(46)星の格上げについて
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世界全体の技術レベルの向上に関してはひとまず置いておくとして、直近のやるべきこととしてはまだアイリの実家への訪問が残っている。
とはいっても、アンネリの時と違ってこちらは大きなイベントが起こることもなくすんなりと終わった。
ヒノモトという国自体がユグホウラと強い繋がりがある上に、守護獣であるタマモのこともあって変に絡んでくることもない。
下手にユグホウラに手を出すと家ごと吹き飛ぶことになることは分かっているので、変にユグホウラにちょっかいを掛けて来ることもない。
以前あったように俺に対する対個人となるとまた話は変わって来るとは思うけれど、それと国家はまた別の問題と切り分けて考えている。
とにかくアイリの実家である津軽家は、過去のこともあってか余計な真似をすることは無いと分かっていたので安心して話が出来た。
勿論アイリと結ばれることによる利益を一切考えていないとは言わないが、その程度は許容範囲といえる。
何よりも当主である直弼は、家としての利益よりも娘であるアイリの幸せの方を優先していることは目に見えて分かったので敢えて藪をつつくような真似はしなかった。
ツガル家への報告を終えたあとは、ホーム周辺に建てられている屋敷内で結婚式を挙げた。
といっても参加者は当事者である俺とアンネリ、アイリといつも一緒に行動しているメンバーに加えて眷属たちだけになる。
自分の感覚としてはそれでいいのかとも思えたのだけれど、アンネリとアイリとしては特に問題がないという答えが返ってきた。
そもそもこの世界で盛大に式を挙げるのは両家の繋がりを喧伝する必要がある貴族や豪商くらいで、一般となると身内だけを集めて簡素な食事会だけをするのが当然らしい。
そんなんでいいのかなと思わなくもなかったけれど、アンネリやアイリからするとむしろホームで式をしたという事実のことの方が重要だそうだ。
他家に嫁ぐという認識が強い女性の場合、きちんと迎え入れてくれるという体制を整えてくれているという意味になるからだ。
以前の価値観でいえば色々な方面から騒がれそうな考え方ではあるのだが、それをこの世界で言い出しても意味はない。
魔物どころか一般市民が戦闘に出ることが稀な世界にある価値観を強制するとろくなことにならないということは、一周目の人生でも実際に体験したことなのでここで口を出すことはしなかった。
結婚式事態は滞りなく終わり、これから数日はホーム内でゆっくり過ごすことになった。
トムたちは別の場所に転移して冒険者として活動するようで、ホームで一日だけゆっくり過ごしたとは転移装置を使ってヒノモトへと向かった。
アンネリとアイリは文字通りこれからホームになる場所をゆっくり見て回ることにしたようだ。
特にアイリにとってみると世界樹を間近で見る機会など早々なかったので、じっくり祈りを捧げたいと言っていた。
そうして出来た空き時間を使って、俺自身はハウスに戻って色々と調べ事をすることに決めていた。
特に世界全体のレベルアップ(?)について、新しい情報やもしくは見落としたりしていることがないかをじっくり確認することにしたのだ。
ハウスにある端末から確認できるメモ帳には、プレイヤーたちが日々掲示板で話されている膨大な内容が纏めている。
掲示板の量も多くなっていて過去ログを遡って調べるのに一苦労だという意見が出て来たころからまとめサイトのようにトピックごとに纏められているので非常に便利な場所になっている。
掲示板をまとめたメモ帳は、これまでプレイヤーが掲示板やら対面やらで話してきた内容が纏められているため今では膨大な量になっている。
だからこそトピックごとに区分けされているわけで、その中から世界の技術レベルに関する部分を読み始めた。
それらのメモ帳は確定した情報から雑談レベルのものまで書かれているのだけれど、きちんと確定した情報から噂程度のものだという区分けがされている。
丁寧にまとめられて非常に見やすい作りになっていて、情報更新してくれているプレイヤーには感謝しかない。
「――――うん? これは……」
まとめメモを見ていると一つ気になる情報を見つけた。
ただそれはあくまでも雑談レベルというのもおこがましいもので、掲示板で数行だけ話題になったものだった。
その時はちょうど地脈に関係する新しい話が出たころで、掲示板はそちらに話で持ちきりなり話をしていた当人たちもこのまとめメモが出来た時には忘れていたと書かれていた。
そもそも世界全体の技術レベルを上げるということは、世界中にある魔力の元となるマナの量を増やすことが出来るのではないかということが話の始まりとなっている。
マナの量が増えれば世界の『格』が上がり、より多くのことが出来るようになる……かもしれないという仮定に仮定を重ねた推論の元、今でも多くのプレイヤーがどうにかできないかと頑張っている。
世界の管理者となった身からすれば世界の格を事が出来れば、それは管理者としての格が上がることと同じ意味になる。
――ということをアルさんからも聞いていた。
管理者としての格どうこうはあまり気にしていないというと嘘になるけれど、それよりも例の別サーバーの暴れまわっている人たちのことは気になる。
ここで文字通り格上にでもなられると、益々調子に乗ることは目に見えているからだ。
とはいえあの人たちのために、焦って世界に対して余計な混乱を招くことは本末転倒になってしまう。
なのであくまでも管理者として格上になる云々という話は、あくまでもおまけ程度でしか今のところは考えていない。
そのことは横に置いておくとして、問題は先ほどの世界――というかプレイヤーが住んでいる『星』の格についてだ。
星の格を上げるということについては今でも考え続けていることなので良いとして、そこに書かれていたのはその方法についてだった。
それも今一般的に行われている人族に対する技術レベルの向上ではなく、魔物というか眷属に対しての考察だった。
早い話が眷属のレベルさえ上げれば星の格も上がるのではないか、という話だった。
何故そんな話になったのかといえば、単純にダンジョンマスターなどの人族の国家に対して影響を与えづらい人外系のプレイヤーに対しての救済措置のようなものがあるのではないかということが発端になっているらしい。
もっともダンジョンマスターの場合はダンジョンに意図的に魔道具などを宝箱に仕込めば、間接的に研究を促すことは出来る。
ただその場合でもダンジョンの近くにある一国か数か国に影響を与えるだけで、あくまでも限定的にしか影響を与えないのではないかという考察までされていた。
余談ではあるけれど、この考察はあくまでもメモ帳の編集者たちが考えたことで掲示板上での話は数回のやり取りで終わるような簡単な内容だった。
話を戻して、そうなると人族として生まれているプレイヤーよりも人外系として生まれたプレイヤーは世界全体に与える影響は限られることになる。
ダンジョンマスターや領域主として行動しているならまだしも、個人(個体?)として生きている人外系プレイヤーは極端に不利になる。
プレイヤーの中には性格的に全体を統率することに向かない人もいるはずだ。
そうした人外系プレイヤーはいつまで経っても星の格を上げられないということになり、運営(上司)がそんな状況を許すのかという疑問が生まれるという内容になっていた。
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