(50)マナの訓練

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 ファンタジー系とSF系というある意味では対照的な位置にありそうなジャンルなだけに、共通点を見つけだすことは難しい。

 というよりも、共通点があるのかどうかも分からないことが話し合いを混乱させる原因にもなっている気がする。

 もしかするとプレイヤーとして生きて行く何かしらの意味があるとすれば、その共通点に向かって進んでいるのかもしれない。

 あるいはそう可能性も無いわけではない。

 実際には共通点などなく、ただただプレイヤーの生き様を見るだけが目的ということだってあり得るからだ。

 プレイヤーが世界を『育てる』ことこそが運営にとっての真の目的だと決めつけている時点で思い込みの可能性もあり得る。

 SF系のプレイヤー二人と話をしていると、そんな考えが思い浮かんできた。

 少なくとも改めてそんなことを考えるくらいには二人と話をして何かしらの刺激を受けることが出来た……んだと思いたい。

 

 それはともかくとして、端末上に出来た新しい機能ハブシステムは中々に使い勝手がいいと思えた。

 同じサーバーのプレイヤー相手に使うことは無いだろうが、他のサーバーのプレイヤーと荒らされることなくのんびり話をしたいときには重宝するはずだ。

 今はまだ使えるプレイヤーの数が少ないのでそこまで出来ているグループも多くないとは思うけれど、これからプレイヤーの数が増えることはあっても減ることは無い。

 そうなると猶更特定のグループとだけ話が出来る場というのは重要になって来ると思う。

 

 今回の会話で直接的に実りのある内容を話せたわけではないけれど、今後に期待できるのではないかと明るい気持ちになれた。

 そんないい気分のままハウスから離れてホームに戻り、そのまま地脈の中央へと向かう。

 気持ちが乗っていたので、マナを扱うための修練をしようと考えたんだ。

 すると中央に転移するなりガイアからとある報告を受けた。

 

「マナ溜まり、発生」

「どこ?」

「Cポイント付近」

「わかった。行ってみる」


 マナが多く発生するとその場で動かなくなって良くない影響を与えかねない。

 そのために世界樹やダンジョンといった存在でそれらの解消を行っているわけだが、それはあくまでも表(?)での話。

 ガイアのように世界を管理しているモノは、それとは全く違う性質や規模のマナだまりを解消する役目を担っている。

 ただし普段の細々としたマナだまりであれば日常業務として処理しているのだが、時折想定以上の規模のマナだまりが発生するとこうして知らせて来る。

 

 ちなみに想定以上のマナだまりがガイアに処理できないというわけではない。

 そもそも俺が管理者になる前までこの星のマナのすべてを管理していたので、この報告はあくまでもこちらがお願いしていることになる。

 マナだまりの解消は、マナの訓練を行う上でちょうどいい相手になるためにわざわざ残しておいてもらっている。

 ただ全てのマナだまりを解消するとなるとそれだけに時間を取られてしまうので、ある程度の大きさのモノが発生したときだけに限って報告をしてもらっているのだ。

 

 ガイアに言われた場所に向かってみると、確かにかなり大きなマナだまりが発生していた。

 マナは何もしなければ、その場に留まるだけで動いたりすることはない。

 それだと世界にとっては何の役に立つこともないためガイアを含めてマナを管理するモノたちがマナを動かす役目を担っているわけだが、こうしてマナだまりが発生するとその動きを止めてしまう。

 人の体でいえば血栓のようなものが出来て血流を止めてしまうようなものになる。もっともマナだまりの場合は血そのものがその場に留まっている感じになるのだが。

 

 とにかくマナだまりがあり続けるのは世界にとっては良くないので、大きく固まっているマナを元の流れに乗せるようにしなければならない。

 やることは単純で溜まっているマナを少しずつマナの『流れ』に乗せてやればいい。

 分かりやすく表現するとすれば、大雨が降って出来た大きな水たまりの水をバケツで掬って側にある川に流すようなものだ。

 ただし下手に移動させると川そのものが決壊してしまったりするので、そこは慎重にやらなければならない。

 

 この時の少しずつ移動させるという行為がマナを扱うための訓練に非常に適している。

 通常マナだまりができる場所には川でいうところの支流が多くあるので、それぞれの支流に適量を流し込むように調整する必要がある。

 どの支流にどれだけの量のマナを流すべきか、これを判断することも含めて実際にマナを移動させること自体が訓練になる。

 最初の頃は小さなマナだまりを解消するにもかなり時間がかかっていたのだけれど、何度も繰り返してきたお陰で今では大きなマナだまりも扱えるようになっている。

 

 この作業は既に何度も行っているので、失敗することは無い……と思いたい。

 初めてやった時にはマナだまりに貯まっているマナを取り過ぎてマナを移した支流が氾濫したようになったり等々、色々な不具合を起こしてしまっていた。

 ただし、それらの不具合の修正はマナだまりの解消よりは手間暇がかからないらしい。

 マナの既存の流れの不具合の調整はガイアにとってはそこまでの負担にはならないとのことだった。

 

 この作業を数回繰り返していくうちに、これらの一連の流れにどこか既視感のようなものを感じて、すぐに世界樹内で行っていた魔力の調整作業に似ていると分かってからはコツを掴むのは早かった。

 もっとも扱うのが魔力からマナに変わっている分、慣れるのには時間がかかったのだけれど。

 兎にも角にも、何度も同じ作業を繰り返してうちに今ではそこまでの苦労は感じなくなっている。

 とはいえ作業にかかる時間はマナだまりの大きさによって変わって来るので、パパっと終わるというわけにはいかない。

 

 今回のマナだまりはこれまでに比べてそこそこの大きさだったので、それなりに時間がかかる作業になった。

 とはいえ慣れによるスピードアップは確実にしているので、これが初めての作業だった場合はもっと時間がかかっていただろう。

 一連の作業を終わらせて中央に戻ると、ガイアからも作業時間の短縮ができていると報告を受けた。

 ガイアはこれまでの傾向からある程度の終了時間を予想しているらしく、その予想を超えた時点で俺の能力が上がっていると判断しているらしい。

 

「随分と頑張っていますね。そんなに張り切る必要はないのですよ?」

「ウワッ! びっくりした。アルさん。まだ探知系は苦手なので急に現れて話しかけられると驚きますよ」

「それはすみませんでした。マナだまりの解消はお上手なのに、探知系がそこまで苦手とは……少しアンバランスな気もしますね」

「そうなんですか?」

「マナだまりの解消ができるということはマナへの干渉が出来ているはずなのに、探知に必要はマナの変化に気付けないのは少しばかりおかしいという感じでしょうか。キラさんの場合は相手がいないので仕方ないことなのかもしれませんが」

「なるほど、そういうことですか」


 確かに言われてみれば思い当る節はある。

 そもそもこの世界でマナに触れることが出来ている存在はほとんどいないといっても過言ではない。

 だからこそ他の存在がマナを使った時に対する警戒心というか、他者が行う周囲の変化に鈍感になっている可能性があるということだろう。

 それが即致命的な問題になるわけではないけれど、このまま放置しておくと問題になりそうだと考え込むことになった。

 その様子をアルさんがじっと見ていたのだが、残念ながらこの時の俺は全くそんなことには気付いていなかった。




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