(14)現状の確認

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 魔導書から託された魔導紙の解読はアンネリに任せるしかないので、俺たちは今まで通りの活動を続けていた。

 ただし禁書庫に入れるのは宰相が顔を出せるときだけなので、それ以外の日は以前通りに町中にある通常の(?)図書館へ通っている。

 もっとも毎度毎度宰相が出張って来る必要もないだろうという話も出ていて、あと二、三度ほど繰り返せばあとは必要が無いだろうと言っていた。

 勿論、何かあれば報告は必要になるが、それは禁書庫を管理している司書の判断で決めることになる。

 今はゲーム的には、隠しパラメーターの信用度を上げているといった感じだろうか。

 何かの成果を上げることができればすぐに上げることも可能だろうけれど、そうそう簡単にはいかないのは仕方のないことだろう。

 禁書庫にいつも一緒に着いて来ているアイリも、神話関係でそれなりに手ごたえを感じる成果があるようでその内レポートとしてまとめると言っていた。

 宰相としてはそちらにも興味があるようで、できる限りサポートするとまで言っていた。

 

 そんな感じで禁書に関しての調査は、ゆっくりとではあるけれど順調に進んでいる。

 ノスフィン王国の王都にいることによるもう一つの懸案事項であるアンネリの社交については、既に一度ヘッダが拠点を訪ねてきてある程度の方向性は決まっていると話していた。

 アンネリを社交に招こうとしている友人は子爵家夫人になるらしいが、何度も何度もパーティを開けるほどの資産があるわけではない。

 そんなわけで久しぶりにアンネリと会うための社交としては、限られた者たちだけで開くお茶会的なものになるそうだ。

 そうなって来るとパートナーの必要性もなくなるので、宰相の都合を気にする必要が無いというメリットもあるようだ。

 もっとも子爵夫人あちら側は俺の顔を見たいようで、都合がつく限りは出て欲しいと言っていたらしい。

 娘に結婚相手を紹介される親父かと思わなくもなかったが、別にそんなことで逃げ隠れする必要もないのでどうするかはアンネリに判断を任せている。

 

 ノスフィン王国での諸々についてはまだまだ時間がかかるので良いとして、並行で進めていたユグホウラの動きについては大きな進展があった。

 ユグホウラではオセアニア辺りと南極大陸の攻略を進めていたのだけれど、そのどちらも既に領土化が完了していた。

 その過程で人族が住んでいないかの調査も行われていたのが、結局町どころか小さな集落すら見つからなかったらしい。

 南極大陸はともかく、オセアニアにさえ人がいないというのは地球の歴史を知れば違和感がある。

 ただし海にも魔物が出現する世界で、今でさえ木造の帆船ごと沈められる状況なのにさらに昔にさかのぼって海を越えることは出来なかったのだろうという予想は立てている。

 もっともそこは運営が調整して敢えて魔物だけにしたということも考えられるのだけれど。

 

 とにかくオセアニア・南極大陸の領土化は終わったのであとは王級ボスを倒すだけという状態になっている。

 それらを倒せば、恐らく完全に攻略が完了することになるはずだ。

 あとは指示を出せば喜んで討伐に向かってくれるはずだけれど、今は少しばかりの休息期間を設けている。

 眷属も魔物であるだけにそんなものは必要ないと言われているが、気分的な問題で敢えて期間を空けることにした。

 

 両地域を王領化できれば、世界樹に何かしらの変化が起こると一応予想している。

 ただし世界樹の種族は既に「世界樹(世界)」になっているので、そこが変わることはないだろう。

 変わるとすれば所持しているはずのスキルやら因子が変化すると思うが、今の身体だとそこまで確認することは出来ないので何となくで感じ取ることしかできないはずだ。

 ちなみに精霊体になっても世界樹の細かいステータスまでは見ることはできない。

 

