だんだんダンジョン

みなはら

第1話 だんだんダンジョン


ダンジョン暮らし


  ○月×日


そろそろダンジョンも飽きたなぁ。


ダンジョンがそうつぶやいた。



ダンジョンに住んでいる魔王さまに電話する。


「はい、魔王です!

誰?私、誰にもプライベートの番号教えてないんだけどっ!」


「僕ダンジョンです。そろそろここにいるの飽きたから移動したいんだけど。

魔王さま、出ていってもらえますか?」


「えっ?えっ?

ダンジョン?」


「私が住んでるダンジョンって?

…生き物なの……!?」


「はい!生きてますっ♪」


「いつから〜〜〜っ!!!?

ここって、神に見捨てられた地にある古〜〜〜っい!

遺跡なんだけど!!」


「はいっ♪

その遺跡を含む周辺の土地全部が僕です!」


魔王さまの使っている携帯端末に情報データを送っておく。



「大陸じゃないの……。

神話を記した最古の古文書、魔典にもそんなの出てないわよ……」


「いやだなぁ。

いまの神さまが住み着く前からここにいて、ずっと寝てましたから」


「寝てたんかいっ!!

というか、神様ってここを作ったんじゃないの!!」


「引っ越して来たんですよ。

なんでも、前にすんでた借家(ほし)でうるさくしすぎて、

苦情が来て追い出されたとか(笑)」


「追い出されたんだ……神様……」


「借り入れの社宅だったらしいですよ。

勤め人の転勤族は大変ですよね〜、辞令で行ったり来たり(笑)」


「公務員の役人かい!!

まあ…、役人組織だよね神様社会って……(ため息)

私たちだって、まるで神様たちの下請けだし……(泣)」


「それで、僕ずっと寝てたんですけど、

神さまとかあなたたちとか、増えてきて騒がしくなってきたから起きちゃったんですよ〜っ。

「でも僕が動いたらみんながたいへんだから、あなたが生まれて魔王さまになる前から、じっとして魔王さまたちを見てたんですけどね、

もう我慢できなくなってきたから、動くことにしたんです」


「えっ!?

ええぇ〜〜〜っ!!!?」


「僕、生まれた時から魔王さまを見てて、

魔王さまのこと好きだから、

ちょっと声をかけて、どいてもらおうかなと思ったんですね♪」



「それで……、私たちが出ていくとして……、

その後はどうなるの?」


「世界は滅びます」


「はぁっ!?」


「滅びます。

未曽有の大災害が起こって」


「いやいやいやいや!!

神様が止めるよね?」


「止められませんよ〜(笑)

だって神さまよりも僕の方が強いですから♪

「それに、信仰する人が災害で全滅したら、神さまも弱くなるし、

きっと別のところに引っ越しますよ♪」



「というわけで、出ていってもらえますか?」


「行けるかっ!!

あんたっ、私のこと好きなんだったら、助けなさいよっ!!!

動かないでっ!!ちゃんとっ!!!」


「でも、もう辛抱できないんですよ〜っ!

何万年待ったと思うんですかぁ!

寝てないと退屈だし、眠れないし〜」


「助かる方法はないの……」


「一緒に行けば大丈夫かな〜?

僕が気をつければ」


「じゃあ、私を…、

私たちを連れて行きなさい!!!

魔族一党、あなたの世話になるわ!

「私を好きなら、それぐらい出来るでしょっ!!」


「いいですよ〜♪

お安い御用です(笑)」


「……お安いんだ…」





空飛ぶダンジョン


  ●月●日


そして、

ダンジョンと名乗っていた、竜のような、クジラのような生き物は、

魔王さまとその一行の住むダンジョンと魔王城を身体に収めたまま、大地から飛び立った。


大地(ほし)の上は、神代から起きたこともないほどの、大規模な地震や津波、火山の噴火といった災厄に見舞われていた。

ダンジョンがその身から振り落とした大地の欠片は、星全体、被害の比較的少なかった地域にも降り注いで、地表を穴だらけにした。


文明は完全に崩壊し、

大地は生態系が元のように回復するまで、長い長い年月がかかるだろうと容易に想像できるほどの被害を受けていた。



神々はダンジョンへと報復攻撃を行おうとしたが、

ダンジョンは、人からの信仰が絶えて弱りきった神々の攻撃に対して、それを歯牙にもかけずに一瞬で撃退して、神々を星から追い落とした。


神々は散り散りになり、ほうほうの体で逃げ延びてゆき、二度とこの星には戻らなかった。



星の上での浮遊生活を満喫し終えたダンジョンは、

魔王一行と共に大地へと降り立ち、再び大地を震わせて災厄をひき起こしながら地中へと潜り、深い眠りについた。


「次に起きるのは、56億7000万年後くらいかなぁ」と、魔王さまに言い残して。





おやすみダンジョン


  ○月○日


魔国興国


そうして魔族世界の祖となった魔王さまは、神々も敵も居ない大地で、

星や神々を滅ぼした、偉大な恐るべき存在として伝説となり、

後の世まで、その功績を永く語り継がれてゆくのである。




おわり



「なんで〜〜〜っ!!!?

私っ!被害者なのに〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」



-あとがき-

魔王さま、お疲れさまです(;´д`)

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だんだんダンジョン みなはら @minahara

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