(3)掲示板やり取り後の会話

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 宇宙開拓者さんとの掲示板での会話は尽きなかったが、これからいつでも会話ができるのだからダラダラ話していても仕方ないと一時間程度で終えた。

 お互いに疑問は尽きないので終わるのには何時間もかかるだろうということと、これから先いくらでも時間があるのだから焦って話を聞く必要はないだろうということになっていた。

 そもそも今この掲示板が使えているのは三人しかいないので、詳細を聞きすぎても人数が集まった時点で繰り返しになりかねないという懸念もある。

 勿論、お互いに情報を共有することによって、今後来たプレイヤーのためにいつでも回答できるようにするという意味はあるのだけれど。

 どちらにしても実生活に影響があるのは駄目だろうということになり、結果として人数が増えるまでは一日一時間程度でのやり取りにしようという結論になった。

 俺やラッシュにしてもそうだが、宇宙開拓者さんもそれぞれのサーバーにいる他のプレイヤーが情報を心待ちにしているということもある。

 掲示板自体は並行して書き込めるのであまり不都合はないともいえるのだけれど、あちらはほぼ一対一で会話をしているようなものなので書き込みに忙しいということもある。

 二つの掲示板を同時並行で書き込むなんて大したことはないという猛者もいるだろうが、残念ながら今回集まった三人はそこまでのスキルは持っていなかったのでどうしても会話が中断してしまうことが多々あった。

 

 宇宙開拓者さんは一人での書き込みだったので忙しそうにしていたが、こちらは共同作業ができていたのでサーバー掲示板へのある程度の周知はラッシュさんがメインに行っていた。

 それにより、サーバー掲示板の書き込みが祭りに近い状態になっていた。

 久しぶりの新情報が満載という状態だったので仕方ないのかもしれないが、さすがに流れが速すぎて追い付けないので書き込みを制限してもらったりしていた。

 それでようやく流れが追い付いたところで掲示板への書き込みを終えて、風呂に入ってゆっくりすることにした。

 

 のんびり入った風呂から上がって休憩処に向かうと、そこでは待っていたかのようにラッシュが良い感じに出来上がった状態で手を振ってきた。

「――ようやく落ち着いて話せるな」

「キラは長風呂だからなあ」

 たまたまタイミングが合ったのか、同席していた他のプレイヤーのチャチャに笑いつつ勧められるままに席に座った。

 

「んで、どうよ?」

「どうって言われてもなあ。予想通りといえば予想通りだし、特に期待できそうな情報はなさそうだった……かな?」

「だよな。俺もそう思う。それに、向こうもそんな感じだったか」

「そもそも世界観が全く違うからねえ。参考にするということも難しい……とは思うけれど、もしかしたらなにか見逃していることがあるかも知れないとも考えているよ。ちょっとは」

「あの運営のことだから何かしらの仕込みはしているってことか」

「それが何か分かればいいのだけれど、当面は手探り状態どころか雑談をしている中で何かのきっかけがあれば良いかな、くらいじゃない?」

「確かになあ。来たのがSF系と離れ過ぎているのが一番の問題ともいえるが……まさか狙ってとかはないよな?」

「それはないと思うよ、たぶん。理由は単純に運営のそんな介入をあの上司が許すとは思えないから」

「おおう。何という説得力。だが俺も言いながらそう思ったから、ほぼ間違いないと考えていいんだろうな」


 妙なところで信頼感がある上司だけれど、重火器への制限などを考えても世界観を守るということにおいてはかなり重点を置いているように見える。

 これは俺やラッシュだけではなく、他のプレイヤーも同じようなことを掲示板でも話している。

 その証拠にたまたま同席している数人のプレイヤーが、何度もウンウンと頷いていた。

 今のところ他サーバーとの交流を掲示板だけに絞っているのも、その辺りのところに理由があるのかもしれない。

 

 そんなことを考えながらおつまみ程度に頼んだ枝豆を口にしていると、他のプレイヤーが疑問を口にした。

「こっちが科学技術を参考に出来ることが少ないのはいいとして、逆はどんな感じだった? 例えば魔力の扱いとか」

「さっきも言ったが、あまりいい感触はなかったな。話に聞く限り魂の存在すら疑問形の世界観らしいから、魔力なんてさらに白い目で見られたりしそうだったぞ」

「なるほどなあ。マナがあるんだから魔力への変換もできると思っていたんだが」

「それも一応言っておいたな。ただそもそも魔力の存在がどんなものかも分からないから、あるかどうかも証明できないそうだ」

「自分たちが元いた世界でもそうだったけれど、『これが魔力だ!』と証明する手段がないからね。それ以前に探すことすら難しいんだろうね」

「そうか。こっちの世界だと当たり前に教え込まれたが、SF世界だとそれもないのか」

「そういうこった。何しろチュートリアルで教え込まれたのは、操船の技術と知識だったらしいからな。最初に選んだ職業なんかも関係しているらしいが、他も似たり寄ったりだったらしい」

「それはまた。……いや、驚くことじゃないのか。こっちだと最初の頃は特に魔法使いに似たような嘆きがあったな」


 そのセリフで過去のことを思い出したのか、他の面々が少し笑いながら確かにと頷いていた。

 魔法使いに限らずどのプレイヤーも、最初は魔力の扱いに苦労していた。

 特に魔法という現象を起こす魔法使い系のプレイヤーは、ちゃんと理論を知らないと駄目だと座学でも苦労していた。

 今となっては苦労というよりもそれが楽しかったというプレイヤーも多いだろうが、当時は色々と苦労をしながら魔法の習得に勤めていたはずだ。

 

「もしかしたらマナの扱いについては共通点なんかも見出せるかも……なんて考えているけれど、実際はどうなるか怪しいね」

「……ふむ。マナの扱いに関しては先行しているキラがそう思うか。理由は……ここでは話せないか?」

「多分、大丈夫じゃないかな? ――要はマナをどう取り出して使うかというところに関係するから、それを機械的にするか精神的にするかの違いだけじゃないかなってね」

「なるほど。精神的な方法はともかくとして、もしかすると機械的な方法は錬金系か魔道具系に応用できる可能性があると」


 宇宙開拓者さんの場合は、マナを検知してからそこに向かって宇宙船で探索をすることでたどり着いたそうだ。

 これからどうなるかは分からないが、恐らくマナ改めエネルギーを何らかの方法で取り出して利用するという方向に進むと勝手に考えている。

 こちらの世界では精密機器を作り出すことはできないかもしれないが、それを魔道具なりに応用して作ることは出来る……はず。

 そう考えるとかけ離れた世界観にいる宇宙開拓者さんとの会話も、全くの無駄だとは思えない。

 

 一つ問題があるとすれば、ラッシュにしても宇宙開拓者さんにしてもまだまだマナに触れたばかりでどこまでの応用が効くのかが全く見えていないということだろうか。

 俺がアルさんから色々と教わったようにこれから先マナに関する知識が増えていけば、もしかすると全く役に立たないということが分かるかも知れない。

 もっともそれが分かったからといって、一々落ち込む必要もないと思う。

 それこそ世界が違えば、一口にマナといっても扱いが全く違っていてもおかしくはないのだから。

 

 いずれにしても全く別の世界観でプレイヤーとして生きている宇宙開拓者さんとのやりとりは、少なからず何かしらの影響があると考えている。

 それが良い方向に転ぶか、もしくは悪い方向に行くのかは、それこそ時間が経ってみないと分からないだろう。




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m(__)m

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