(7)情報の扱い
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無事に酔いがさめた人外集団(人の姿ver.)は、話を聞いた話を聞いた後で盛大にため息を吐いていた。
揃って「さすが木の人」と言われたのは納得いかなかったけれど、一応言っておいた不満の声は綺麗にスルーされてしまった。
「――それにしても、最終進化か。最後は結局同じ職になるというのが寂しいというか。……そもそもそれが運営の目的だったと言われれば何とも言えないな」
感慨深げにそんな言葉を漏らすラッシュに、他のプレイヤーも頷きつつ同意していた。
今説明したのは最終進化があるということだけだったが、ここにいる全員が『管理者』とかそれに類するものだろうと予想はできているようだった。
もともと掲示板内でも予想はされていたので、どちらかといえばとうとう来たかという感じで受け止めているように見える。
特に人外プレイヤーは進化も楽しみの一つでもあるので、最後が見えたということで寂しさを覚えているのかもしれない。
ただこれについては一つの推論があるので、それを話すことにした。
「これはまだ予想の範疇でしかないんだけれど、いいかな?」
「なんだ? 最終進化の情報に触れたのはキラだけなんだから、予想でもなんでも話してくれ」
「それじゃあ、遠慮なく。恐らくだけれど最終進化というのはあくまでも運営……というか、今までのシステム上の処理であって恐らく進化そのものかそれに類する何かは続くと思うんだ」
「システム上? ――もしかしなくても、プレイヤーから解放されるとかそんな感じか?」
「それ、良い表現だね。そうそう。そんな感じ。もっといえば、物語としては終わったけれど普段の生活はまだまだ続くよ――的な?」
「なるほどな。確かにそれはありそうだな。インテリジェンスブックから知識を得たキラだからこそ思いつくことか」
「その辺は……どうなんだろう? 実際に知識の一つとして教わったわけじゃないから、都合よく想像しているだけかもしれないけれどね」
「それでも、だ。実際クリアしたあとどうなるかは色々話されていたが、そんな意見は出ていなかった……よな?」
ラッシュがそう問いかけると、周りにいた他のプレイヤーたちも少し考えた後で頷いていた。
もうすでに自分たちが生きている世界をゲームそのままだと考えているプレイヤーは少ないけれど、運営が用意したシステムの中で生きているという事実は変わらない。
そうでなければシステムメッセージなどのアナウンスは何なのか、という問題が残るからだ。
そんな話をする中で出て来た推論が、プレイヤーをそれぞれの世界を管理させるために育てているのではないかという説だった。
インテリジェンスブックで得た知識でその説が見事に当たりだと分かったわけだが、『その先』についてもある程度の予想ができたことになる。
「――当たり前といえば当たり前だけれど、プレイヤーはしっかりとその世界で生きているわけで、物語とかゲームみたいに『その後は幸せに暮らしました』では済まないってことだよね」
「何だ、突然? 言いたいことはわかるが」
「キラはクリア後の世界のことを考えていたんだろ。確かに気になることではあったよな」
「どちらにしてもこれまでの延長だと思えばいいんじゃないかとは思うけれどな。ただ実際に最終進化とやらをやってみないとどうなるかは分からないけれどな」
プレイヤーの一人がそう言ったとおりに、最終進化をしてみないと実際にどうなるかは分からない。
アンネリたちにも言った通りいきなりそれぞれの世界から切り離されてしまうなんてことにはならないとは思うのだけれど。
『最後』という言葉の響きのせいかどうにも感傷的になってしまうけれど、今日話したいことはそのことではないことを思い出して本題に入ることにした。
「それでここからがそうだなんだけれど、この情報どう扱ったら良いと思う?」
「それは……確かに悩みどころだな。特に情報制限は掛かっていないのか?」
「見事なまでに全部こっちに任せられているね。それだけにどこまでどうやって開示するかが悩みどころでね」
「インテリジェンスブックが
「だよなあ。どこかの国なり王族なりが保管しているとしたら奪うか仲良くなるかしないといけないだろうしな。交渉するという手もなくはないが、当たりを引くまでどれほどの手間がかかるか……」
インテリジェンスブックが鍵になっていることは既に言っているので、それぞれのプレイヤーから問題点が次々に上げられていく。
この場にいるほとんどが人外プレイヤーなだけに、特にインテリジェンスブックに触れることの難しさが一番気になっているようだった。
それと同時に、この情報を本当に掲示板に上げていいのかも問題にしている。
本当の意味で最後の情報となりかねないだけに、ネタバレを嫌がるプレイヤーのことを考えると掲示板に上げるのはためらってしまうと考えるのは同じらしい。
色々と意見を出しつつ話していくうちに、だんだんと形がまとまってきた。
「――それじゃあ、掲示板に出すのはインテリジェンスブックから情報を得られたということだけ書いて、あとは伏せるということでいいかな?」
「だな。掲示板に上げる情報は最低限。あとはこの場にいるプレイヤーが詳細を知りたがった人に直接伝えると。それだとネタバレを避けたいプレイヤーにも配慮できるだろう」
「ネタバレ云々もあると思うが、今のままの生活で十分と考えるプレイヤーも少しずつ増えているからなあ」
ラッシュに続いて他のプレイヤーの一人がそう言った通り、攻略を進めるのではなく今の安定した生活に満足しているプレイヤーも一定数存在している。
そんなプレイヤーに対して、無理に情報を押し付ける必要なないだろう。
もっともそうしたプレイヤーの中には、掲示板を見るのはやめて広場での人付き合いで抑えていたりもする者もいる。
「今回の件でまた変わるかも知れないけれど、地脈の中央突破を目指さないプレイヤーも増えてるからね」
「人族プレイヤーの中には、今以上の力を手に入れても面倒だと考える奴もいるからな。気持ちはよくわかるが」
「変に逸脱した力を手に入れると色々と面倒なことになりかねないからねえ。周囲全部が敵になってしまうとか。国相手に戦って勝てたとしても後が面倒と考える気持ちはよくわかる」
「手に入れた力をずっと隠し通すというのも辛いだろうしな。そう考えると俺たち人外系は、ある意味で分かりやすいんだろうな」
「強い存には従って、隙を見せれば食いつかれるだけだからねえ。時々何も考えずに突っかかってくる魔物もいるかけれど」
「そういうのを蹴散らかしてこそ上に立てるともいえるからなあ。いずれにしても常に上を目指しておけば問題はないわけだ」
人族は人族の問題があるけれど、人外系は人外系で色々と苦労はある。
一番は常に力で上に立っていないといけないということだろうか。
プレイヤーは特殊な立ち位置にいるので一対一で簡単に負けることはほとんどないのだけれど。
もしかすると人族プレイヤーも人外プレイヤーも『最後の職業』が何であるかを知れば、どんな理由があるにせよそれを目指すようになるかもしれない。
とはいえそれをこちらから強制するつもりはないので、あくまでも当人が知り違った段階で教えるというスタンスを変えるつもりはない。
恐らく運営もそのつもりなのは、これまでのプレイヤーに対する関わり方などからも推測できる。
どちらにしても、プレイヤーに対する情報の扱いをどうするかの方針は決まった。
この場にいるプレイヤーには既に、最終進化の情報については全て教えてあるので他のプレイヤーから質問されても困ることはないはず。
それぞれの世界で細かい違いは出て来るかも知れないけれど、それはそれぞれの世界にあるインテリジェンスブックから情報を得た時点で判明すると思う。
だからこそ運営はわざわざインテリジェンスブックなんてものを用意したのだろうから。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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