(9)無事成功
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
ラッシュをはじめとして何人かのプレイヤーに相談した結果、いつまでもずるずると続けるのではなくある程度の期間試して駄目だったらきっぱりと諦めることにした。
そして話をしていく中で、これができなければきっぱりと諦めることができるのではないかという一つの方法を試してみることになった。
今までは魂の状態になってから周囲にあるマナを使って精霊を作っていたのだけれど、その時に使うマナを周辺からではなく人の身体を分解して使おうという方法だ。
精霊の姿から人の姿に戻る時も、それと同じ方法を使うことになる。
これなら人の身体を心配する必要が無くなるので問題は解決することになる。
人の身体をマナに分解することについては、既に精霊の身体を消すときに経験しているので問題ない……はず。
あとは一時的にでも人の身体をなくすという恐怖心のようなものさえ解決できれば、一連の流れで目的は達成されることになる。
人の身体を完全になくすことに決めたのは、護衛してもらうにしろマジックボックス的なところに収納するにしろ何かしらの形跡が残ることになることを危惧したためだ。
とにかく一度はやってみなくては始まらないということで、まずはいつものように一時的に魂を身体から外へと移した。
魂のままの状態だと非常に静寂なので魔力珠なり他の身体を作って移るところをグッとこらえて、残した身体に意識を移した。
そして精霊の身体の時にもやったように、肉体そのものをマナに変換しようとしてみた。
今回の件を試してみる前に感じていた通りなら、ここで何かしらの精神的な抵抗なりがある……と考えていたのだけれど、実際にはそんなことは一切なくあっさりとマナへと分解され始めた。
やってみたら意外とあっさりと成功したな……と思ったのもつかの間、すぐに精霊の身体を分解するときに感じなかった違和感のようなものを覚えることになった。
それを無視してそのまますべてをマナに変換することもできるとは思うのだけれど、今回はその違和感を信じることにしてマナへ変換するのはそこでやめておいた。
その違和感を信じた理由としては、残っている存在が素dに人の身体として――というよりも物理的な物として残っていなかったから。
それに加えて、その存在を残したままでも精霊の身体を作ることができると何となく理解できていたからだった。
それを残したまま精霊の身体を作ることができるならそれで良し、出来なかったらできなかったで次の機会にどうするかを考えればいい。
今は『このままで大丈夫』だという感覚を信じて、残したものを中心に据えて精霊の身体作りを始めた。
といってもこちらの作業は何度もやっていることなので、さほど戸惑うことなく作ることができた。
残した何かしらの存在も特に異物として認識されることなく、そのまま精霊の体の中に馴染んているように感じた。
できた精霊の身体に魂を移してみれば特に違和感のようなものを覚えることもなく、あっさりと移ることができた。
それから体感で一、二分ほどその状態のままでいて、次はいよいよ精霊を消して人の身体を作ることにした。
精霊の身体から魂だけ抜け出して、体を消すのは先ほど人の身体の時にやった行程の繰り返しになる。
先ほど残した存在もそのまま残ったので、今度はその存在を覆うようにして人の身体を作り始めた。
人の身体を作るのは初めてのことだったので、ことさら慎重になっていたのは当然としてできる限り記憶を詳細に思い出すようにした。
……のは良いのだけれど、初めて精霊の身体を作った時と同じように何故か大きく戸惑うことなく以外にあっさりと身体を作ることに成功した。
どちらかといえば、魂の中に残っている記憶を頼りに作ったというよりも、残しておいた存在から引き出して作ることができたというべきだろうか。
とにかく箪笥の中に入っているお気に入りの服を出して着るように、人の身体もすんなりと作ることができていた。
できた身体に魂を移すのは何度も何度もやっていることだったので、何の抵抗もなくスムーズに入ることができた。
できた身体の中に入った時も違和感のようなものは全くなく、心理的な負担のようなものも感じることはなかった。
この一連の作業をする前まであった抵抗感というか拒否感というか、とにかく『実行するのはちょっと』という感覚は何だったんだというくらいにあっさりと出来てしまって逆に戸惑いを覚えるほど。
あっさり成功してしまったというその事実に、逆に脱力をしてしまったくらいだ。
魂を体に戻したあとは、一応どこかに不具合が無いかを念入りに確認。
最初はゆっくりと動いたりしてから徐々に辺りを走り回ったりしてみたけれど、どこにもおかしなところは見つからなかった。
一度分解されて再構成されているはずの身体だけれど、前のものと違っている点も見つけることはなく。
色々と動き回って確認しながら五分ほどが過ぎたころになって、ようやく成功したんだと実感することができた。
今回は色々と初めてやることが多いので、ホームの近くにある屋敷の中で実験を行っていた。
当然のように眷属も側にいたがったのだけれど、何があるのか分からないからということで少し離れた場所で待機(護衛)してもらっていた。
その護衛役に当たっていたルフに近寄ってから首筋を撫でつつ、さらに歩いているとアイと出会った。
「――どうでした?」
「うん。意外とあっさりと成功したよ。今後は切り替えのタイミングをスムーズにしていくことかな。今のままだったら弱点どころじゃないから」
「そう。それはよかった。別の身体に乗り換えることに意味があるのかは別にして」
「アハハ。確かにね。初めはただの思い付きでやってみただけだからなあ。あとは勢いで」
「相変わらず突拍子もないことを勢いだけで成功させる」
そう言ってきたアイの視線からは、どことなく呆れのようなものを感じた。
それを綺麗に無視してリビングで数十分の休憩をとってから、今度は切り替えの精度を上げるための訓練を始めた。
初めのうちは間違いがないようにそれぞれの身体の分解と再構成をゆっくりとやっていたのだけれど、数をこなすうちにかなりスムーズに切り替えることができるようになっていた。
このままならいずれほとんどタイムラグなしに、身体の切り替えができるようになるはずだ。
目標としては戦闘中であっても好きなタイミングで切り替えができるようになることだが、正直に言えばそこまで切迫した事態で身体を入れ替える意味があるのかどうかは疑問だったりする。
そんな使い方をするかどうかはわからないが、とにかく素早く変化できるようになることには意味がある……と思いつつ訓練に励んだ。
その結果元の身体からの魂の抜け出しと新しい体への入り込みの時間は大分省略することができて来た。
時間にすれば五秒くらいで別の身体への移動ができるようになったので及第点だと思えるところまで改善することができた。
さすがにこのままだと戦闘中で使うことは出来ないが、そこはまだまだ要改善といったところだろう。
ちなみにある程度満足できる結果になったので、ヘディンの拠点でアンネリやアイリに披露したところ「ますます人間離れしてきた」と少し引かれてしまった。
これに関しては確かにその通りであるので、反論することはしなかった。
アンネリにしてもアイリにしても引いていたのは一瞬のことだったので、その後は今までと変わらずに接してくれたことも大きい。
最近は魔法関係はこれに限らず何をやっても引き気味になることが多いので、慣れてしまっているともいえなくもないが。
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます