(2)他サーバー

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 一応精霊の姿になることには成功したものの、あくまでも次のための準備段階であってここから先が本題になる。

 今は世界樹の中から精霊になっているけれど、それを普通の人族の姿から成れるようにすることが本題になる。

 とはいえ人から精霊の姿になるのには、いくつかの問題が思いつく。

 その中でも一番大きな問題は、精霊の姿になった時に残されている人の身体をどうするのかということだ。

 折角精霊の姿になることができても、人に戻ることができなくなってしまっては意味がない。

 いや。意味がないというよりは、人族ヒューマンとして生まれてきた意味を果たせなくなるというべきだろうか。

 とにかく今の段階では人族であるからこそできることを模索している最中なので、それを放り出すつもりはない。

 そのことを考えると、やはり人としての身体を放置しっぱなしにするのはないだろうという結論になる。

 

 そもそもとして精霊の姿になることに意味があるのかという問題はあったが、これは実際になってみた時に解決している。

 当初の始まりとしては、興味本位で始めたのでどんな結果になっても良かった。

 ただ実際に精霊の姿になって何ができるのかを試してみたところ、ゲーム系に出てくる精霊のイメージ通りに魔法の威力が人族のものよりも格段に上だった。

 一周目の精霊のまま世界樹がここまで成長することができていれば、これくらいの威力の魔法を使えるようになっていたのだろうと想像できるくらいに。

 

 というわけで今となっては精霊の姿でいることもメリットがあるので、実験の成果として放置しておくつもりはない。

 となるとやはり人の身体をどうするのかという問題が残るわけで、こうして頭を悩ませているというわけだ。

 ちなみに最終手段としては、眷属の誰かに守ってもらい続けるという手はある。

 ただしそれだと人の姿に戻るためには必ずその場所に戻らなくてはならないし、栄養的な意味で放置されている体に影響が出ることもあるはずだ。

 

 それらの問題から世界樹の進化の時のように眷属に守ってもらうという方法は、最終手段としておく。

 となると残される体をどうするのかという問題のために、頭を悩ませ続けることになってしまった。

 一番わかりやすいのは拡張袋のようなマジックアイテムの中に入れてしまうという方法だが、何となく自分の身体を何かに入れて保存しておくということに抵抗がある。

 イメージの問題だけれど、どうにも御棺のようなものをイメージしてしまうから。

 

 あくまでも自分の中での変なこだわりだと分かっていても、生理的に受け付けられないのではどうすることもできない。

 それに人の身体をマジックボックス的な何かに入れておいたとして、身体的に何も影響が無いとは限らない。

 そもそも拡張袋にしろマジックボックスにしろ、基本的に『生きている物』は入れることができないので、もしその方法を取るにしても魔法自体に何かしらの工夫は必要になる。

 そのことに労力を割くくらいなら、別の何かの方法を考えておきたいくらいだ。

 

 ――そんなことを考えながら数日を悶々と過ごしていたら、ついに以前から待っていた報告が入ってきた。

 その報告が何かといえば、別サーバーのプレイヤーがマナへの壁を越えることができたというものだった。

 それはシステム的なメッセージではなく、今では数日おきに練習の様子を見てもらっているアルさんから教えてもらうことができた。

 話を聞いた時には何故全体メッセージにしなかったんだろうと首を傾げたが、あくまでも別サーバーのことなのでとアルさんから言われて納得することにした。

 

 運営側の都合はともかくとして、別サーバーのプレイヤーと話ができる機会を逃すわけにはいかない。

 そう考えてすぐにハウスに移動してからPCもどきを起動してから掲示板で書き込みを始めた。

 ラッシュが壁をクリアした時には広場で会えることもあって書き込みをしていなかったのだけれど、これでようやく掲示板に書き込む意味が出て来る。

 そう考えて掲示板を開いてみれば、早速とばかりに別サーバーのプレイヤーからの書き込みがあった。

 

 書き込みの内容としては、三番目のクリア者なのにと不思議がる内容とできれば話がしたいので書き込んで欲しいというものだった。

 こちらの掲示板には時間の表示がされていないので、どれくらい前に書かれたものなのかは分からない。

 とはいえアルさんから聞いた話を考えれば何時間も経っているということはなさそうだったので、その問いに答えるべく挨拶を書き込むことにした。

 するとずっとハウスで待機していたのかわからないが、相手側からの返答もすぐにあった。

 

 そうこうしているうちに、ラッシュも加わって三人での会話が続く。

 相手側は俺とラッシュが同じサーバーのプレイヤーだということに驚いていたけれど、こちらのサーバーの状況を聞いて納得もしていた。

 どうやらその相手――宇宙開拓者さんはSF系のサーバにいるようで、未知のエネルギーとされているマナのある場所に宇宙船(探索船)で到達したことによって条件をクリアしたようだった。

 ちなみに宇宙開拓者さんが乗っている宇宙船は同じサーバーにいるプレイヤーの協力の元作られた特注船で、その船を使ってどうにかクリアできたようだ。

 

 宇宙開拓者さんのいるサーバーでは他のプレイヤーが到達する様子はなく、逆にそうした船の開発者たちがどうやったらマナのある場所にまで到達するかが問題になっているらしい。

 宇宙の中にあるマナの場所を探すというのは、船の操作もかなりの腕が必要らしく開発に関わっているプレイヤーは中々そこまでの技術を磨くのが難しいとか。

 魔力を鍛えれば誰でも到達できる俺たちのサーバーとの違いに、なるほどと納得して話を聞いていた。

 もっとも自分たちがいるサーバーも、各プレイヤーの訓練は必要になるので変わらないといえば変わらないのかもしれない。

 

 とはいえ魔力操作の訓練と宇宙船の操船では根本で大きく違っているので、何か別のルートがあるのではないかとも思う。

 それを伝えると、宇宙開拓者さんはサーバーの掲示板で伝えておくと言っていた。

 これが助言になるかどうかは分からないけれど、何かのきっかけになってくれればそれでいい。

 そう掲示板に書き込むとラッシュが「さすが」と書き込んでいたけれど、この程度のことであれば俺以外の誰かが言っていただろうと思う。

 

 ちなみに宇宙系サーバー全てに当てはまるかは分からないけれど、どうやってマナにまで到達するかは運営さんからは教えられていないらしい。

 マナに触れることはどのサーバーでも最重要事項として挙げられているらしいので、当たり前といえば当たり前なのだけれど。

 できることなら別ルートがあるのかくらいは教えて欲しい気もするが、そこを伝えてしまうと醍醐味が無くなってしまうという考えも分かる。

 とにかくサーバー間それそれで悩みがあるということは分かっていたけれど、それを初めて実感することができた。

 

 この先、他サーバーのプレイヤーとの交流が今後にどう影響してくるかは分からないが、お互いに良い影響があればとも思う。

 だからといって全てのプレイヤーがマナに触れる必要があるとは思わないけれど、それによって得られる何かがあれば目指すプレイヤーも増えるはずだ。

 そのためにもまずは先行者として何ができるのかを見つけていかなければならないと改めて考え直すきっかけになった。




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m(__)m

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