(47)新機能

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 星の格上げについては、俺自身も散々考え続けて来たことになる。

 ただし幾度も同じようなことを考えては実行して、また後戻りするという何とも言えない結果しか残せていないのだけれど。

 メモ帳まとめで見つけた人族プレイヤーと人外系プレイヤーの差に関する考察に関しても、今すぐにどうこうできるようなことは無い。

 メモ帳にまとめられている内容を見つけてすぐに当事者たちに話を聞いたりもしたのだが、目新しい何かを発見したということもなかった。

 それもそのはずで、何かを見つけていれば掲示板なりに報告をして話題に上がっているはずだった。

 掲示板で大きな話題になっていないということは、当然ながら何も見つけられていないということに他ならない。

 メモ帳まとめは当事者以外にも目にしているはずで、それでもなお少しも何もないということは未だに結果が出ていないということだ。

 結局のところ今まで通りにコツコツと試して行くしかないのかと、思わず大きなため息を吐きたくなってしまいそうになる。

 

 管理者になってからは明確な目標らしきものが見つからないために、それまでのような『ゲーム』をプレイしているような感覚はなくなっている。

 勿論新しい世界で『生きている』という実感を持って生活をしていたのだけれど、幾らでも新しい人生でやり直せるという事実がやはりゲームの一種なんだと心のどこかにあったんだと今にして思う。

 ところか管理者になってからは、明確な目標もなくかつて日本で生きていた時のように好きに生きればいいと投げ出されたように感じている。

 そんな曖昧な状態が、今までの行動に現れているように思えてならない。

 

 ――そんなことを考えてしまうのも、うまく行っていないという感覚が付きまとっているからだと思う。

 とにかくこれまでのように焦っても仕方ないと、新しい発見も含めてきちんと考えていくことにした。

 とはいえそんなすぐに結果が見つかるわけでもなく、昼はハウスで一人になって情報を集めたり整理したりして、夜はアンネリとアイリのいるホームに戻るという家庭を持ったサラリーマンっぽい生活を続けることになった。

 やっていることはとてもサラリーマンとはいえないということは横に置いておくとして。

 

 そんな生活を十日ほど続けているとさすがに飽きて来るので、その日はちょっとした気分転換がてら転移装置の近くにあるという手ごろなダンジョンで探索をした。

 そのダンジョン自体は、そこまで強い魔物が出て来るわけでもないので最後まで攻略しようと思えばいつでもできる。

 ただ今回に限って言えばあくまでもストレス発散が目的なので、適当なところで切り上げて地上へと戻った。

 ストレス発散相手になった魔物には申し訳ないという思いも無いわけではなかったけれど、久しぶりに体を十分に動かすことが出来て気分的にはスッキリできた。

 

 気分爽快という顔でホームに顔を出すとちょうど拠点から外に出て来たアンネリに話しかけられた。

「随分とスッキリとした顔をしているわね。一人で潜ったのが良かった?」

「あれ? そんなに顔に出ているかな。それにアンネリやアイリは勿論のこと、トムたちだってそこまで気にすることは無いんだけれどね」

 

 トムたちもそれなりに長い期間俺たちと一緒に行動しているので、今回行ったダンジョン程度では即命に危機になるようなことにはならない。

 それでもやっぱり目を離せないという意味では、気を抜けないということはちょっとストレスのようなものは感じてもおかしくはない。

 アンネリもそれが分かっているからこそ今みたいな言い方をしたのだろうと思う。

 

「キラの場合は顔に出やすいというわけでもないけれどね。今朝は中々厳しい顔をしていたから分かりやすかったわ」

「あ~。心配させてしまったごめん。でもまあ、どっちかといえば考えることが多くて精神的に疲れていただけだから気にしなくていいよ」

「そっか。それで体を動かしに行ったわけね。それならよかったわ。――この後は?」

「まだ夕食までには時間があるからちょっとだけハウスに戻るかな」

「そう。行ってらっしゃい」


 そんな言われ方をすると本当に職場に向かう時のように思えて来るけれど、基本的にハウスに向かう時はこの言い方をしている。

 もし他の誰かプレイヤーがこの場面を見ていたら新婚のやり取りかよっと突っ込みが入ったかもしれない。

 もっとも実際にその通りなので言われたとしても開き直って返答しただろうが、今はそんな突っ込み役もいないのでそのままアンネリと別れてハウスへと戻った。

 

 ハウスに戻ってすぐに念のため掲示板を確認しようと端末を開くと、すぐにメッセージが届いていることに気が付いた。

 普段だと気付けずに見逃してしまうこともあるメッセージだが、ここ最近は端末とにらめっこしている時間の方が長いのですぐに気付くことができた。

 そのメッセージは運営からで、今の自分にとって重要なことが書かれていた。

 

「――このタイミングでチャット機能の追加か。例の騒ぎの対応策かな。他サーバーのプレイヤーと繋がれるというのも大きいね」


 メッセージに書かれていたのは新しい機能が追加されたという内容で、多サーバーのプレイヤーとの一対一は複数人との会話ができるようになるらしい。

 掲示板があるのにわざわざこんな機能を追加したということは、不特定多数が書き込める掲示板ではなく限られたグループでの会話をできるようにする目的がありそうだ。

 この機能が使えるプレイヤーは、こちらの世界でいうところの『マナに触れる』ことが出来たプレイヤーで条件としては他サーバー用の掲示板と同じだった。

 例の押し付け組が未だに騒いでいるお陰で会話らしい会話も無くなってしまった他サーバー用掲示板だけれど、この機能の追加で益々使われなくなるような気がする。

 あるいはこのチャットが出来たお陰で好き勝手に騒いでも仕方ないと思い直して正常な状態に戻る……かもしれない。

 

 彼らがどういう目的で動いているのか分からないので、そのことはこれ以上考えても仕方ない。

 それはともかく今はチャット機能が出来たことの方が自分にとっては重要だろう。

 早速とばかりにショートカットをクリックしてみるとどこかで見たことがあるような画面が開いた。

 一応ヘルプのような機能がついているのでそれを確認してみると、要はフレンド内でグループを作ってそのグループ内での会話ができるようになるようだった。

 

 さらに詳しく見ていると何人から申請らしきものが届いていて、それがフレンド登録用のものだと気が付いた。

 その中には同サーバー内のプレイヤーである届いているものもあったので、早速その申請を許可してみる。

 ちなみにチャット機能はプレイヤー名がそのまま使われるようで、同サーバープレイヤーであればすぐに見分けることが出来るようになっている。

 さらにヒロシとのグループを作ることが出来て、早速一言目に挨拶をして見るとすぐにその答えが返ってきた。

 

 ダンジョン探索をしていた自分とは違ってヒロシは既に別サーバーとの繋がりも得ているようで、数個のグループに招待される形で参加できるようになった。

 勿論というべきか、それらのグループの中には例のお騒がせ二人組は存在していない。

 これで別サーバーのプレイヤーとの会話がスムーズにできるようになったことになる。

 本来であれば掲示板を使えればいいだけの話なのだけれど、不特定多数が参加できる掲示板だと問題があると分かったのでこうなるのはある意味では当然の流れだろうと思う。




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