 そしてプレイヤーとしては今一番重要ともいえる他サーバーとの掲示板のやり取りは、さらに二つの新たなサーバーから参加者が増えている。

 一つはファンタジー系でもう一つはロボット世界系で、これまた定番と言える。

 ただ前者のファンタジー系については、女性限定のサーバーらしくある意味流行の悪役令嬢ものだったり恋愛系女主人公(ハーレム)だったりするそうだ。

 それを知った時には何でそんな世界まで用意したのか運営と思わなくもなかったけれど、そもそもプレイヤーの行動を観察することが目的と公言しているだけに、そういう世界を用意していてもおかしくはないと納得した。

 

 他サーバー掲示板を見るためにはマナに触れている必要があるのだけれど、どちらの世界もそれぞれ違った呼び名だったり触れ方があるようで中々に興味深いと思える話が聞けた。

 ただしその先についてはあまりこれまでと変わらず、とくに参考になるような話が出て来ることはなかった。

 もっともそれぞれの世界で生きているプレイヤーから聞ける話は、ラノベだったりゲームのストーリーを追っているようで別の意味で楽しく掲示板を見ることができている。

 他サーバー掲示板を有効利用することに関しては、今のところ全く発見できていないので完全に雑談掲示板と化しているのだが。

 

 今のところ他サーバーの攻略状況が、こちらの世界の発展だったり攻略に影響を与えるようなことはない。

 ショップ機能なんかが用意されれば変わる可能性もあるが、それも以前から言われているように恐らく開設されても限定的になるだろう。

 例えばハウス内限定で使えるようになるとか。

 そうしないとそれぞれの世界観を大きく変えることになる可能性が高いので、仕方ないといえば仕方ない。

 

 以前掲示板の会話で閃いた書籍の調査はまだまだかかりそうなので、当分は他サーバーからヒントを得ることはないだろう。

 それがなくとも自分がいるサーバーのプレイヤーは、順調に数が増えてきているのであまり横道にそれる必要はないとも思う。

 もしかするとここで見つけた何かしらの情報が他サーバーに影響を与えるかもしれないが、それはまた別の話になる。

 それにアイのお陰でこちらの世界にある魔導書が運営によって用意されたことまで分かったので、何かしらが隠されている可能性は高いと考えている。

 

 今のところ自分が所属しているサーバーでは、あまり急いでマナに触れる必要はないんじゃないかという空気が広がっている。

 それよりは、自分がやりたいことをやってそれぞれの時間を過ごすべきだという意見が多くなっているのだ。

 マナに触れることで魔法関係が強くなるという大きすぎるメリットはあるのだけれど、プレイヤーはそこまで強くならなくとも間違いなく現時点でトップの実力を持っているといっても過言ではない。

 それくらいに人族の戦闘能力が魔物に比べて低いともいえるのだけれど。

 

 一体なんのために運営がそこまで人族の能力を低くしたのかは、今のところ分かっていない。

 単純に人族を強くし過ぎて簡単にプレイヤーが排除されては困ると判断した可能性もあるのだが、これだけ多様なサーバーがあると分かっている以上は何かしらの理由があるという意見が大勢を占めている。

 サーバーごとに特色があることは分かっているので、それぞれのサーバーを管理している運営が何かの特色を出そうとしているのではないかという考えだ。

 それが何か分かれば攻略も変わって来る可能性もあるのだけれど、残念ながら広場にいる運営などから話を聞けたという報告は今のところはない。

 

 ここで運営がその話を漏らすと上司の楽しみを壊すことになりかねないので、当然と言えば当然なのだが。

 とにかく攻略という意味で進んでいるのかいないのかよくわからない現状ではあるけれど、少なくとも上位サーバーの動向に上司が満足しているということだけは伝わっている。

 上司から見限られたサーバーがどうなっているかの話は聞いていないけれど、上司に対して変な反骨精神的なものを持っても意味がないというのは共通した意見だったりする。




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