お姫様パーティーと親衛隊
「わぁ……妖精さん……!」
『はい、よろしくお願いしますユリアさん。私、紅お姉ちゃんの妹のルージュです』
「うん……うん……よろしく、妖精さん!」
自己紹介をしていく中で、紅の肩に座っていたルージュの姿を見たユリアが、きらきらと目を輝かせて食いついていた。
「今なら、セイファート城に妖精さんもいっぱいいますですよ」
「他にもお花の精霊さんや、空飛ぶタコさん、悪魔の女の子とかもいるの」
『そういえば、ルゥルゥさんはユリアちゃんのお母様に雰囲気が似てますよね?』
「良いなぁ……私も雛菊ちゃんたちのお城、行ってみたいです……」
「遊びに来たら、いっぱい遊びましょう、なの」
物怖じしない雛菊や、お姉さん側になると途端にしっかり者になる深雪のおかげもあって……人見知りもどこへやら、すっかり打ち解けて仲睦まじく歓談しているユリア。
一方で……
「そうか……ユリィはまだ能力は初期値だが、安全にセイファート城まで連れていくには……よし、ラインハルトにプランを設計してもらおう」
年少組の話に耳をそば立てて、なんか思い詰めた表情でブツブツ言ってるヤバい奴が居た。
「あー、もしもし、玲央さん? ソールレオンさんや?」
「護衛はシュヴァルにも頼んで……あとはリューガーなら無害だし安心だから絶対に編成しよう。エルネスタ、彼女にユリィを見せるのは……しかし彼女は後衛の護衛としては誰よりも適任だし、ぐぐ、むぅいやしかし……ッ!」
何やら難しい表情で考え混んでいる
「レオン、お前も早く荷物を部屋に入れときなよー?」
「もー、この子は相変わらずユリアちゃんの事になると暴走するんだからにゃー」
「あ……はい父上、母上、すぐ行ってきます!」
そう言いながら後ろをすれ違った、ストレートの黒髪の女性と緩くウェーブの掛かった髪の女性二人には、思索から我に返り素直に返事を返す玲央。
――ん???
何か今、変な会話がなかった?
そんな疑問に混乱している紅を他所に、玲央は乗って来た車のトランクから引っ張り出した荷物を抱えてペンション内に入って行ってしまう。
黒髪の女性も、もう一人優しげな雰囲気の女の人と寄り添って立ち去ってしまった後。我に返った時には質問の機をすっかりと逃してしまった。
――きっと聞き間違いだよね、うん。
そう、紅は考えるのをやめた。
「それじゃ俺たちも荷物を部屋に運んどくけど、ユリィはどうする?」
「雛菊ちゃんたちとお出かけしてくる?」
今まで天理と何か真面目そうな話をしていた玲史とイリスも、どうやら話を終えたらしい。両親の呼びかけに、すっかり夢中になってお喋りしていたユリアがハッと二人の方を振り返る。
「あ……お父様、お母様、私はもうちょっと……」
「おう、それじゃユリィの荷物は俺が運んでおくぞ。紅に昴、ユリィのこと頼むな?」
「は、はい!」
「分かりました!」
不意に玲史からそう頼まれ、紅と昴が思わず背筋を正して返事を返す。この短い時間だけでも彼の娘への溺愛は明白であり、その上で「頼む」と言われたのが嬉しかったのだ。
「ほれイリス、お前の荷物も寄越せ」
「大丈夫ですよ、これくらい」
「馬鹿、もうまたお前一人の身体じゃないだろうが。いいから貸せって」
なんだかお互い気遣いながらも遠慮のない玲史とイリスが、二人寄り添ってペンションに入っていく。その様子だけで、あの二人が大変に仲睦まじいことは明白だった。
「良いお父さんとお母さんだねー?」
「……うん。自慢のお父様とお母様です」
そう語りかける聖の言葉に……ユリアは、本当に嬉しそうに表情を綻ばせて頷くのだった。
「よーし、それじゃあこのペンションを探検していくです!」
「「「おー!!」」」
そうして、
「さて聖、昴、それに委員長。私らはお姫様の護衛だ、気を引き締めようか?」
「うん、私たち、今日はお姫様の親衛隊だね!」
「はいはい、承りました親衛隊長どの」
「あはは、それじゃ隊員佳澄、護衛任務を開始しまっす!」
そんな子供たちの微笑ましく仲睦まじい様子に……紅たち高校生組もふっと表情を緩め、その後を追いかけるのだった。
【後書き】
後日、【最強ギルドが総出で姫プレイしてるんだけどwww】とかそんな感じのスレが立って、タイトルとは裏腹に来訪者を和ませていたトカ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます