第4話 我、舌鼓を打つ
申し訳ありません! 明日あさってと更新をお休みします。
思った以上に好評なので休まず更新したいのですが、ちょっと体調を崩してるので休養します。
書きため分も残り5話となってるので、早く復調すれば書きために時間を回したいですしね。
この時期、体調を崩しやすいので、皆様もご自愛下さい。
というわけで次の更新は、11日月曜日です。
最後に、評価ブクマコメント等ありがとうございます。
正直自作でこんなに早く評価されたことがないので、びびりつつも舞い上がってます。
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《あれ、前に言ってた甘酒か?》
《うまそうに飲むなぁ》
《じゅるり》
《甘酒飲みたくなってきたぞ、ちきしょうめ》
《無い、でも飲みたい》
《確か冷凍の奴が……》
《私は~、秘蔵のどぶろくをあけるぞ~》
《これは……、博雅のアネキか。まあほどほどにな……》
《おいちぃ~~》
《はえーよ》
《しっかしあれだな。甘酒の兄さん、いつの間にかマヨに甘酒を届けてたんだな。どうやったんだ?》
《いや、それは早計。政府の方も渡すって言ってたからそっちかもしれない》
《あ~、なる》
《いや、たぶんうちのだと思うぞ。付け合わせの漬物も一緒に渡した奴ぽいし》
《行動早いな。ちなみにどうやってか教えてもらえる?》
《別にかまわないけど、参考になるかどうかは知らないぞ》
《いいよいいよー》
《よきよき》
《俺もマヨネーズ届けたいし、知っておきたいな》
《いやまあ単純に、ダンジョン探索の免許取った知り合いに、ダンジョンにお供えしてもらうようお願いしただけだ》
《なるほど……》
《単純っちゃぁ単純か……。出来るかどうかは別として》
《でも、よくそんなうまくいったな》
《俺もそう思うけど……、頼んだだけで具体的にどうしたかはわからないからなぁ。後で聞いておくわ》
《よろしく~》
《あ、ついでにもう一つ。あの漬物ってなんの漬物?》
《ああ、あれか。あれは長いもの漬物だよ。知り合いに甘酒渡しに行く途中、市場によって適当に何種類か買って一緒に渡しておいた》
「うむ、青じそとか言うのをあけてみたのじゃ」
モナは漬物を箸でつまみ口に運ぶ。
「しゃくしゃくおいしいのじゃ~」
《そうかそうか、お気に召していただいたようでよかったよ。デフォのしょうゆもおいしいから試してくれ。俺も好きなんだよ、あそこの漬物。俺も今日買ってきたわさびの奴あけようかな……》
《あー、きになるじゃんよーもー。たーべーたーいーぞー》
《最近漬物って付け合わせのたくあんしか食ってないな、食べたくなってきた》
《あ、確かお土産にもらったカボチャの漬物があったかも。あ~けよっと~》
《発酵食品、発酵食品はいずこ……》
《ヨーグルトでも食べとけ》
《 っ 紅茶》
《 っ 酒》
《おいおい、さすがにそれは……》
《一応発酵食品になるのか》
《違う、そうじゃない》
《さて、話もまとまったし、モナモナも落ち着いた。ダンジョンの兄妹も撤収に入ってるようだし、質問いいか?》
《一部物議をかもしだし、落ち着いてもまとまってもないんだけどいいのか?》
《いいんだよ、放置放置》
《もなー、いーい?》
「ん? ふむ、よいぞ」
ことり。モナは湯飲みを机に置く。
「で、なんじゃ?」
《さっきのオーク、死んだ後魔石の他にでっかい牙も残してたじゃん。前に聞いたときは基本魔石だけって言ってたから、仕様変えたのかな、と》
《あ、それそれ。オレも気になってた》
「ああ、それか……。れあな魔物を倒せば初回は確実に、それ以降は一定確率で魔石以外のものも手に入るようにしておいた。基本的にはその魔物由来の品じゃな」
《なるほど……》
《アイテム入手は嬉しいけど、レアモンス徘徊はつらす……》
《明らかにゴブリンと格が違ったからなぁ》
《だからマヨちゃんよお、後出しやめようや。マジこれ、責任払いの損害賠償もんだぜ》
そんなコメント欄を、モナは鼻で笑う。
