(5)サポーターの貸し出し

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 魔道具開発などを含めた人族全体の能力強化は地脈中央の壁を突破する前から行っていたことだけれど、マナに触れることができてからは実行する意義が増えていた。

 そもそも惑星に生きている者たちの能力向上レベルアップは、何となく必要があるのではないかという推測がプレイヤー間で成されていた。

 それが生体のレベルアップが行われることにより個々のマナ総量が増えて、結果的に星全体のマナの量が増えるということがわかった。

 星全体のマナの量を増やして何ができるようになるかは分からないが、増やせるものは増やしておいた方がいいだろう……と勝手に考えている。

 今のところ運営(特にアルさん)からは特に何かを言われているわけではないので、マナ総量を増やす意味があるのかは分からない。

 とはいえマナの量が増える=魔力の量が増えるということにも繋がるので、決して無駄なことではないはず。

 魔力の量が増やせれば、普通の魔法は勿論のこと魔力を使って動作する魔道具なんかも潤沢に使えるようになる。

 もっとも今のところ魔道具によって星全体の魔力が枯渇するなんてことは起こることはないと予想しているのだけれど、今から対策をしておくのは悪いことではないだろう。

 

 マナを除けば、この世界も限りある資源というものに縛られていることは変わらない。

 そう考えると何もないところから増やせる可能性のあるマナは、まさしく夢の資源といっても過言ではないのかもしれない。

 ただし完全に無から有を生み出すわけではなく、無機有機限らずにそれぞれで格を上げていく必要がある。

 格を上げるという表現が分かりずらければ、レベルアップと言い換えてもいいだろう。

 

 とにかく世界にあるマナを増やしていくためにも、これからも何かしらの手を打っていく必要がある。

 種の一つとしてまいた拡張袋は上手く行きそうなので、次は何に手を入れるか悩むところだ。

 ユグホウラを使って何かしらの指示を出しても反発されることは目に見えているので、今はクランを使ってどうにかできないかを模索中だ。

 孤児たちを使ってのサポーター導入は上手く行っていて、『大樹への集い』以外でも積極的に使われるようになっている。

 

 問題なのは使い捨てにされるサポーターが出ないようにすることだけれど、全てに手を広げるわけにはいかないので出来ることからやっていくしかない。

「――それは分かるが、具体的にどうするんだ?」

 久しぶりに長々と説明してしまったが、カールは嫌な顔一つせずここまで話を聞いてくれた。

 ちなみにカールにはマナ関係の話はせずに、単にクラン全体のレベルアップをしたいと話をしている。

 

「いやー。結局のところ今まで以上のことは中々出来ないんだよね。無理やりに格上相手を討伐しに行っても意味がないし」

「そうだろうな。結局のところ経験に勝るものはないからな。一部の天才は除いて、だが」

「なぜそこで俺を見るかな。少なくとも自分が天才だなんて思ったことはないんだけれど?」

「ハイハイ、分かったよ。それで転移装置を使っての別ダンジョン攻略以外にも何かするつもりなのか?」

「それが中々ねえ……。合同探索の機会を増やしてもあまり意味がないし、サポーター枠を増やすのにも限界があるからねえ」

「……ああ、そういえば。うちのサポーターを借りたいという話が一部から出ていたな」

「あれ? それって既に許可しなかったっけ?」

「前のは冒険者パーティとかクランに対してのものだな。今回は国……というか子爵様からの依頼だ」

「おおっと。それはまた」


 予想外のところからの依頼に、思わず驚いてしまった。

 子爵にしても国にしても、戦闘を行うのは騎士たちということになる。

 その騎士たちがダンジョンを潜ること自体は珍しいことではないのだけれど、その場にサポーターを貸してほしいというのは中々に珍しい事態だといえる。

 勿論、その中にある意図にもしっかりと気付いているのだけれど。

 

