見をした。

 でも、きっとこの世界の人々に取ったら、何も不思議ではないだろう。前の世界で誰も不思議に思わないように。



 と、言う風に綺麗事を並べている僕だが、今は、本当はそんな状況ではない。

 幻想が見え始めそうなほど、お腹が減っている。

 狩りなどした事のない、現代っ子。以前の世界で戦争が起きたら、すぐに死ぬと思い知らされる。

 まぁ。行って仕舞えば、今でも死にそうだが。この次の瞬間にも。時間が過ぎる毎に、命が削られている。


 今はひたすら、歩き回っていた。食べられるものを探しに、行く果てもなく。

 視界の先に、見覚えのある形をしているものが見えた。

 一瞬、目を擦って夢であるのか確かめたほど。


「銃じゃないか?」


 この世界に前の世界にあったものが、置かれている。使えるか、分からないけどないよりかは役に立つはずである。近くに人がいない事を確認してから、拾った。

 丁度使えそうな丈夫な紐を組んで、手作りのホルスターを作った。ポケットに入れていても、誤発するかもしれないからだった。だけど、中を確認しても、弾は込められていなかった。

 この銃にファンタジー要素があるのかな。と僕は期待した。



 そして、初めて願いが叶ったように、その込められた能力を理解した。たまたま、草木に向けて引き金を引いた時に、その草木が消えたのだった。驚いて、引き金を引いても何も起こらなかった。が、消した草木を脳内で想像する事で、再び表す事が出来た。

 この事から、この魔銃の二つの事が分かった。フロントサイトの焦点に当てた状態で引き金を引けば、取り込める。そして、脳内で取り出したいものを詳細に思い出したら、取り出せる。

 それは、正しく収納魔法と呼ぶものであった。


 普通の人なら、入れたものを全て思い出せないが、僕の記憶が何かを忘れる事は決してない。

 少しだけ、その幸せと発見を噛み締めていた。

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