「はっ、何を言うか。そも、おぬしがれあもんすじゃなんじゃと言うたから実装したまでじゃ。文句を言われる筋合いはないぞ。ま、えふおーいーとか言う奴じゃ。皆気をつけて探索するといい。逃げてもよいし、倒せばこのようにアイテムが手に入る」
一息ついて、しゃくと漬物をはむ。
「しかしのぉ。まさか倒されるとは思わんかったわ。アレの体、今の段階じゃ小揺るぎもせんはずじゃったのに。あのおなご、怖いのぉ」
モナはぶるりと震え、それを誤魔化すように甘酒を口に含んだ。
《なんだよ、暴言野郎のせいだったのかよ》
《マジ害悪》
《つーかまだいたのかよ》
《ブーーメラン→→→→→責任払いの賠償もん》
《ほんそれ》
《暴言野郎は、アイテムが手に入るからいいだろ、と言う》
《アイテムが手に入るからいいだろ!!》
《www》
《大草原不可避》
《芝はえるわ》
《おまえ、その言葉一分前の自分に言ってやろうな》
・
・
・
《ひとしきり、悪意を込めていじり倒したところで、質問です》
「ん? なんじゃ? 我もスカッとして気分がよい。何でも答えてやるぞ」
イイ顔である。
《……なんでもと言いましたか?》
《ほほう》
《なるほど、ふむふむ》
《これは難しい質問になりそうですねぇ》
《ああ、それじゃモナちゃん。あのタケル君だっけ? 怪我してるけど大丈夫なの? 前に大けがしたら死んでやり直ししなきゃならない、みたいなコメがここであったと思うんだけど。彼そのままダンジョンから出そうじゃん。ミヤちゃんも彼が死に戻りすること許しそうにないし》
《……おまえさぁ》
《はー、つっかえ……》
《なんでそんな質問するよ》
《しかも長文》
《空気読めよ》
《なんでだよ。重要だろうが》
《ちげーんだよなぁ》
《お前、さてはノーマル君だな》
《だからなんでわかるんだよ!》
《そりゃねぇ。空気読まずに普通の質問してるからだよ、ノマルンるん》
《だったらどんな質問すればよかったんだよ……》
《そりゃあねぇ》
《言わせんなよ、恥ずかしいだろ?》
《まあでも、質問してしまったのはしゃーない。そこら辺どうなのよ、モナモナ》
《まあ気にならんと言ったら嘘になるしな。しゃーなしやで》
「ふ、ふむ。ではそこなノマルンとやらの質問に答えるぞ。他の奴らはなんか怖いからいやじゃ」
モナは何かを感じ取ったのか、怖気に体を震わせながらも頷いた。
「それでなんじゃったか……。ああ怪我についてじゃったか。それに関しては大丈夫じゃよ。ダンジョンに入ったときに肉体情報等はせーぶ? されておる。出るときにその状態に戻すのじゃ」
《ほーん。じゃあタケル君も外に出るときには腕は元通りになるんだ》
《なる、それは助かる》
《あ、でもそれだと元通りにして欲しくないときに困らないか?》
《ん? どういうことだってばよ》
《なる、つまり例えば隻腕の人がダンジョンに入ってきて、何らかの影響でダンジョンの中で腕が元通りになった時とかか》
《ああ、理解。外に出たらまた隻腕に逆戻りじゃいやだもんな。そこら辺の対処はしてるの、モナモナ》
モナはそれに、むろんじゃとばかりに胸を張る。
「その辺は抜かりないぞ。今のままがいいと思えばそれでせーぶは更新される。むろん気絶しとったり自分で判断がつかない状況だと、そういうわけにもいかんがな」
そう言ってモナは思い出すように、箸を中空でさまよわせる。
「あれじゃあれ、ぬしらも『う、腕の古傷が痛む……』とかやりたいじゃろ? アニメでそういうの見たぞ。じゃのでそういうのも残したいと思えば残せるようにしたんじゃ。嬉しかろ?」
《お、おう……》
《なーんかずれてるんだよな、迷って》
《いうて、やりたかろ?》
《それはまあ……、その……》
《そういうクラスについたら、かな。あくまで仕方なく、やる》
《いいわけおつ》
《そういうこと言ってる奴に限って嬉々としてやりそう》
《わかる》
《いうてオレが求めてるのは、肉体的傷跡じゃないんだよな。いわば魂の痕? そういうのとはちょおっとばかし違うんだよなぁ》
《おっと、黒歴史的病に一家言ある奴が出てきたぞ》
《ニュアンスはわからんでもない》
