(55)世界樹の調査
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アリサさんとの話し合いを終えたあとは、一旦ハウスに戻って考えていることを整理することにした。
最後の方にアリサさんにも言われていたけれど、もともとは世界の格を上げることを目的に動いていた。
それがアルさんの指摘をきっかけにして世界樹のマナの自動処理についての考察にたどり着いたわけだ。
最近はずっと似たような考え方でずっと思考がループしている感じで、中々うまくかみ合わない状況が続いている。
別に何かに追い立てられて焦っているわけではないが、それでも中々変えることができないこの状況に喉の奥に小さな魚の骨が刺さっているような気持ち悪さを感じている……かもしれない。
何故そんな違和感を覚えているのかは、不思議だと思う。
具体的にプレイヤー間で何かを競っているわけでもないので、ゆっくりやればいいじゃないかと。
とはいえ浮かんできた疑問を早く解決したいという思いがあるのは事実なので、これは自分の性格だと認めて行動するしかない。
とりあえずここ最近動き回った結果を簡単にまとめてみると、大きく分けて三段階に分けることが出来ると考えている。
まず一つ目は世界全体のマナの総量を増やす方法。
これは一生(?)続く問題でたとえ一つクリアできたとしてもその先もまだまだ続く命題のようなものだと思う。
そもそも運営がプレイヤーを集めてこんなことをやっていること自体もその一環だと思われるので、色々な観点から考えて実行する必要がある……と思われる。
続いてアルさんから指摘された小さな(少ない)マナの動きから注意が向いていないということ。
その原因として大きな(多い)マナの扱うこと続けて来たので、細かい動きに対して鈍感になっているのではないかと考えた。
その流れで中央の壁に関しての疑問が浮かんできた時に、そもそも爵位持ちの世界樹のような存在やダンジョンマスターが無意識のうちに扱っているマナはどういう動きをしているのかという疑問が浮かんだ。
中央の壁のことにしても世界樹が扱っているマナにしても、具体的に目の前で起こっている事象を調べればいいのでとっつきやすい問題といえる。
そんなわけで一番身近な世界樹へと来てマナの動きを調べてみることにした。
世界樹の中で活動するときは精霊になっていた方が感覚が鋭くなるので、体は精霊のものに作り変えている。
もっとも世界樹の中にいる場合には人であるか精霊であるかの境目は非常に微妙で、自分としては『どちらでもない』という感覚の方が強い。
チュートリアルの時から感じていることだけれど、自分を自分足らしめている魂のような存在があって、それに精霊や人の体という事象が後から着いて来ているのではないかと考えている。
そこまで考えた時に、ふと一つの疑問が浮かんできた。
「もしかすると体を作り変える時に、マナが関わっている? というか、魂が絡んでいる以上は確定している気がする……」
そもそも考えてみたら人の体と精霊としての体を入れ替えられるようになったのは、マナ――というよりも魂に関してあれこれやるようになってからだった。
そう考えると細かいマナの動きを感じ取るために体の入れ替えを調べてみることもありだと思えて来た。
とはいえさすがに同時に二つのことを進めるような器用さは持ち合わせていないので、まずは当初の予定通り世界樹が自動で行っているはずのマナの処理について調べることにした。
いつものように世界樹の中に入った後は、まずどこでマナの処理を行っているかを探すことにした。
ただし世界樹は、物理的に何かの器官のようなものがあってマナの処理をしているわけではない。
そのため世界樹がどこにマナを集めているのかを調べる必要があった。
世界樹自身がマナの処理をしてるので樹の中のどこかで処理していることは間違いないと当たりをつけているのだけれど、それが正解かどうかも分からない。
とにかく辺りに漂っているだけのマナと世界樹が取り込んだマナに違いがあると考えて、その二種類(二つ?)のマナを探すことにした。
もっともこれはあくまでも世界樹に取り込まれたマナが変化を起こしているだろうと勝手にこちらが考えているので、底から躓く可能性はある。
だからこそ慎重に時間をかけてゆっくり調べるつもりでいたのだが、結果的には予想に反してあっさり見つけることが出来た。
元の世界にあった常識だと世界樹(というより植物)は、細胞の中にある葉緑体で光合成をおこなってエネルギーを得ている。
その仕組みがこの世界でも当てはまっているかは分からないけれど、大きくは外れていないと考えられている。
それと同じように、世界樹全体でマナの処理を行っていることが分かった。
より具体的にいえば、葉や根から集めたマナを魔力の流れに乗せて、徐々に魔力に変化させているというべきか。
その変化は光合成のように何か特別な器官を使って行っているわけではなく、マナから魔力に薄めて行っているというほうが分かりやすいかもしれない。
勿論マナの濃度を薄めるだけで魔力に変化するわけではないので特殊な処理を行っているのだけれど、その処理自体はすぐに感覚的に理解できた。
何故そんなにすぐに理解することが出来たのかは一瞬不思議に思ったが、その答えはすぐにわかった。
それこそ一周目の時の経験が生きていて、世界樹の中で起こっている変化を把握できるようになっていたというだけのことだった。
それならもっと前に見つけていてもおかしくはなかったとも思ったけれど、何かしらのきっかけが必要だったんじゃないかと考えることにした。
これは他のプレイヤーからも話を聞いて確認しなければならないことなので、自分だけの例だけを使って答えを決めるのは難しいと思う。
どちらにしても世界樹の中でのマナから魔力の変換については見つけることができたので、今はこれで良しとすることにした。
付け加えると世界樹がやっていることを知る事が出来たタイミングで、自分自身でもマナから魔力への変換ができるようになっていた。
「――なんか、随分とあっさりという感じだけれど……これまでの積み重ねがあったからということにしておくか」
そもそもアリサさんとの話し合いがなければ世界樹の中に入って調べようなんてことは少しも思いつかなかったので、必要なことだったと思う。
ことわざにある『灯台下暗し』ではないが、あの交流がなければ気付くのはもっと遅くなっていたはずだ。
『そういうもの』という思い込みが目くらましになっていたとも言えるけれど……どう言いつくろっても言い訳にしかならない。
とにかくマナから魔力への変換が出来るようになったことで、他にも出来るようになったことが増えたことは喜ばしい。
折角手に入れた
まずは中央の壁について調べなくてはならないので、今はそちらを優先することにした。
マナから魔力への変換が自分で出来るようになったので、壁の調査も少なからず進めることが出来るのではないかと期待している。
とはいえこの時点で既に夕ご飯の時間が来ていたので、この日の調査はここでストップ。
アンネリやアイリがいる拠点に戻ってご飯を美味しくいただいたあとは、軽く話をしてから就寝することにした。
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フォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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