あき

白線の上を歩く癖は幼い頃から治らない。横断歩道や道路の真ん中、駅のホームの端。

危ないからやめろと言われてもやめられないのだ。白線から落ちたらワニに食べられてしまうのだから。

いつものように人気のない道路を歩く。真っ白な矢印の上。車に轢かれるかもしれないという背徳感の中、スキップしながら進む『止まれ』の文字。

踊るように走る風。燃やしたような雲の色。夕暮れの赤い赤い太陽。必死に付いてくる自分の影。

たのしくてたのしくて仕方がなかった。季節と一緒にステップを踏んでいるよう。秋の風は頬を優しく撫でていく。

ああ、民家のほうから夜ご飯の匂い。カレーライスかな。

家の夜ご飯を一軒一軒当てていくのが好きだった。

今日は何を作ろう。いとおしいひとの待つあの部屋へ帰ろう。

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