第五章 アフターケア
カウンセリングは、被害者、加害者双方に対して行われる。
被害者に対しては、いじめで受けた心の傷をケアする必要がある。
悪いことではないが、メンタルの弱さは改善する余地があるかもしれない。
被害者は多くの場合、『暴力はいけない』『人様を傷つけるのはいけない』といった、当たり前の良識や常識を既に弁えている場合が多い。ところが加害者側は、そうしたことにはお構いなく暴力を振るい、平然と被害者の人格を踏みにじってくる。被害者にはまず、この点が理解出来ない。彼らが可能な状況であっても反撃しないのは、そうした良識に縛られているからである。
しかも、下手に反撃すると、自身が非難されるかもしれない。
反撃して居直るのも一つの手ではあるのだが、全ての被害者にそうした対応が可能な訳ではない。
被害者は、自身の価値観の崩壊、自信の喪失といった事態にも直面することになる。これが後々の人生にまで影響を及ぼすかもしれない。
加害者は、定期的にスクールカウンセラーに、現況を報告する必要がある。
本来、カウンセリングが必要なのは、加害者の方である。
加害者は、被害者に対して、執拗に加虐行為を繰り返す。
リーダー格には、恐らく自己愛性パーソナリティ障害の傾向がある場合が多いと思われる。他のメンバーは、ただ従っているだけだ。
実は彼らは、メンタルが不安定で落ち込みやすい。周囲に人を集め、ハイテンションで仲間意識を高揚させ、自分の強さを誇示することで、心の安定を図っている。いじめに依存的になるのはそのためである。一度ルーティンになると、やらないことで不安になる。DVも似たようなメカニズムである。
彼らは不安感、恐怖感、そして孤独感が人一倍強い。
すなわち、彼らが求めているのは、安心感、共感、そして連帯感ということになる。
アメリカの精神科医コフートは、自己愛性PDに対する治療法を確立した。彼が提唱したのは『共感』である。直面化ではなく、クライエントの心に寄り添い支える方が、治療効果が高い。
これは、教師が加害者に対処する時にも役に立つ。
いきなり怒鳴りつけたりすると、彼らにとって敵と認識されてしまう。
毅然とした態度で、適当におだてたりしながら懐柔することで自己対象化させると、話もしやすくなるだろう。
実は自己愛性PDは、普通の人間より簡単に操れる。
見た目が良く、優秀で強い人間に対しては、勝手に自己対象化してくれる。
そうでなければ、凄いね、エライね、大変だね、頑張ってるね、仲間だよね、などのパワーワードを繰り出して尊敬の念と共感とおトモダチ感を演出する。面白いこと、ハイテンションでノリがいいことも有効だ。
彼らは迷子の三歳児同然である。親が子供をコントロールするつもりで接してやれば、言葉一つで、いじめから手を引かせることも、決して不可能ではないのである。
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