(5)情報整理
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
二つの選択肢をどうするかひとしきり悩んだあとで、ふと別に自分一人で悩まなくてもいい――というよりも当人たちに選ばせたほうがいいだろうという結論になった。
「――確かに付喪神には禁止されてなくて言えることはあるんだけれど、本当に言ってもいいのか悩んでいてね」
「「どういうこと(でしょう)」」
「今までも言おうと思えば言えたんだけれどね。言ったらつまらなくなると考えて言っていなかったんだ。だからどうしたものかと」
「つまらなくなるというのはどういう意味?」
「うーん……。地脈に触れ続けているといつかある事が起こるんだけれど、その答えを先に知ってしまうとかそんな感じかな」
そう言うと、二人は納得した顔になると同時に悩み始めた。
二人とも立派な大人なので答えを知っていても訓練は続けるだろうが、モチベーションが変わってきてしまうのはどうしようもない。
ひとしきり悩んでいた二人だったけれど、出した答えは『保留』だった。
そもそも地脈への接触もようやく多少余裕がある状態でできるようになったばかりなので、もっと自然にできるなるほうが先だということらしい。
結果的にそうやって先延ばしにしていくうちに、いつの間にか答えにたどり着いているというパターンになるようなきもするけれど、それはそれでこちらとしては狙ったとおりになる。
敢えて保留としているのは、どちらかといえば何かあったときのために選択肢の残しておいているだけだったりする。
「――そういうわけだから今は知らなくてもいいわ。別に知らないからと言って訓練に影響するわけじゃないのよね?」
「そうだね。というか訓練に影響するんだったら真っ先に教えているし」
「そうよね。あなただったらそうするわよね」
微妙に信頼されているのか突き放されているのか分からない答えを貰ったところでこの話は終わりになった。
あとは司書たちに教えた魔力操作についてもついでのように話に上がったけれど、こちらは大した驚きもなく「ふーん」だけで済まされていた。
アンネリ自身がノスフィン王国で講義をしたこともあるので、今更ヒノモトでそのことに触れても問題ないという認識なんだろう。
そもそもを言えばアンネリたちに魔力操作を教えた俺が、ヒノモトで広めたとしても口出しする理由がないということもあるかもしれない。
俺自身としては、黙っていてもいずれはシーオから広まって来るはずなので、それが多少早まっただけと考えている。
そんな話をした後は、自室に籠ってインテリジェンスブックから得た知識を整理することにした。
整理といってもやることは明確なので、あることをさっさと実行してしまうということもできる。
ただ与えられた知識がそれなりの量になるので、まずは落ち着いて考えておきたかった。
こうして自力で知識を手に入れた以上は、運営のアルさんもあっさりと教えてくれると思うけれど折角なので自分自身できちんと考えておきたい。
まずインテリジェンスブックが教えてくれる知識については、彼(彼女?)に触れた時点で必要なことを教えてもらえるようになっている。
一度触れると次に触れるまで期間が必要で、これはゲーム的にいえばクールタイムを待つのと同じ効果らしい。
どのくらいの期間が必要なのかも人によってまちまちなので、新たな知識が欲しい場合は何度か試すのが吉といえる。
このこと自体はあのインテリジェンスブックに触れた者すべてが知る事なので、過去には知っていた者もいるかもしれない。……制約によって周りに話すことは出来ないのだけれど。
ここまでが大前提として今回俺が得た知識がどんなものかといえば、プレイヤーに特化したものだった。
一言で言ってしまえば、あのインテリジェンスブックは運営が用意したものであることをはっきりと教えられた。
当然というべきか残念ながらというべきか、この世界は運営がプレイヤーのために作った世界なので、前史文明なんてものは存在していないそうだ。
そのためいくら物的証拠を探してもあるはずがなく、無駄な徒労で終わってしまうとのことだった。
ここまではある程度予想していた内容なので、そこまで驚きはない。
もしやれることがあるとすれば、神々が世界を作ったという説を支持して前史文明はないことを広めるくらいだろう。
かつての日本で歴史を学んだ身としては違和感がありまくりだけれど、こちらの世界の住人たちはごく当たり前に受け入れている内容なので全く問題ない。
というよりも今は前史文明説よりも神々説の方が受け入れられているので、聞かれたら答えるくらいで丁度いいと思う。
インテリジェンスブックから教わった知識の中には、今の俺にとって一番重要だと思われるものも含まれていた。
その知識が何かといえば、プレイヤーとしての『最終進化』についての情報だった。
世界樹も散々進化を繰り返していて既に進化も無いのだろうと考えて来たので、いきなりぶっこまれた感がある。
とはいえまだ進化する余地があるなら、それを目指さない手はないだろう。
ちなみに何故プレイヤーとしてとなっているのかといえば、どんなルート(職業)を辿ってきたとしても最後になるのがこの職業(地位?)だからになる。
その職業が何かといえば、『管理者』というものになるそうだ。
何の管理者かといえば、掲示板で多くのプレイヤーが予想していた通りにそれぞれのプレイヤーが活動している世界の管理者となる。
一種の神様的存在になるそうだが、雇われ神様という表現の方が正しいように思える。
神様と管理者のどちらで呼ばれるべきかは、それぞれのプレイヤーの判断によって変わって来ると思う。それぞれの世界で言葉の捉え方も変わっているだろうし。
俺自身は神様というのは大仰すぎるので管理者の方がいいだろうと思う。
……なんてことをまだ進化すらしていない状態で考えられているのは、既に進化の条件を満たす一歩手前まで来ているからだ。
より正確にいえば、あのインテリジェンスブックに触れることができた時点で条件クリアとなったらしい。
たった一冊の本に出合うことが条件クリアとなっていることに賛否両論は出そうな気もするけれど、少なくとも俺自身は出会うことができたので文句を言うつもりはない。
もし二周目を開始せずとも一周目の時点で図書蔵に入っていた可能性もあった……というよりも高かったと思っている。
一周目を終了した時点では領域拡張に力を入れていたけれど、ある程度のところまで広げた時点で進化もストップしていたので何かしらのヒントを求めて書籍巡りはしていたはずだ。
実際に現在の二周目でインテリジェンスブックと出会えたのは、ある種の必然だったともいえる。……結果論ともいえるけれど。
ただし俺自身はそれでいいとして、人族の領域に入りずらい人外系のプレイヤーはどうなっているのか気になるところではある。
人外として活動している以上は、人族となるべく関わりたくはないと考えて動いているプレイヤーは一定数いるので、そこから文句は上がって来るかも知れない。
そもそもネズミプレイヤーなんかに代表されるように小動物系で頑張っているプレイヤーもいて、そんな彼らに本を読めというのは少し酷な気がする。
インテリジェンスブックからの情報を整理する限りでは別に掲示板に内容を報告すること自体は禁止されていないので、そもそも情報が共有されることを前提に『設定』されているのかもしれない。
とにかくようやくプレイヤーとして『先』に進めるべく、最後の条件を満たすための行動をすることにした。
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます