(4)魔道具開発

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 宇宙開拓者さんとの掲示板でのやり取りは、予想通りにそれぞれのサーバーの内容報告的な感じになっている。

 そもそも科学技術が発展している世界と魔法技術が発展している世界の両極端なので、参考に出来ることが少ないということが大きく影響している。

 それでも数日のうちは御宅紹介的な内容で盛り上がっていたのだけれど、それも終わると雑談的にそれぞれの世界の問題点などを話すようになっていった。

 もっとも問題点を上げられても解決する手段を提供できないので、本当に話をするだけで終わっているのだけれど。

 それはこちら側も同じで、どちらかといえば愚痴を上げるための場所になりかかっていた。

 流石にそれはまずいということでストップがかかることになったのだけれど、そうなって来ると話す内容がほとんど無くなってしまい一週間も経たずに集中しての書き込みは無くなっていた。

 それぞれがマナに触れたばかりということで、運営からマナについての技術を学んだりする時間が必要ということも大きかった。

 というわけで他サーバー掲示板に関しては、十日も経たずに他のプレイヤーが増えてくるまでは雑談掲示板になっている。

 

 宇宙開拓者さんとのやり取りが続いている間も日常は過ぎていき、以前まいた種がようやく芽吹きそうなことが二つほどあった。

 一つはダンジョンを使ってばらまいている拡張袋が、ある程度行き渡ってきたことだ。

 これは眷属たちがダンジョンにばらまいた分だけではなく、ヒノモトの津軽家で作っている分が出回り始めたことによる。

 津軽家で生産している拡張袋は今現在のこの世界で作ることができる技術でできているので、各国でそれを応用した品が出回り始めてきたということもある。

 

 とはいえ今市場に出回っている拡張袋は大きくても箪笥一つ分くらいの大きさのもので、そこまで極端に大きいというわけではない。

 それでもこれまで厳選して討伐品を持ち帰ってきていた冒険者たちにとっては垂涎の品で、拡張袋を持つことができれば一流の仲間入りというところまでは広まっている。

 津軽家が出した拡張袋をまねて各国が作り始めたことについては、特に問題視されていない。

 契約の際にそういう話を付けていたということもあるけれど、先を見据えていた津軽家はコピーされないもう一段階上の拡張袋を作り始めているから。

 

 とにかく拡張袋がようやく一般的にといわれるほどに出回り始めたことで、冒険者の活動が活発になり多くのダンジョン産の物品が流通に流れるようになっている。

「――そういうわけだから、カールとラウにはこれを渡しておくね」

「いや。どういうわけか分からないんだが。――これは拡張袋か?」

 ヘディンの拠点で召び出したカールとラウに、それぞれ一つずつ大人の男性の手のひら大ほどの巾着袋を差し出した。

「そう。ただし機能的には今出回っているものよりも一段階位上のものになるかな。具体的には小さめの部屋くらいの大きさだね」

「もう驚かなくなっている俺自身に驚いているが……なんでまた突然。これよりも小さなものは既に前に貰っているだろう?」

「うん、だからね。前に渡したものは、パーティメンバーなりクランの他の誰かなりに譲ったらいいんじゃないかな」

「なるほど。確かにそれならクランのためにもなるからいいか」

 こちらの目的を察したのか、話をしていたカールが納得した様子で頷いていた。

 

 このタイミングで二人に拡張袋を渡したのは、さらに別の目的がある。

「一応タダで渡すのは今回が最後になる……かな? それよりも、クラン内で拡張袋が欲しい人には格安で売ることにするよ」

「おい、それは……いいのか? 絶対転売する奴が出て来るんじゃないか?」

「所有者登録するから大丈夫だよ。あと目こぼししてもらうお礼に、子爵を通して国にも幾つか譲るつもりだから何とかなると思うよ」

「それだったらいいが、もしかすると個人個人で持つようにしてもいいのか?」

「別に個数制限は設けないから、きちんと料金さえ払ってもらえれば構わないよ」

「それはまた、ダンジョン探索がはかどるな」

「だよね。頑張って稼いでね」

 笑いながらそう答えてみたが、何故かカールとラウは顔を見合わせてから苦笑をしていた。

 

