ルアシェイア連王同盟国
建国宣言
軽率に一か月時間を飛ばしていくスタイル
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――この『Destiny Unchain Online』において、プレイヤーが作成できる集団というのは、大きく三つの段階がある。
友人同士の集まりである『
複数のギルドの集合体である『
そして……それらの上位に位置し、それらよりも遥かに大量の権限を要する、プレイヤーの集団における最大単位が存在する。
複数の
――ルルイエ封印後のひと月と少しの間に、実に2つの国が建国された。
一つ目は、ギルド『北の氷河』を中心として周辺ギルドを統合、大陸北から北西部を統合した、北の氷河団長を最上位の皇帝へと据えた最大の帝政国家『ノール・グラシェ北方帝国』
二つ目は、大陸東部を平定した『
また……始まりの街ヴィンダム周辺では、初心者も多数いるこのあたりの平穏のために活動する自治組織もおり、今や一大勢力となっているという。ある意味ではこの空白地帯も国に類する勢力であろう。
そんな、三つの主要勢力が誕生した『Destiny Unchain Online』第一サーバーだったが……未だに、大陸南西部は空白のままとなっていた。
そして……その大陸南西部にて今、新たな変化が巻き起きようとしていたのだった。
◇
――この日、クリムたち『ルアシェイア』の本拠地であるセイファート城の庭園に、多数のプレイヤーが集結していた。
ヴィンダム方面からの自治組織からの圧力を嫌い、つい最近傘下に入った、鬼鳴峠より東の高原、砂漠地域を統治していたS.S.S団。
ギルドランク決定戦本戦のリベンジにと幾度もギルドランクマッチにてクリムたちに挑み、撃退されてきた黒狼隊も、自身の獣人系種族のプレイヤーで構成された『同盟』を引き連れ、傘下に加入してくれた。
その他、他勢力ではなくクリムたちを選んでくれた小規模ギルドやクランなどが集まり、広大なセイファート城の庭は今はすっかりプレイヤーたちでひしめき合っていた。
そんな自分の城を、感慨深く思いながら見廻っていたクリムへと、聞き覚えのある声が掛かる。
それは……クリムたち『ルアシェイア』の最初の同盟者である、『銀の翼』団長エルミル。
「よ、魔王様。ようやくこの日が来たな」
「エルミル……思えばお主には、初めて『同盟』を結んだ時から色々と世話になったな」
「はは、よしてくれ。俺らも下心があったんだから、あまり感謝されたらむず痒くなるからな」
そう言いながら、ニッと無邪気な顔で笑ってみせるエルミル。
改心後、団長である彼の持ち前の面倒見の良さからか、悪評はすっかりと消えて今では初心者に指導熱心なギルドとして名を馳せ拡大した彼ら『銀の翼』。
彼らには、今後南西部へ向かう中継点となる城砦都市ガーランドを解放した暁には、その管理を頼むこととなっている。下心とはおそらくそのことであろうが……今後も、彼とそのギルドには世話になることも多くなることだろう。
そんな彼らと挨拶をしていると、また一人声を掛けてくる者がいた。
振り返ると、そこに居たのは……巻いた豊かな金髪が特徴的な、淑女然とした姿の女性プレイヤー。
「ホワイトリリィさんも、人脈を貸していただいて本当にありがとうございました」
「構いませんわ、私たちは一から出直しな以上、あなた達に協力するのがおそらく
そう、黄金のドリルヘアをしゃらんと手でなびかせて高飛車に答えた彼女は……以前、最初のランキング決定戦でソールレオン一人に壊滅させられた、ギルド『リリィ・ガーデン』団長、ホワイトリリィ女史。
一時はその戦闘によるトラウマで壊滅状態だったギルド『リリィ・ガーデン』だったが……少し前にゲームに復帰した。
その際、ランキングマッチ不参加だったために一からやり直しとなった彼女たちはクリムを頼りルアシェイアの門を叩いたわけだったが……リアルお嬢様学校のメンバーという噂に相応しく人脈の豊富だった彼女たちの助けにより、クリムたちルアシェイアの裏で進めていた『ある計画』は、瞬く間に押し進められることになった。
今ではすっかり経営顧問に収まった彼女もまた、クリムたちの心強い同盟であった。
「それで……わざわざ同盟ギルドを呼び出したということは、ついに準備が整いましたの?」
