(17)講義の内容?
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< Side:キラ >
貴族のお茶会(社交)から戻ってきたアンネリから話を聞くと、何故か学園の講師を務めることになりそうだと言われた。
何故そんなことになったのか疑問だったのでより詳しく聞いてみれば、ごり押しに近い貴族夫人の提案でそうなったようだ。
それでもなお、アンネリが嫌だというのなら断ればいいと考えたのだけれど、彼女自身が構わないと考えて受けることにしたそうだ。
彼女たちが言う『学園』は貴族の子女が集められた学校になるのだけれど、長子のスペアとして育てられる者は勿論のこと、そんなスペアにさえなれない者たちも通っている。
そんな者たちは学園を卒業したあとで冒険者になるものも多く、そうした者たちをどうにかできないかと考えた結果らしい。
あとは俺が人族全体の戦闘能力を上げようとしていることも、学園の講師を引き受けることにした理由の一つになっているとか。
お茶会に出ていた女性たちの思惑がどういうものかは分からないけれど、アンネリが考えたうえで引き受けたことならこちらが何かを言うつもりはない。
どういう形式で講師となるかもまだまだ決まっているわけではないので、条件が折り合わなければ話自体が途中でつぶれることもあるとのこと。
今はまだ禁書庫で調べることがまだまだあるので王都にはいるが、いつ別の町に行くことになるかもわからない。
そのため通年での講師は不可能だと分かり切っているので、あとは学園がどこまでの話を持ってくるかによっても状況は変わるはずだ。
アンネリの学園講師については、不確定要素が多すぎでまだまだこれからの話し合いによって変わって来るのでどうなるかは未知数。
学園側が本気で臨むのであれば一度も講義をせずに王都からいなくなるのは不誠実すぎるので、何かしらの形で一度は講師として活動することになるはず。
だとすると問題はいつまで王都にいることになるのか、ということになるわけだが……。
正直にいえば、こちらもあまり進展があるとは言えない状況にある。
そもそもが『もしかしたら攻略のヒントになりそうなものがあるはず』という明確の目標が無い調査なので、かかる時間などあって無いようななものだ。
となるとどこまでを目標に据えるかによって変わって来るはずで、ここにアンネリの状況次第という条件が加わればある意味でちょうどいい目標となりうる。
幾ら禁書庫が小さめの部屋とはいえ、全ての書物を調べるとなると下手をすれば年単位でかかってもおかしくはない。
さすがにそれは時間をかけ過ぎだと思うので、アンネリの講師期間という明確な目標ができるのは有難い。
期間の目標ができるのはいいとして、肝心の禁書の調査がどうなっているかといえば、こちらはあまり進展がなかった。
いや。進展がないというよりは、本来の目的のものは見つからないというべきだろうか。
一応の担当者となっている宰相からすれば、異世界出身(?)の俺から見た視点での話は色々な意味で参考になることが多いらしく、その道の専門家らしく喜んで話を聞いてくれている。
一緒に禁書庫に通っているアイリの神話に関する話も同じようで、毎回話が終わるたびに笑顔になって分かれているのは決して気のせいではないはずだ。
禁書庫にある書物に関しては、どうみても運営が関与しているのではないかという記述があるものもちょこちょこ見つかっている。
だからといって決定的な何かが書かれているわけではないのだけれど、それが余計にまだ調べる価値があるのではないのかと思わせられるところが憎らしい。
宰相に説明するときも運営ではなく神々となどとぼかして説明する羽目になるので、いっそのこと全部ばらしてやろうかと思う時もごくまれにあったりする。
勿論、そんな説明ができるはずもなく、毎回よくわからないままに濁して説明を終えているのだけれど。
そんな宰相との会話を終えて、いつものように軽く挨拶だけして帰ろうという雰囲気になった時に、ふと思い出したような顔になってアンネリのことを聞かれた。
「そういえば、そなたのパートナーに学園での講師役の打診が行っているらしいが本当か?」
「さすがに耳が早いですね。ただし打診といっても学園側からではなく、お茶会で出た話らしいですが」
「……それは聞いていないな。いないが……止めるようなことでもないか」
「おや。止めるつもりがあったのですか?」
「そなたが嫌がっているようであればな。だが今、見た感じでは嫌がっているわけではなさそうなので、私が止めるようなことでもあるまい」
「条件等が折り合わなければ辞退することも考えるそうですが、そこまで無茶な要求はされないと考えているようですね」
「うむ。学園を卒業して国の組織以外に勤めるようになった元貴族も多いからな。そうした者たちに講義の依頼をすることもあるので、それを参考に打診するのではないか? 冒険者に依頼した例も少なからずあるはずだ」
「そうですか。それだとそこまでおかしなことにはならなさそうですね」
過去にも例があるのであれば、特に大きな問題は起きないように思える。
お茶会の様子は詳しく知らないけれど、提案してくれた人も本気で学園のためだと考えて言ったのかもしれない。
貴族のやり取りは権謀術数にまみれたものという意識があるけれど、少なくとも今回はそこまでひどいものではない……のかもしれない。
もっともそれを考えるのはアンネリで、俺自身は今のところ彼女が変な状況に巻き込まれないように見守っているだけで十分だと考えている。
「学園で冒険者として講義する分には問題は起きないでしょう。どんな内容のことを教えるのかにもよると思うが」
「それなら恐らく魔力操作になると思いますよ。私が教壇に立っても同じことをしますから」
「魔力操作……とはあの魔力操作ですかな?」
「恐らく想像通りの魔力操作ですね。魔法の基本にして最大の奥義ですよ」
「……最大の奥義、か?」
「ええ、奥義です。皆がそう疑問に思うからこそ、講義をする意味があると思いませんか?」
「ほう。それは是非とも私も聞いてみたいものだな」
「学生たちの邪魔をするような真似はしないでくださいね。まあ、本当にアンネリが魔力操作の講義にするかはその日になってみないと分からないとは思いますが」
「そうか。確かに私が行けば邪魔にしかならないだろうな。結果の報告を受けるだけで良しとするか」
良しもなにも宰相なんて立場の人間が学園なんて訪ねようものなら大騒ぎになってしまうのは想像に難くない。
少し乱暴にいえば『是非とも引っ込んでいてください』と言いたいところだけれど、当人もよくわかっているようなので敢えて口にすることはしなかった。
もっともわざと顔には出しておいたので、言葉での駆け引きが得意な宰相にはしっかりと伝わっているはずだ。
ただし宰相本人は、こちらの顔の変化に気付かないふりをしながらニコニコとしていたけれど。
宰相本人も本気で言っているわけではないと分かっていても、これまでの付き合いで興味のあるところなら突撃しそうな行動力がある人物だということも分かっている。
だからこそここで釘を刺しておかないと何をするのか分かったものではない。
そう考えたからこそ、このあとしっかりと言葉で「あなた自身が顔を見せると分かった時点でここでの調査も打ち止めにしておきますからね」と言っておいた。
ここまで言っておけば、さすがの宰相もひょっこり顔を出すなんてことはしないはずだ……と思う。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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