(10)サーバーごとの違い
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< Side:ラッシュ >
俺の名はラッシュ。とある世界でダンジョンマスターなんてものをやっている存在だ。
ダンジョンマスターが職業だとすると、種族はドラゴン。本来はもっと長ったらしい種族名がついているが、その辺はどうでもいいだろう。
とにかくドラゴンがダンジョンマスターをやっているということだけ分かればいい。
その世界に来るまでは
それがまた同族たちの反感を買ったりもしているんだが、それは別にどうでもいいか。
俺に対して反感を持っているのは一部だけで、多くはそこまで気にしているわけでもないからな。
ダンジョンマスターは本来ダンジョンに縛られて外に出ることは不可能だが、今の俺はほぼ自由に出歩くことが出来ている。
それもこれも
あいつが分体を作るというやり方を生み出さなければ、今も俺は自由にダンジョンの外を歩き回ることなどできなかっただろう。
プレイヤーの中には俺と同じようにダンジョンマスターをやっている奴がいるが、同じように感謝している者は多いはずだ。
キラのことは幾らでも語ることがあるから横に置いておくとして、今俺はプレイヤーが集まる通称『広場』に来ている。
この広場って名前も色々な通り名を経て今の呼び方になっているが……またいつか変わることもあるのだろうな。
何せ自由気ままに生きることを目的の一つとしているプレイヤーが多いだけに、好き勝手に呼び始めるからな。
もしかすると他のサーバーとの直接交流が始まれば固定名が付けられるかもしれないが、それはまだ先の話だと思う。
広場の名前のことはいいとして、とあるメッセージがシステム上に流れたことに気付いて俺は今この場に来ていた。
「お? なんでこんなところを歩いているんだ、ヒロシ」
「それは俺のセリフだな、ラッシュ。君はデパートを使うことはほとんど無いだろう? 俺はちょっと買い物があって寄ってきただけだ」
「なるほどな」
広場の中央にあるデパートには、生産者が集まって様々な品を売り出している。
管理者になったからといっても、必要になるアイテムはあるということだろう。
そう。システムメッセージに流れたのは、新たな管理者が生まれたというものだった。
その新しい管理者になったヒロシと話をするために、俺は広場に来たんだ。
「それはそうと管理者になったんだろ? 少しくらい話をしないか?」
「やっぱりそれが目的か。といっても俺から話せることはほとんど何もないぞ? キラは出し惜しみ無しに情報を出しているからな」
「あいつならそうだろうな。それはいいとして、お前から聞ける話もあるだろう。例えば、壁突破で出遅れたお前がどうやってこの短期間で管理者になれたのかとかな」
「それか。別に難しい話じゃないんだがなあ……」
少しだけ微妙な表情になったヒロシから話を聞いてみれば、その言葉通りに確かに難しいことではなかった。
そもそも魔法使い系のトッププレイヤーだったヒロシは、壁突破をするまでは地脈の中で色々と実験をしていたそうだ。
それらの実験に満足した後は管理者を目指したわけだが、壁突破の時のように時間をかけるわけでもなく真っすぐに『マナに触れる』ことを目指したらしい。
魔法使い系だけあって魔力の扱い――もっといえば魔力操作に長けていたので、割とすんなり解放者になることが出来たそうだ。
「そうか。やはり鍵は魔力操作だとヒロシも思うか」
「だろうな。キラのことを見ていれば分かるが、俺たちのサーバーはやはり魔力操作が鍵になっているサーバーだと思うな」
「確かに。宇宙系サーバーで魔力操作がメインと言われても首を傾げるだろうからな。各サーバーで鍵になる何かがあるということか」
「もしかしたらその辺りも運営の実験の一環になっているのかもな。これはあくまでも俺の想像だが」
今のところ比較できる
ただ俺としてはその『想像』が十中八九当たっているのではないかと考えている。
そうでなれば、そもそもあれほどの多様な世界を事前に準備しておくはずがない。
元々作ってあった世界の中から俺たちプレイヤーが選んだものを抽出しただけかもしれないが、広場にある役所で見ることが出来る運営のメンバーが、上司に振り回されるだけで用意したとは思えない。
「その辺りはもう少し人数が増えないと分からないだろう。できれば俺たちのサーバーだけではなく、他のサーバーの情報も欲しいが……今のところ誰もいないから難しいだろうな」
「それもそうか。まあ、いいさ。今はヒロシが管理者になれたと分かっただけでも有難い」
「他人事のように言うな。一応お前が次に近いと言われていたよな?」
「そうだが……正直、今はダンジョン運営が忙しくてな。最終進化は後回しになりそうだ」
「そうなのか? その辺りは個人の自由だからな。好きにすればいいさ。出来ることなら管理者になることで他と繋がると分かれば、もっとやる気を出すプレイヤーも増えるだろうにな」
「他と繋がるというと、ここの広場みたいにか? それはそれで難しそう……いや、いっそのこと運営に頼らず俺たちだけでどうにかしているか?」
「そんなことが出来るのか? それこそここの広場のようにダンジョンマスターの力を使えば……いや、無理だろうな。少なくとも最低限でも管理者にならないと」
「ヒロシもそう思うか。俺もそう思っていたんだが、そう考えると不思議なことがあるよな」
「そもそもダンジョンマスターがいるサーバーで管理者が生まれないと意味がない――ということだろう」
さすがと言うべきが、俺が不思議に思っていたことをヒロシもしっかりと認識していたらしい。
ここの広場を作った時と同じように、ダンジョンマスターの力を使って別の次元に空間を作ってそこにサーバー間で行き来できる道を作る。
理屈上はできなくはないだろう。サーバー間での道も恐らくマナの力を使えば出来る……かもしれない。
あくまでも机上の空論ではあるが、絶対に不可能だと言えないところが逆に怪しいともいえる。
運営は一応『出来ない』とか『用意できない』とは言っているが、プレイヤーが出来るようになるのを待っているようにも見える。
そのこと自体はいいとして、今問題にしているのはダンジョンマスターという限られた力に頼った方法を運営が用意するのか――ということだ。
これだけ大掛かりな舞台を用意することが出来るのだから、それ以外にも方法があってもおかしくはないと考えたほうが自然だろう。
それがどういった方法なのかは、今のところ推測することすら不可能だ。
「推論だけを重ねて行っても意味はないか。それよりもラッシュ、さっきダンジョン運営が忙しくなるとか言っていたな。何かあるのか?」
「忙しくなるというか、現在進行形で忙しいんだがな。ちょっと近くの国がとち狂ってな。俺のダンジョンに攻め込んできているんだ。何を考えているんだか」
「それはそれは。様子を見る限りではダンジョン自体が潰される様子はなさそうだが、なにか問題でもあるのか?」
「まあな。このまま続けていてもただの弱い者いじめにしかならないところがな……。何を考えて攻めてきているんだか」
本気で意味が分からない国の行動に俺がため息を吐いたが、それを見て察してくれたのかヒロシが呆れたような顔になっていた。
そしていずれ愚痴でも聞いてもらうかもしれないと俺が言うと、そういうことならいくらでも聞いてやるとヒロシが返してくれたところで広場での話は終わった。
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明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
フォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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