「うむ。こんな早くにここまで来られたのは、間違いなくお主らのおかげじゃ。心より感謝する」
「べ……別に、たいしたことではありませんわ」
素直に頭を下げるクリムに、照れたようにドリルヘアを指先で弄びだす彼女。そんな彼女のわかりやすい反応に苦笑しながら、クリムは一つのウィンドウを展開した。
クリムの眼前に展開しているそのウィンドウには、これまでは未解放だったために灰色をしていたボタンが、今は使用可能になった証である光を放っていた。
眼前、中庭に大勢集っているプレイヤーたちは、今回の件に賛同してくれた『同盟』たち。これだけのプレイヤーに今回集まってもらった理由こそが、このウィンドウ……そしてそこにある一つのボタンであった。
――そのボタンに書かれている文字は、『Founding a country』……すなわち、建国。
これまで他ギルドと同盟を組む中で、交渉を続けてきた成果。
一定以上の人数を保有するギルドの規定数の承認を受けることで使用可能となるこのボタンを押すことで、今、この地に新たな『
そう、今日この日……半年前、この小さな湖畔から細々と始まった小さなギルドは、大陸を大きく四つに分割する国となるのだ。
「そんな事より、ほら、主役は早く持ち場に行こうぜ」
「ええ、皆を待たせてはいけませんわ」
二人に促され、人の集まる庭園の先へ促される。
そこには、普段は置かれていない玉座が据えられている。
そして……その左右には、以前ギルドランク決定戦の際に着ていた物と同じ意匠で統一された、お揃いの礼服に身を包む『ルアシェイア』の仲間たち全員が整列していた。
緊張や、期待。さまざまな表情を浮かべる仲間たちの中央、玉座の前にクリムが立つ。
瞬間、ざわざわと喧騒に満ちていた庭園が、スッっと静まり返った。
この場に集ったプレイヤー皆からの注目を一身に集めながら、クリムは静かに口を開く。
「まずは……賛同してくれた『
そう、クリムは外套の下に着た黒いドレスのスカートの端を摘んで軽く膝を折り、感謝を告げる。
「そして……我らはこの後、大陸南西部を平定し、この大陸を四分する勢力となる。だが……そのためには、諸君ら賛同してくれた者達の協力が不可欠となるであろう」
訥々と語るクリムの声に、皆がシンと聴き入っている中で、クリムは眼前の皆に手を差し出すように伸ばす。
「我らが目指すのは、皆が皆を尊重し合える自由な国。支配ではなく、共栄できる同志達による連合国家じゃ」
事実、クリムたち『ルアシェイア』が盟主として要求した権限は、他の二国と比べかなり少ない。
他の地域は同盟間の合議により選ばれた領主に任せ、クリムたちは主に今まで通りの領地を直轄地とし、その経営に専念することになるだろう。
「あら、魔王様。それでは、今までと変わりありませんですこと?」
「ふっ、はは、まあその通りなのじゃがな、あまり虐めてくれるな」
「ま、それが俺ららしいってこったな」
ホワイトリリィとエルミルのツッコミに、クリムが戯けて肩をすくめ曰うと、周囲の列席者たちから笑い声が漏れる。
……だが、これでいい。
クリムには、ソールレオンやシャオみたいな統治能力は無い。多数のエリアに目を通しながら他のプレイヤーを統治するというのは荷が重い。
どれだけ人心を集めることができたとしても、あくまでも一プレイヤー以上の存在になる事はできないという自覚が、クリムにはあった。
だが……皆が、協力してくれるならば、その結束の旗印になる事くらいはできる。
眼前に集ってくれた彼らに望むのは、堅苦しい上下関係ではなく……あまり広くはないクリムの両手の先まで、ともにこの地に平和を築くための仲間なのだから。
「さ、感慨に浸っていないで、ひと思いにやっちまえ」
「そうそう、みんな待ってるよ?」
後ろに控えたフレイとフレイヤの言葉、そして賛同してくれた仲間の視線を受け、クリムはウィンドウに輝いている『建国』のボタンへと触れ――宣言する。
「我、クリム=ルアシェイアは……この場に集ってくれた皆の代表として、ここに新たな国を――」
「――『ルアシェイア連王同盟国』を、ここに樹立する事を宣言する!!」
【『泉霧郷ネーブル』を首都として、新たに『ルアシェイア連王同盟国』が建国されました】
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