いつの日か、また君と

赤坂 葵

無題

 あなたさえいなければ。


 そう思うようになったのは、高校生になってからだ。


 普段一緒に帰っている幼馴染と大喧嘩し、暫く会話をしていない。

 そのせいで今年の冬は一緒に過ごすこともできなくて、後悔と自分に対する嫌悪感が増していく。


 急に後ろから名前を呼ばれないかな。電話がかかってこないかな。

 最近になって、そんなことを考えるようになってきた。


 しかし実際は、そんな甘い現実はないわけで、自分の都合のいいように変化する日常はないのだと改めて実感させられた。


 正直こんな世界だったら、自分を必要としてくれる人はいないのだろう。

 いなくなってもいいのだろうと思いながら涙を流す。


 できることならやり直したい。あの日に戻りたい。そう思いながら、寂しいだけの冷たい夜の帰路を辿る。


 あのとき自分の我儘で振り回さなければ。あの人に嫌なことを言わなければ。そんなことを口に出すのはやめよう。

 出したところで過去は変わらないし、独り言なら未来も変わらない。



 今の私ができることは、自分が変わることだ。

 変われば、きっとあの人も―――。



 淡い期待を持ちながら、決意をする。


 冷たい空気に頬を撫でられ、私は反射的に溜め息を吐く。

 今まで感じたことのない虚無感が私を襲い、それが更に私を辛くさせる。


 本当なら今頃、あの人は私の隣に居たはずなのにな。

 そう思ったところで、過去が変わるわけではないのに。


 それでも、期待してしまうのは私の悪い癖だ。


 期待すれば裏切られたときに悲しく、辛く、死にたくなる。そんなことはわかっている。わかっているつもりなのに、それでも相手に期待してしまう自分がいた。



 ならばもう、こんな自分を消してしまえば。



 そうすれば苦しむことも、相手を傷つけることもない。

 期待をして嫌になるなら、こんなどうしようもない自分は消えればいい。


 相手を傷つけてしまう私など、必要ないのだから。

 だからといって自分から消える自信はないし、他の人に消してくれとお願いできるはずもない。



 なら、私はどうすれば?



 日々募る思いを小声で放つが、答えてくれる人は誰一人いなかった。勿論、答えてほしいと思ってもいなければ、答えてくれる人がいるとも思っていない。


 それでも、答えてくれる人がいたら、私の気持ちは心なしか軽くなっていただろう。

 私は襲ってくる虚無感から逃げるかのように、止まっていた歩を進める。



 明日はもっといい自分になろう。そしてまたいつか……。



 またいつか、きみと出会えたら……。

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いつの日か、また君と 赤坂 葵 @akasaka_aoi

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