第2夜 よそものの朝、夜の秘密

目が覚めた。

見慣れない天井をぼやけた視線が彷徨さまよう。


ーーここ、どこだろ。


体を起こして辺りを見渡すと、少し離れた所で、浅く寝息を立てる君を見つけた。


ーーそっか、逢いに来たんだった。


君を起こさないようにこっそりとベッドを抜け出して、部屋が明るくならないようにカーテンと窓の間へ潜り込んだ。


窓から見える世界はまだ薄暗く、街灯も付いたままだった。

きっと街灯たちにとって、今はまだ夜なのだろう。


マンションが見えたので目をやると、窓際で忙しそうに髪を乾かす女の子がいた。

あの子にとって、世界はもう朝だ。


夜と朝が、認識の世界でゆっくりと移り変わっていく。


私はこの世界にとってはよそものだけれど、夜と朝のさかいをこっそり共有しているような気がして、なんだか仲間に慣れたような気がした。


無意識に切り取られた自分とは関わりのなかった世界の風景に、なんだか救われる。


ふと、カーテン越しに抱きしめられた。


「起きてるなら、言ってよ」


窓際にいた私の体は思っていたよりもずっと冷えていたようで、君の体温が酷く温かい。


コーヒーでも飲もうかっていつ言おう。


でも、まだいいや。


私はもう少し、君に抱かれて、よそものの朝に浸っていたいから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

都会の憂鬱について 雨乃夜 @rainight

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