「うちのサポーターを借りたうえで動きなりを勉強して、自分たちでも育てようってことかな?」

「騎士がか? やつらは基本的に『討伐』が仕事で『採取』はおまけみたいなものだぞ。……いや。それこそ拡張袋が出回ってきて事情が変わってきたのか」

「そうだろうね。騎士団でダンジョン内なりフィールド上なりの魔物を倒したうえで、その素材を使って運営資金に回すなんてことは普段からやっているだろうしね」

「確かに複数パーティで組んで潜っているところを見たことがあったな。そこまで積極的にはやっていないようだったが……」

「騎士団のメインのお仕事は国の安定だからねえ。そういう意味では街道なんか出て来る魔物討伐のほうが優先順位は高いだろうからね」

「それもそうだな。だがうちの子爵に限ってはその限りではない、か」

「なんせダンジョン爵とも言われてるくらいだからねえ。治安維持に使っている騎士をダンジョンに潜らせてもどこからも文句は来ないだろうねえ」

「ああ。というか、子爵様の騎士に限っては、よく入っているのを見るな。奴らは騎士というよりも冒険者よりだが」

「――だったら、なおさらサポーターを求めてもおかしくはないねえ」


 カールから詳しい話を聞けば、ヘディンを治めているダンジョン爵こと子爵は当然のように騎士たちを持っているが、その騎士たちの一部は冒険者と変わらない格好をしてダンジョンに挑んでいるらしい。

 冒険者らしい格好といっても千差万別ではあるのだけれど、騎士らしい重装備ではないという意味だ。

 もっとも騎士の姿は国によっても変わってくるので、全ての国が全身鎧を付けているというわけではないのだが。

 とにかく普段はダンジョンで活動しつつ、いざという時には騎士としての業務につくという兼業騎士のようなものが子爵の配下にはいるそうだ。

 

「兼業騎士な。なかなかうまいことを言うじゃないか」

「ただの思い付きだけれどね。とにかくその騎士たちの仕事は、魔物の間引きが主になっていたりするのかな?」

「なんだ。ちゃんと知っているんじゃないか。奴らは俺たちみたいな冒険者が旨みが少ないからって敬遠しているような場所に行って討伐をしているな」

「ダンジョンが暴発しないように管理する目的としては、凄く真っ当な手段だからね。とにかく旨みが少ないから採取よりも討伐に力を置いていたけれど、魔法袋の存在で数を集められるようになったと」

「――そういうことか。確かに一つ一つは単価が安くても、数が集まればそれなりになるからな。そこにサポーターという存在が目についたというわけか」

「推論に推論を重ねただけだけれど、恐らく間違っていなんじゃないかな。それにしてもさすがダンジョン爵なんて呼ばれているだけのことはある……いや。こんな言い方をすると嫌味にしかならないか。聞かなかったことにしておいて」

「言えるかよ、そんなこと。それで、どうするんだ?」

「はてさて、どうしようかなあ。うちにもメリットが多そうだから貸すこと自体は構わないんだけれどね。ちょっとばかり特別な条件を付けないといけないかな」

「なんだ。面倒なことなのか?」


 俺の顔を見て何かを悟ったのか、今まで以上に真面目な顔になってこちらを見て来た。

 正式な国の騎士がほとんど孤児で構成されているサポーターを見てどう考えるのか、カールはそれを身をもって知っているはずなのにすぐには思いつかなかったらしい。

 そのことを指摘するとカールは一瞬顔をしかめてから「俺も少し焼きが回ったか」と反省する様子を見せていた。

 とにかくその辺りのことをしっかりと考えられるようなパーティなりメンバーでないと、サポーターとしてきちんとした働きができなく可能性の方が高くなるだろう。

 そうならないように、きちんとした条件を前もって整えておく必要があるのは言うまでもない。

 問題はその交渉を誰にやってもらうか、ということになるわけで……そこまで考えてすぐにアンネリの顔が思い浮かんできたのは当然のことだったのかもしれない。




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m(__)m

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