(49)ファンタジー系とSF系

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 新しく作られたチャット機能で他サーバーのプレイヤーとした最初の会話は、当たり前のように挨拶からだった。

 掲示板の時とは違ってきちんとしたプレイヤー名が表示されているので、これはこれで必要なことだったとは思う。

 ちなみに他の機能でも同じだけれど、こういう時に表示されている名前はあくまでもプレイヤーとしての名前で元居た世界での名前(本名?)ではない。

 自分たちがいる世界が魔法のある世界なので、名前を使った呪術的なものを防ぐことも考えられているといえる。

 ただしリックやソウタのようにSF的なサーバーでは余り意味がないような気もする。

 とはいえ魔法の有るサーバーと交流も始まっているので、本名が知られることがないのは重要なのかもしれない。

 もっとも、運営はプレイヤー全員の本来の名前は知っているだろうとは思っている。

 それはそれとして、リックやソウタとの会話はまだ続いていた。

 

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 キラ:ところで、過去ログを見ましたが、そちらもやはり進展はなしですか。

 リック:残念ながら。そういえば、以前キラさん……だと思うが、こちらの鍛冶師たちにも道はあるのではないかと言われて色々試してみたが、そちらもやはりいい結果は出てないね。

 キラ:そうですか。うーん。船乗りだけが優遇されるなんてことはないと思うのですが……。

 リック:こっちのサーバーにいる鍛冶師たちも根本から考え直したりしているんだけれどな。少しも進んでいる感じはないな。

 ソウタ:個人で使えるワープ装置を作れるか試したりもしていたな。装置自体は出来ていたが、欲しい結果には結びついてはいないな。

 ヒロシ:それはそれで凄い装置のような気もするな。こっちで言うところの転移装置みたいなもんだろ。よく小型化出来たな。

 ソウタ:そっちの道具、魔道具か? それがどう造られているかは分からないが、装置の小型化を目指すことはこっちの世界では王道の一つ、だそうだぞ? 鍛冶師たち曰く。

 

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 以前、生産組にも道はあるのではないかと助言したのは確かに俺だった。

 といっても具体的に何かを言ったわけ訳ではないのだが、あちらのサーバーでいうところの鍛冶師たちはそれでも頑張っていたようだ。

 それでワープ装置の小型化を成功させたというのはさすがとしか言いようがない。

 この話を聞いて『マッドサイエンティスト』という言葉を思い浮かべたのだけれど、すぐに脳内で打ち消した。

 そんなことを言ってしまうと、眷属のアイたちはどうなんだというブーメランが返って来てしまう。

 リックやソウタは知らないだろうが、ヒロシはアイの存在を知っているのでこの場では何も言われなくともあとで突っ込まれてしまう可能性がある。

 

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 キラ:職業的な不均衡問題があるのはどのサーバーでも一緒ですか……。運営がそんな問題を放置する、とは思えないのですが。

 ヒロシ:それな。こっちではそう言われているが、二人のサーバーではどうだ?

 リック:同じだな。鍛冶師を筆頭に物理的に突破をするのが難しい職ってのは存在するからな。

 ソウタ:言われてみるまで気づかなかったが、言われてみれば確かにというプレイヤーがほとんどだった。

     だからこそ鍛冶師たちも本気になって取り組み始めたんだが、結果はさっき言ったとおりだな。

 キラ:そうですか。そもそも転移とかワープだとA地点からB地点に向かうだけなので、知らない場所に向かうということには向かないのでしょう。

 リック:だな。鍛冶師たちもそこで悩んでいるな。今のところ最終的に操縦者の『腕』がいるから道具だけではどうしようもないといったところだ。

 ヒロシ:それはこっちも同じだな。結局のところプレイヤー自身のスキルが重要になって来る。

 

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 道具を開発するだけではどうすることもできない、ということはどのサーバーでも同じ問題になっている。

 今のところSF系サーバーの二人にしか聞いていないけれど、恐らく全てのサーバーで突き当たる問題であることは過去の掲示板での発言からも推測できる。

 となるとプレイヤー自身がスキルなりを磨かないといけないというわけだ。

 ――と、ここまで考えたところでちょっとした疑問がわいてきた。

 今、自分が悩んでいるのは、星の格を上げるために全体の力を上げないといけないということだった。

 となるとSF系サーバーで全体のレベルを上げるということはどういうことなのか、と。

 SF系で全体のレベルを上げるとなると単純に技術の発展を促せばいいとなるわけだが、それだと先の考察と矛盾するのではないだろうか。

 そんなことを考えていたら先にヒロシがそのことに気付いたようで、似たようなことを発言していた。

 

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 リック:ヒロシが言いたいことは分かる。けど、そもそもSF系とファンタジー系を同じに考えたら駄目なんじゃないか?

 ヒロシ:それを言われると何も言い返せないな。根本から何もかもが違ってしまうから考察すること自体意味がなくなってしまう。

 ソウタ:運営がどう考えているかによって変わって来るかな。ただ元から完全に違っているというのもおかしな気がする。

     それだとそもそも最初からあそこまで多様な世界を用意しないんじゃないか?

 キラ:運営には運営の目的があるからこそ何か根元で繋がっていると考えるべきということですね。……上司のことは置いておくとして。

 リック:それな。かの人の存在が色々と惑わしてくるからな。

 ソウタ:さすがに運営も上司の目的のためだけにこんな大掛かりな仕掛けを用意したとは思えない……んだが、そうとも言い切れないところがあるからなあ。

 ヒロシ:とりあえず上司のことは抜きにして考えたほうがいいだろう。というよりも、上司の『楽しみ』が何かしら運営の利になっていると考えたほうが自然だろう。

 リック:話がずれてしまったか。とにかく運営にはSF系だろうがファンタジー系だろうが、何かしらの利になる共通のものがある。

     それを考えると両者間の矛盾は無視できないとなるわけか。

 キラ:そうですね。あと思ったのですが、二人の称号が『突破者』であることを考えるとSF系は宇宙の『広がり』が鍵になっているとは思いませんか。

 ヒロシ:宇宙の広がり……。そうか。となるとこちらでいうところの『星の格』を上げることが、宇宙サーバーでいえば探索範囲の広がりと同じ意味になるということか。

 ソウタ:探索範囲が広げるためには科学技術の発展が必要不可欠。そう考えるとさっきの話も矛盾はなくなるか。

 

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 人が認識できる宇宙が広くなればなるほど、こちらでいうところのマナの増加と同じ意味になるのではないか。

 そう考えての発言だったけれど、どうやらこの考え方は他の三人にも刺さったようだった。

 これが正しい考え方なのかは分からない。それでも一応さっき言っていた矛盾が無くなることも確かではある。

 ただの思い付きからの言葉だったけれど、何となくそう考えるのが正しいのではないかと思えて来た。




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