(29)運営の意図
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管理者掲示板で暴れているプレイヤーのことは放っておくことにしたのは良いとして、サーバー掲示板がどんな流れになっているのかも確認しておいた。
相変わらずのんびりとした空気が流れているのはいいとして、少し気になったのは管理者掲示板のことがあまり語られていなかったことだ。
管理者掲示板が荒れていることは知られているようだけれど、元の世界にあった掲示板でよくあった程度という認識しかないらしい。
これは管理者になっているプレイヤーが敢えて訂正しないことで、そう思わせているとしか思えなかった。
まだサーバー内にいる管理者は片手で数えるほどなのでもしかすると内輪だけで話し合って決めたのかと思い、そのことをヒロシに聞いてみることにした。
その結果返ってきた答えは――、
「ああ、そのことか。別に具体的に集まって話したということはないな。キラだったら分かると思うが、こんなものかと放置しているだけだ」
「あらら。てっきり何かの意図があって隠しているのかと思ったんだけれどな」
「こっちのサーバーの掲示板は、いい意味で掲示板らしくないからな。変な文化を持ち込みたくないと思うのはいいことなんじゃないか?」
「ごめん。別に文句を言いたかったわけじゃない。むしろこっちの掲示板は居心地がいいと思っている方だから」
「キラならそう言うと思っていたさ。うちらのサーバーは、掲示板が荒れる前にこの広場が出来たからな。ここで敢えて変な流れを作る必要もないだろうさ」
「確かに同感だね。ということは、しばらく管理者掲示板のことは話さなくてもいいか」
何か意図があって隠しているのかと聞いてみたけれど、自然にそうなっていたという答えが返ってきた。
今現在管理者になっているサーバー内のプレイヤーは自分も含めて四人で、他の二人の顔を思い浮かべればそうするのも納得できるメンバーではある。
ちなみに管理者になっているのはハートとサキの女性プレイヤー二人だけれど、自ら管理者になることを選んでいる時点でただ大人しいだけではないことは分かる。
二人とも直接話をしたことがあるのでついでに顔を思い浮かべつつ考えてみるが、敢えて余計な事にまで手を突っ込みたくはないと考えていることはヒロシの口ぶりから考えても明らかだ。
管理者になるプレイヤーが増えてくれば管理者掲示板のことも知れ渡っていくかもしれない。
それはそれで自然流れなので、今いる管理者プレイヤーが隠すことは無いとは思う。
そもそも俺自身も今のままでいいかと考えているのだから、人のことをどうこういえるわけもない。
「――それにしてもあの人らは何故管理者掲示板で暴れているんだ? 他サーバー掲示板じゃなくて」
「さあな。他サーバー掲示板だと人数が多くて無視されやすいからじゃないか? 人数が少ない管理者掲示板のほうが扱いやすいと考えたとか。それにアンケートの対象になっているのは管理者だけだからな」
「そっか。アンケートのことがあったか」
他サーバーのプレイヤーと交流できる掲示板は二種類あって、一つが管理者掲示板、もう一つはこちらのサーバでいうところの中央の壁突破をしたプレイヤーが他サーバープレイヤーと交流ができる掲示板になる。
何故か後者の掲示板はそこまで荒れているということはなく、だからこそ管理者掲示板があんな状態になっていることに気付いているプレイヤーは少ない。
管理者掲示板で暴れているプレイヤーが何を考えてああなっているのかは分からないけれど、何かの意図がありそうだと考えるのは考え過ぎだろうか。
「……このタイミングでのアンケートといい、裏で運営が動いているってことはないよね?」
「どうだろうなあ。運営の一部が、ということならありそうだが少なくともうちらのサーバーの運営が動いているってことは無いと思うぞ。指導官に直接聞いてみたが、返ってきた答えは否定だったしな」
指導官というのは俺でいうところのアルさんのことで、中央の壁突破をしたあとに各プレイヤーに付けられている運営メンバーのことだ。
ヒロシがその指導官から話を聞いたということは、恐らく間違いないないだろうと思われる。
そもそも運営が裏で動いているとしても、何の意図があってそんな動きをしているのかが分からない。
思い当るとすれば、運営内の権力争い的な何かがあるのかもしれないと推測できるくらいだ。
「そっか。俺も後でアルさんに聞いてみることにするか。何となく笑って誤魔化されそうな気がするけれど」
「そうなのか? 俺の場合は特に何も考えずに答えてくれた気がするな」
「アルさんの場合、自分が知らなかったとしても、もしかしたらあり得るかもという可能性があることまで考えそうだからなあ……」
「そういうことか。あの人だったら確かにあり得そうだな。結構立場も上みたいだし」
広場の中央にある役場には運営側の人(?)がいるけれど、アルさんがそこで業務をすることはほとんど無い。
それでも多くのプレイヤーが広場でアルさんを目撃していて、ヒロシも見たことがあるようだった。
そのせいかどうかは分からない。ただ時折他の男性プレイヤーから恨めし気な視線を向けられているように感じるのは気のせいではないだろう。
どちらかといえばノリでやっているプレイヤーが多いと思うのだけれど、中には本気の人もいそうだと思わせるところがアルさんの怖いところだ。
「運営がどう組織されているかは全く分からないけれどね。もしかしたら俺たちみたいに結構緩くやっている可能性もあると思っているよ?」
「キラもそう思うか。だとすると逆に、あれだけの強い存在をどうやってまとめているのか気になるところだな。少なくとも上司は俺たちから見上げても見えないくらいのところの高みにいそうだな」
「むやみやたらに相手のことを大きく見るのはどうかと思うけれど、上司に関しては確かにその通りだと思うわ」
「そもそも反抗なり反乱なりなんてことは全く考えていないから、そんなことを考えても意味はなさそうだけれどな。
――うん? いや、待てよ? もしかしなくても俺たちも運営の中の派閥の一派と考えられるのか?」
「あ~、それは……言われてみれば確かに。運営の実態が全く見えないから実感も全くないけれどね」
「それもそうか。こんなことを考えること自体、あまり意味がなさそうだ。どう考えても今の俺たちだと足手まといにしかならないだろうし。戦闘に限らず」
あくまでも仮定の話でしかないけれど、運営ないしは上司に敵対的な勢力がある可能性も無いわけではない。
もし俺たちプレイヤーが『戦力』の一部として見なされるかといえば、恐らくそうではないだろうと思う。
理由は簡単なことで、ようやくマナの扱いについて学び始めた段階の俺たちでは到底戦力にはならないだろうからだ。
掲示板で暴れているプレイヤー二人は、そこまで把握できているのだろうかと不思議に思う。
だからこそ例の二人の運営に乗せられているだけじゃないかという推測しているわけだ。
とはいえ今のところアルさんをはじめとした運営が、プレイヤーにそんなことを要求したという話は全く聞いたことがない。
それが自分たちがいるサーバーだけなのか、あるいはほかのサーバーも同じなのかは分からない。
いずれにしても一度はアルさんに話を聞いてみないと分からないということが分かったので、ひとまずヒロシと別れてそのまま地脈の中央へと向かうことにした。
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