破片
遠くの街で火事が起こる夢を見た。
その街は川沿いで、そこから水を汲んで消化活動をしていた。燃えた樽は破裂し、飛び散る。トマトの水煮が詰まっていたらしい。血のようなそれを避ける人々。彼らはごうごうとうねる炎をただ見つめることしかできなかった。彼らにはどうすることもできない。無能なのだ。
その建物はこの街にある唯一のバーカウンターだった。古びたピアノは丸みを帯びた酸っぱい音色で、男たちを何度も夜へと誘った。
灰へと変わりゆく酒蔵。ピアノの音。光沢のある重たいカーテン。その場にいる群衆はみな嘆いた。建物の中には父が残されていた。父が死にゆく様を、ただ見つめていた。
彼らは私に励ましの言葉をくれた。親戚はみな私を引き取ろうとしてくれた。
その火を放ったのはオーナーの娘であるこの私だというのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます