新加入メンバー紹介
「もう落ち着いた?」
「う、うむ……すまぬ、面倒を掛けた」
「ううん、全然ばっちこいだよ!」
泣き止み、照れくさそうに離れたクリムの言葉に、ふわりと笑みを浮かべ励ますフレイヤ。そのまま、今が配信中であるのを忘れたように、お互い目線を合わせられず真っ赤になって頬を掻く。
コメント:なんだこの甘酸っぺぇ空気
コメント:エルフお姉ちゃんこれもうまおーさまの精神安定剤でしょ……
仲睦まじい二人の様子を、視聴者が生暖かく見守る中で……今回の配信を主導していたフレイが、空気を読み静かに見守っていたのをやめて、ようやく動き始める。
「さて、文化祭の件は冗談として」
コメント:えぇー本当にござるかぁー?
コメント:冗談だったんだよな?
コメント:愉悦に目覚めたとかじゃないよな?
「冗談として。皆も気になっている事もあるだろうし、クリムが復帰したならそっちをやってもらわないとな」
コメントの指摘を無理矢理断ち切って、フレイが未だフレイヤにぴったりくっ付いているクリムの方へと近寄る。
「な、なんじゃ、もう今日はこれ以上は進まぬからな、絶対にじゃ!」
「そうだよー、これ以上はもう可哀想だよ」
コメント:ガチ拒否w
コメント:涙目いいぞw
コメント:お姉ちゃんストップ掛かったw
フレイヤに縋り付いて断固拒否の構えを取るクリムに、フレイヤも庇うようにしてフレイに苦言を呈す。
だが、フレイの言う今やるべき事とはそういうことではなく……
「分かった分かった。それよりも、やる事があるだろ?」
「「やること?」」
呆れ混じりのフレイの言葉に、クリムとフレイヤが揃って首を傾げる。
「ほら、復帰したなら新メンバーの紹介しないと、だろ?」
「おっとそうじゃったな。セツナ、こっちに来るといい」
「あ、はーい!」
フレイの言葉に、一転し元気を取り戻したクリムは素早く起き上がり、ちょっと離れた場所で今か今かと待っていたセツナを手招きする。
「というわけで、こちらが今回我らがギルドに新加入した……」
「ご紹介に預かりました、セツナでーす! 今はお館様のところでシノビをやってます、よろしくね!」
そう、マギウスオーブの前で元気に自己紹介するセツナ。
コメント:こんにちわぁ
コメント:金髪クノイチとかまた濃いなぁ
コメント:しかもよく見ると鬼っ娘じゃねーか!
コメント:また可愛い人外ロリが増えた……だと……!?
コメント:礼儀正しい、照れ屋、と来て今度は元気っ娘
コメント:あぁいけません忍者装束と鎖帷子えっ
概ね好意的なコメントが一気に流れていき、カメラに向かって機嫌良さそうに色々とポーズを取っていたセツナだったが……クリムが、ふと思い出したように尋ねる。
「ところで紹介した我が言うのもなんなのじゃが……なぁお主、シノビってそう素直にバラして良いものなのか?」
「……あっ!?」
「気付いてなかったのか……」
クリムに言われ始めて気が付いたというように、ハッと驚愕の顔になるセツナ。
コメント:そこはかとなく漂うポンコツ臭w
コメント:忍者じゃなくNINJYAだからセーフ
コメント:さっきの戦闘でも忍んでなかったしな
そんなふうに流れていくコメント。どうやら派手な忍術で戦う、少年漫画的な忍者と認識されたみたいだが……
――やっぱ計算なんかのぅ。
慌ててクリムに「どうしようお館様」と聞いてくるセツナに、なんとなくそんなふうに思いながら、その頭を撫でて落ち着かせてやる。
「はは、構わぬ構わぬ。日陰者とさせる気はないゆえ、お主が思うように楽しめば良い」
「お館様ぁ……!」
ぱぁっと表情を明るくさせるセツナ。微笑ましくもちょっとアホっぽいその様子に、視聴者もどうやら「ポンコツ忍者」と無事認識したようだった。
コメント:ところで、どうやって勧誘されたんですか?
ふと流れた、そんな視聴者の質問。
それを目敏く見つけたセツナは……顔を赤らめ、体をくねらせてしなをつくり、言った。
「お館様には、お城に侵入したところを捕まったり、激しく組み敷かれたりして勧誘されました!」
「セツナお主言い方ァ!?」
天然なのか狙ったのかは分からないが、あまりに人聞きの悪いそのセツナの言葉に、思わずクリムがツッコミを入れる。
「……ねぇクリムちゃん、どういうことかな?」
「お主もその場に居たじゃろうがフレイヤ!?」
予想外の伏兵。
何故か背筋に冷や汗が伝う笑顔で迫ってくるフレイヤに反論するが、それはまた別の誤解を生み……
コメント:なるほど三人で……ゴクリ
コメント:詳しく……説明してください
コメント:今、僕は冷静さを欠こうとしています
コメント:えっちなことしたんですね?
「ちがぁぁあああう!!?」
澄み渡るようなガーラルディアの青空の下、そんなクリムの怒声が響き渡ったのだった――……
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