《ある意味皆が通ってきた道だからな。理解は出来る》
《生暖かく見守るだけだがなwww》
「ふむ、魂の痕とな」
モナが口を挟む。
「むろんそういうのもあるぞ。ゴーストのようなモンスターにはそう言う攻撃をしてくる者もおるらしいからな。今あるダンジョンだと……。ふむ、近畿のダンジョンはアンデッドダンジョンじゃからな」
モナがぽんと手を打つ。
「そうじゃな。今日紹介するダンジョン、残り二つ。その片方は近畿のダンジョンにするか」
《ほーん、実はダンジョンごとにコンセプトなんてあったのね》
《そうだったのか、知らんかった……》
《まあ、自衛隊ダンジョンとつくばダンジョンだけだからな、配信されたの。そりゃわからんわ》
《出てきたのゴブリンとオークだけだし》
《オークに至ってはF.O.Eだしな》
《サンプル少なすぎるからね~、さすがにわからないかな~》
《ちなモナ。そのコンセプト、教えてもらえたりとかは?》
そのコメントに、モナはおとがいをそらす。
「ふふん。そんなもん配信するまで秘密じゃ。あ~はっはっは」
そうして高笑い、だが――、
「――はわっ、あぶなっ、バランスが――。あわ、あわわわ」
――どがらっしゃん。
のけぞった椅子がバランスを崩し仰向けにひっくり返ってしまった。
《調子に乗るから……》
《まーたやりおった》
《学ばないモナw》
《モナモナ、だいじょうぶ~?》
「い、痛いのじゃ……」
頭を打ったのだろうか、手でさすりながら起き上がったモナだが、何かに気づいたのか顔を上げて慌てはじめた。
「あ、甘酒はっ、甘酒は無事か? 漬物は大丈夫か」
《大丈夫だよ~~》
《そっちは倒れてないな》
《いくら何でも食い意地が張りすぎだろう》
《最初に心配するのそっちかよww》
《もっと落ち着こうな、ポンコツちゃん》
「んな! 我、ポンコツじゃないし」
甘酒と漬物の無事を確認し、椅子に座り直したモナは取り繕うように言った。
「そ、それにこれは大事な頂き物じゃから、無駄にはしたくないのじゃ」
湯飲みと小皿をしっかと自分の前に寄せる。
《それはいい心がけだが……》
《説得力は皆無だな》
《それな》
《食い意地が張ってるだけにしか見えない》
《それはそうと、つくばダンジョンと自衛隊ダンジョンのコンセプトなら教えてくれてもいいんじゃない? 一応初配信終わってるし》
「そ、そうじゃそうじゃ。まずはそっちじゃな」
誤魔化すようにそう言って――、
「よしよし、開示してやろうではないか。特別じゃぞ」
――頷いた。
「まずぬしらが自衛隊ダンジョンと読んでおるダンジョンな。あれにはこんせぷとがない。最初に造った奴じゃからな、特に何も考えんかった。いわゆる、こんせぷとがないのがこんせぷと、という奴じゃな」
《詭弁だ!!》
《困ったときに使う言葉だ!!!》
一斉にはやし立てるコメント欄。
「しゃ、しゃーなかろうが。最初の最初じゃったんじゃもの」
画面に向け持った箸を突きつけながらモナは叫んだ。
《迷ノ宮ちゃん、行儀が悪い。箸で人を指してはいけません》
「え、いや、でも……」
モナは逡巡するが……。
《でもじゃありません》
「あ、はい。ごめんなさいなのじゃ」
そのコメントに素直に謝った。
《よろしい》
《やーい、おこられてやーんの》
《やーいやーい》
《……あなたがたも調子に乗らない。いいですね》
《あ、はい》
《――スンッ》
《――スンッ》
《途端におとなしくなってるの面白いな~》
《逆らってはいけない何かを感じたのだよ》
《んじゃ、静かになったところでつくばダンジョンのコンセプトを。こっちは後で造ったダンジョンだから有るんでしょ?》
「お、おう。あるぞ」
先程のお叱りが尾を引いているのか、モナはぎこちなく言葉を返す。
「つくばダンジョンのこんせぷとは人型生物じゃな。モンスターは基本人型生物で構成されておる。今回は出てこんかったが、最初のうちは、ぬしらがコボルトと呼んでおるモンスターがメインじゃぞ」
《コボルトかー》
《イヌ顔のモンスターだっけ》
《もふもふ可愛いか、醜悪できちゃないかの二択だな》
《まあ、どんなのも大体その二択》
