(4)表情

※大変申し訳ございません。

前話と全く同じ話を載せてしまいました。

現在は正しい話になっております。(9/16 22:30~)


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 図書蔵から拠点へと帰る途中で、アイリが奥の部屋であったことを聞いてきた。

「――あれで良かったのですか?」

「あれ……って、あの本で教わった知識のことか、魔力操作のことで誤魔化したことのどっち?」

「両方ですが、敢えていえば魔力操作のことを詳しく教えてしまって良かったのかと」

「なるほど。まず知識の方は、本当に教えることができなくなっているから誤魔化す……というか話を逸らすことしかできなかったかな」

「教えられない――ということは私たちにも……?」

「だね。教えられることもあるけれど、ほとんど無理だと思ったほうがいいと思うよ。あとは魔力操作については、遅かれ早かれだから別に構わないかな」

 この世界で重要な位置にある魔力操作の技術については、いずれ大々的に広めていくつもりではあった。

 そもそもアンネリがノスフィン王国で講義をしている以上は、ヒノモトにその話が伝わって来るのも時間の問題だと考えていた。

 むしろ未だに伝わってきていないのが不思議なくらいだと考えていたので、本当に遅かれ早かれだった。

 

「ただねえ。正直、あれで司書たちが本気で取り組むかどうかは……ちょっと分からないかな」

「今までの常識が邪魔をしてますから」

「そういうこと。だから多分だけれど、アイリの出番もあると思うよ。たまには里帰りでもしてみる?」

「それはとてもいいと思いますが、今は図書蔵の方が重要ですわ。こんな機会でもないと入れませんから」

「確かにね。行きたいと思った時に言ってくれればいつでも送るから」

 

 距離の問題は合ってないようなものなので、あとはアイリが言ってくれればいつでも送ることはできる。

 ただアイリの言う通り、図書蔵に入る『次』の機会がいつになるのか分からないという問題があるので、できる限り今のうちに読める書物は目を通しておきたいという気持ちもわかる。

 あとはアイリの気持ちの問題なので、本当に好きにすればいいと考えている。

 アイリにもそのことはきちんと伝わっているはずなので、本気で図書蔵を優先したいと思っているのだろう。

 一緒にいると忘れがちになってしまうのだけれど、アイリは世界樹の巫女なのだからそちらの知識を深めたいと考えるのは当然だろう。

 そのための知識が豊富にありそうな図書蔵への立ち入りの許可を、彼女が見逃すはずがない。

 

 人の往来がある道ではこれ以上の話をすることができず、あとは適当に雑談をしながら拠点に戻った。

 拠点に戻ると簡単な依頼を済ませて既に戻っていたアンネリが、こちらを見て一瞬不思議そうに首をかしげてからすぐにこう聞いてきた。

「何か進展でもあった? 何か微妙に嬉しそうな顔をしているようだけれど」

「……うん。アンネリには隠し事は出来ないね」

「たまたまよ。それにあなただけを見て言ったんじゃなくて、アイリも一緒だったから分かったのよ」

「私もですか。参考までに私はどんな顔をしていました?」

「詳しく聞きたいけれど、聞いたら駄目なのかなって顔?」

 ズバッとそのものを言い当てられたのか、アイリはガクリと肩を落していた。

 俺も人のことは言えないので何とも言えないが、この場合はアンネリが凄すぎると考えた方がいいと思ってスパッと頭の中を切り替えた。

 

「うん。概ね当たりだけれど、言えることと言えないことがあるからね」

「そうみたいね。それじゃあ、早速言えることだけ教えて……と言いたいところだけれど、こんなところで話し込むのもなんだから場所を変えましょうか」

「確かに。とりあえず手を洗ってからリビングに行くよ」

「そうね。そっちで待っているわ」


 外から戻ったら必ず手を洗うということは、俺たちの間では完全に習慣になっている。

 最初は何故そんなことをするのかと不思議がっていたのだけれど、俺が毎回そうしているのと子供たちに教え込んだ結果が習慣化につながった。

 冒険者活動から戻った後は必ず身を清めるようにしたために、普段の手洗いの習慣も身についたのかもしれない。

 拠点では水が好きなように使えるからこと出来る習慣ではあるが、既に皆は長時間の外出から戻った時には手を洗わないと何となく落ち着かないというところまで来ているらしい。

 

 そんな余談はともかくとして、リビングに落ち着いた俺は早速話せる範囲で図書蔵であったことを話すことにした。

「――奥の部屋に入ったのは朝話した予定通りでいいとして、そこでノスフィン王国の禁書庫でもあったようにインテリジェンスブックと会ったんだよ」

「本と会うという表現が不思議だけれど、そういうものだものね。それで、それだけで終わったわけじゃないのでしょう?」

「まあ、インテリジェンスブックだしね。周りにいた司書たちとちょっとしたやり取りがあったのはいいとして、問題は本から教わった内容かな」

「司書の方も気になるけれど、とりあえずはそっちからね」

「ありがとう。ただねえ。話せることはあまり無いんだよね。一応今まで求めていた知識は知ることができたってことくらいかな。あとは今まで通り魔力操作の訓練頑張ってねとか」

「あらまあ。理由は……相手がインテリジェンスブックだけにそういうこともあるということかしら」

 さすがに一度似たようなことを経験しているお陰か、話が早かった。

 余計なことをするとろくなことにならないと言うことは、身に染みて理解しているようだった。

 

「本に書かれていたことについて言えることはあまり無いということは分かったわ。だったら何故、アイリはこんな顔をしているのかしら?」

「それは……魔力操作に関して、聞きたいことがあったからです」

「魔力操作? いまさら?」

「はい。魔力操作が魔法使いにとって重要だということは、勿論知っています。ですが、司書たちにしていた説明だとそれ以上の意味がありそうでしたので……」

「司書に説明?」


 図書蔵で司書たちとちょっとしたやり取りがあったことは省いて説明していたので、ここでアンネリが首を傾げるのは当然だ。

 そのため改めて司書たちとのやり取りを話してから、さらに魔力操作について付け加えて説明した。

 

「――そういうわけで、魔力操作の技術は別に魔法使い系だけが恩恵を受けるわけじゃないってこと」

「なるほどね。聞けば納得できる話ではあるけれど、アイリは他の聞きたいことがあるのよね?」

「……はい。あの時司書たちに説明をしているキラさんを見て思い浮かんだのですが、単に技術的な理由以外にも勧める理由がある……ように感じたのですわ。ただそれを聞いていいのか分からず悩んでいたのですが、アンネリにはしっかりと見抜かれてしまいましたね」

「あら。私は余計なことを言ってしまったかしら?」

「あ~、なるほど。巫女としての直感とか何かなのかな?」


 魔力操作を鍛えていけば地脈に『触れる』ことができることは二人に教えていても、それ以外のことはあまり詳しくは説明してない。

 出来ることなら魂が体から抜け出した状態になれば地脈の中に入ることができるということは、自力で見つけてほしいと考えている。

 地脈の中に入ることができれば、ガイアの存在を知ることになる。

 ガイアの存在については別に口止めされているわけではないけれど、いくら近しい存在だからといって軽々しく教えて良いとは思えないからこそ敢えてこれまで口にすることはしてこなかった。

 そうした諸々の理由があったからこそこれまで黙っていたのだけれど、思わぬところでアイリに見抜かれてしまったというわけだ。

 これまで考えていた思惑を忘れて素直にガイアについての話をするか、『言えない』の一言で済ませてしまうのか、どうするべきかを二人の顔を見ながら考えるのであった。



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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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