「これはあくまでも予想だけれど、拡張袋が増えて素材が多く出回るようになるから魔道具の研究も進むと思うんだよね」

「それはそうだろうが、何が言いたい?」

「多分だけれど、今渡した程度の拡張袋は数年後には一般に出回るようになっていると思うよ。道具の開発が進めば、これまで行けなかった場所も行けるようになる」

「……なるほど。冒険者俺たちの出番がより多くなるってことだな」

「それから未開発地とされている場所の開発なんかも進むかもね」

「それは……お前さん方にとってはいいことなのか?」

「どうだろうね。ただ少なくともユグホウラの領域内に入ってこない限りはどうこうするつもりはないよ。それに来たら来たで蹴散らすことは出来るだろうし」

「それは怖いな。まあ実際にできるんだろうな。あんなおっかない眷属を、事務員として送って来るくらいだ。俺なら敵に回したくはないな」

「出来ればどの国もそう考えてくれるとありがたいんだけれどね」


 カールとラウのパーティメンバーは、以前の騒動のこともあってクランで働いている事務方の皆さんがユグホウラの眷属だということは知っている。

 彼ら彼女らが本気になれば、パーティで挑んでも勝つことは出来ないだろうということもだ。

 以前冗談でどこのダンジョンボスを引き抜いたんだと言っていたが、それくらいの実力は間違いなく持っている。

 それほどの実力を持つ眷属を事務員として送り込めるくらいに、ユグホウラの眷属は実力者が揃っている。

 

「――話を戻すけれど、出来ればクランのメンバーには道具に頼り切った戦い方はしてほしくはないかな。道具で全体の実力を上げようとしている俺が言うことじゃないと思うけれど」

「その言い分は納得できるが、中々難しくないか?」

「そんなことないよ。机にかじりついているだけの研究者ならともかく、魔物と実際に相対して戦う冒険者ならね。ただ一定数勘違いする冒険者も出て来るだろうからね」

「……なるほど。伝説級とまではいかなくとも、それなりに仕える道具が出てくれば、それが自分の実力だと言い張る馬鹿も出るか」

「道具が壊れようが何しようが、それを用意できるだけの財力があるならともかくね。例えば格安の道具でドラゴンを倒せるようになるなんてことにはならないと思うよ」

「それはそうだろうが……いや。素材が出回ればそれもできるようになるんじゃないのか?」

「ドラゴンを倒すための道具を作るための素材は、基本的にドラゴンと同等かそれ以上の相手を倒さなくちゃならないのに?」

「……そうなのか?」

「残念ながらね。極端な話、いくらスライムを倒して大量の材料を仕入れてもドラゴン討伐するための道具は作れないってこと」


 結局のところ突き詰めると需要と供給のバランスの話になってしまうのだけれど、それとは別に実力はそこそこしかないのに道具でガチガチに固めてもドラゴンスレイヤーにはなることは出来ないと思う。

 魔道具を扱うにしても結局のところそれを扱うだけの『実力』が必要になるので、人材の育成は不可欠になるはずだ。

 あとはどうそれらの人材を育成していくのかという問題が出て来るわけで、それは今の冒険者たちがやっていることとなんら変わらない。

 敢えて言うとすれば、道具を使って魔物を倒す新たな職業が出て来るのではないかというくらいだろう。

 

 どちらにしてもそこまで到達するのには、まだまだ世界全体の魔道具作成のレベルが低すぎる。

 人族が対魔物で有用な道具を開発していく間に、眷属たちもまた実力を上げていくことになるのであまり状況は変わらないのではないかと今のところは楽観視している。




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m(__)m

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