破片

遠くの街で火事が起こる夢を見た。

その街は川沿いで、そこから水を汲んで消化活動をしていた。燃えた樽は破裂し、飛び散る。トマトの水煮が詰まっていたらしい。血のようなそれを避ける人々。彼らはごうごうとうねる炎をただ見つめることしかできなかった。彼らにはどうすることもできない。無能なのだ。

その建物はこの街にある唯一のバーカウンターだった。古びたピアノは丸みを帯びた酸っぱい音色で、男たちを何度も夜へと誘った。

灰へと変わりゆく酒蔵。ピアノの音。光沢のある重たいカーテン。その場にいる群衆はみな嘆いた。建物の中には父が残されていた。父が死にゆく様を、ただ見つめていた。

彼らは私に励ましの言葉をくれた。親戚はみな私を引き取ろうとしてくれた。

その火を放ったのはオーナーの娘であるこの私だというのに。

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