(48)二つのグループ

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 新しく実装されたチャット機能は、ハブシステムと呼ばれている。

 この名前は運営がつけたわけではなく、別サーバー掲示板内で仮名として考えられたもののようだった。

 別サーバー掲示板では例の二人組が暴れているのであまり活発に使われているわけではないのだけれど、たまには会話も行われている。

 どちらかといえば二人を無視してやり取りが行われていて、毎回スルースキルを発動するのも面倒なので積極的に使われていないという感じになっている。

 とはいえさすがに今回はいつものように気まぐれでのやり取りではなく、ハブシステムについての話がされていた。

 内容自体はハブシステムという仮の名前にしようということと、新しくできたシステムをどう活用していこうかという話になっている。

 もっとも多くのプレイヤーは不特定多数が参加できる掲示板ではなく、グループ内での会話ができる新システムに移っているようだった。

 ちなみにハブシステムができると同時に別サーバー掲示板では名前が非公開情報ではなく、強制的に公開情報となっていた。

 

 匿名掲示板から変わったことで劇的に変わるとは思わないけれど、それはそれで今まで通りになるだけなので構わない。

 それよりも今は、新しくできたハブシステムの方が重要だろうと思う。

 ハブシステムは端末画面上にあるアイコンをクリックすると立ち上がるシステムになっている。

 システムを立ち上げるとすぐにフレンドの申請が来ているメッセージが出てきて、その一覧が確認できるようになっていた。

 

 その一覧を確認して見ると、見覚えのある名前と全く見たことのない名前があった。

 当然というべきか、前者は同じサーバーで管理者になったプレイヤーで、見覚えがない名前は恐らく他サーバーのプレイヤーからだと思われる。

 他サーバーのプレイヤーは例の二人組を知らずに引きそうな気がしたので、とりあえずは知っている名前からの申請だけを許可してみる。

 ハブシステムが出来てから数時間は経っているので、既に彼ら彼女らが情報交換をしているのではないかと考えたからだ。

 

 現在同じサーバーのプレイヤーで管理者になっているのは自分を除けば三人で、その全員から申請が届いていた。

 その全てに許可を出すと、すぐに反応というか返事が返ってきた。

 

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 ヒロシ:すぐに反応がなかったが、あっちの世界に行っていたのか?

 キラ:ちょっと息抜きにダンジョン探索をしてた。それよりもこんな感じなのか。

 ヒロシ:ああ。これは一対一用だな。ちょっと待て。今、同サーバーグループに招待するから。

 キラ:わかった。

 

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 ヒロシとの一度目の会話はそれで終わり、すぐに同サーバーグループからの申請が来たのですぐに許可をした。

 そのグループは、タイトル通り同サーバーにいる管理者だけで構成されているグループになる。

 同じようなものが掲示板として存在しているのだけれど、試しに作ったようだった。

 

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 キラ:よろしくお願いいたします。

 サキ:よろしく。何かこういうのは久しぶり過ぎて戸惑うわ。

 ミズ:掲示板なんかも新しい物は作られていないからな。初期挨拶なんてどれくらいぶりだ?

 ヒロシ:普段広場で会話しようと思えばできるからな。違和感があるという気持ちはよくわかる。

 キラ:それよりも他サーバーのプレイヤーとは情報交換が出来ているのかな?

 ヒロシ:ある程度だがな。といっても人数自体は変わっていないから、余りお互いに進展するような会話にはなっていないかな。

 キラ:それは別サーバー掲示板と変わらないということだね。どちらかといえば、あの人たちの排除のためのものだと思えばいいか。

 サキ:やっぱりキラもそう思うんだ。どう考えてもあの人たちの対策用だよね。

 ミズ:中々に香ばしかったからな。結構運営に要望でも行ったんじゃないか?

 ヒロシ:運営側も顔をしかめている人たちが結構いたからな。それよりもキラ、別グループに招待してほしいという話が来ているぞ。どうする?

 キラ:ヒロシがそう言うってことは問題が無いんだよね? だったら問題ないよ。

 

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 同サーバーのプレイヤー同士だと、わざわざハブシステムを使って会話する必要もない。

 今会話している場所は、新しく管理者になったプレイヤーにハブシステムを説明する場所になるだろうと皆で話していたらしい。

 

 そのことを過去ログで確認していると、しばらくしてヒロシから改めて準備が整ったというメッセージが来た。

 準備といっても別で作られているグループ内で許可を求めるくらいだったので、そこまで時間はかかっていない。

 そのヒロシから別グループ参加への招待状が届いたので、それを許可するとすぐに新しいグループが表示されて参加するなった。

 そのグループは、SF系のサーバーのプレイヤーがいて三番目に別サーバー掲示板に参加してきたプレイヤーも存在していた。

 

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 キラ:どうも、初めまして……ではないのか。よろしくお願いします。

 リック:ハハハ。確かに初めてではないね。ただまあ、きちんと名前が表示されての会話は初めてだから『初めまして』でいいんじゃないか? 宇宙開拓者その1のリックだ。

 ソウタ:俺がその2のソウタだね。掲示板だとどっちも宇宙開拓者表示になっていたから混乱させただろうなあ。と、いうことをさっきもヒロシに言ったところだった。

 キラ:ファンタジー系だと割と細かく職業別に分かれているからいいんですけれどね。SF系は違うのでしょうか?

 リック:いや。ただ単純に『宇宙開拓者』が突破者になりやすいというだけだな。開発とかしていると中々自力で果てを突破するのが難しいというだけだ。

 ヒロシ:なるほどね。そういうことだったのか。いや、ファンタジー系もそう言われると似たようなものか。

 キラ:ウチのサーバー内だと魔力の扱いに長けていないと難しいとかはありますからね。それよりもそっちだと別サーバーと交流できるプレイヤーは『突破者』と呼ばれているのですか。

 ソウタ:そうだね。そっちだと違うのかい?

 キラ:こちらだと『管理者』と呼ばれていますね。そのまま世界の管理者という意味です。

 ソウタ:それは……ファンタジーらしいというか、神様みたいな扱いになっているのかい?

 ヒロシ:どうだろうな? 世界に生きる住人たちに知られればそういう扱いになる可能性もあるが、今のところそこまでしているプレイヤーはいないな。俺が知らないだけかもしれないが。

 キラ:考え方によっては既にそういう扱いになっているプレイヤーもいそうではありますよ。管理者になっているいないに関わらず。

 

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 このグループには俺以外にヒロシとリック、それにソウタしかいない。

 ただし、他のプレイヤーは別でグループを作って会話をしているはずだ。

 そのことは同サーバーグループでサキとミズが言っていたので間違いない。

 そちらは今のところ女子プレイヤーだけが参加しているグループらしいので、いわゆる女子トークがされていると思われる。

 いずれにしても不特定多数ではなく限られた参加者だけがいるグループでの会話はこれからどう活用されていくことになるのか、今のところはまだ分かっていない。




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※ハブシステムの会話を「♢♦」で区切るようにしています。


フォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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