《い、わ、れ、て、み、れ、ば》
《いうて、可愛い方向性はなかろう。敵だし》
《下手にもふもふ可愛かったら困る……。倒せない》
《それ以前に人型がきつい》
《ま、そう言う奴は他のダンジョン行けばいいのさ》
《そのためのコンセプトだろ》
《他には、動物ぽい奴だけのダンジョンとか、魔法生物だけとか有りそうだしな》
「な、なぜわかったのじゃ!?」
モナがコメントに衝撃を受け、くちをあわあわさせる。
《ホントにあるのかよ!》
《安直すギィィ》
《まあでもありがたいな》
《せやな、自分に合わせたダンジョンが選べるのは嬉しい》
《近場のダンジョンが自分に合ってると1番嬉しいけどね》
《まあそこは運よね》
《近場にダンジョンがないオレはどうすれば》
《離島ニキはあきらめてどうぞ》
《さて、そうこうしている間に二人が入り口まで帰ってきたぞ》
《何かモナに、この二人関連で聞いておくことないかーー》
《はい、先生 ノ》
《何かな?》
《あの二人の職業が知りたいです!》
《よろしい、ではモナ君。教えて差し上げて》
「なんでそんなにえらそうなんじゃ? 我、指図される立場じゃったかの」
もにょりつつもモナはパネルを出し答える。
「詳しい数値は伏せるがの、こんな感じじゃ」
[名称:武]
[クラス:三等兵]
[判断力他、筋力や耐久等の肉体的な能力にプラス補正(微)]
[今は星無し三等兵、目指せ陸軍大元帥]
[名称:美夜]
[クラス:月ノ宮]
[魅力、器用、意思力等にプラス補正(中)一定条件下で補正(大)。デメリットあり]
[前世からずっと決まってるんだから……]
「これらにはレベルも存在するからの、あくまでも参考程度にしておくとよい。むろん本人は詳しい補正率等がわかっておる。まあ本人でもわからん隠し要素もあるがの」
そう補足した。
《隠し要素ww》
《美夜ちゃんのクラス、あからさまじゃんよ》
《絶対あるだろこれ、デメリットとか一定条件とか書いてあるけど、それ以外に!》
《美夜ちゃんだから月ノ宮か……。クラス名が自分の名前からつけられることもあるのね》
《いや、多分違うぞ》
《ああ》
《だな》
《美夜ちゃん、目が据わってたとき「お兄ぃ、どいて。そいつ殺せない」って言ってただろ? あれがキーになっている》
《ふむ、なるほど……。あ、じゃない。どうした急に》
《元々はMMO黎明期にあった都市伝説というかネットミームになるな。ヤンデレのはしりとも言える。詳しくは彼女の発した台詞で調べるといいだろう》
《そうだな、後で調べてみよう》
《……減点》
《書き加えるくらいなら書き直せよー》
《誰よりも早く書きたかったんだ、『どうした急に』って……》
《気持ちはわかるから許す》
《まあそれはともかくとして、美夜ちゃんのクラスはユニークっぽさあるよな》
《強そう》
《プラス補正(中)って書いてあるし、実際強いだろ》
《それに比べてタケル君さぁ》
《三等兵www》
《これ、スコップ装備につられたんかな》
《お高いスコップ買った奴、息してる?www》
《装備でクラスが決まる可能性を考えると、最初の武器は考えないとなぁ》
《いや、でもオレは三等兵が悪いとは思わないぞ》
《えーー、二等兵にもなれない兵士未満だぞ》
《だからだよ。上の階級があることがもうわかってるんだぞ。この意味わかるよな》
《あ、なるほど。クラスチェンジか……》
《そういうこと、ユニークは下手したらそれ止まりだけど、汎用っぽい職なら上の階級がある可能性もあるし。三等兵とかさらにいろんな派生がありそうじゃね?》
《なるほどなぁ。そう考えるとおいしいかも》
《そこらへんどうなの、モナちゃん》
「ぴゅ、ぴゅ~ぴゅぴゅ~」
モナは吹けもしない口笛で口ずさむ。
「そ、それよりそろそろ次のダンジョンにいこうかの~。次は信州安曇野じゃな。い、急ぐぞ~」
《誤魔化した》
《誤魔化したな》
《これは確定やね》
《だな》
皆がモニターの前で悪い顔で笑った瞬間だった。
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