閑話16 井戸端会議?

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 < Side:アンネリ >

 

 何かの訓練やユグホウラ関連の仕事という重要な仕事(?)で拠点を空けることが多かったキラだったけれど、ここ最近は日中を除けばしっかりと拠点にいることが多くなっている。

 そのこと自体はとても嬉しいのだけれど、無理をしていないのかと少し心配になってしまうわね。

 見た感じは変に無理をしているという様子もないので安心しているけれど、少し目を離すと予想外のところで無茶をしそうなので、小さな変化を見逃さないようにしている。

 いい意味でも悪い意味でも、色恋沙汰方面での心配はしなくてもいいというのは少し贅沢な悩みともいえるのでしょうね。

 当人にそちら方面の意識が低いということもあるのだけれど、常に眷属の皆さんの監視があるのでそういった情報は常に入って来るので。

 問題なのは私自身も、あまりそちら方面でいい思いが出来ていないということだろうか。

 

 キラの恋愛偏差値が低いのは、恐らく前世が世界樹だったという意識を強く持っているからでしょう。

 聞いた話では世界樹の妖精だった時には肉体の有り様が人族とは全く違っていて、いわゆる性欲と呼べるようなものは全くなかったそうだから。

 人族に生まれ変わった今ではきちんとそちらの欲も出ているようだけれど、どういうわけか強く求めて来るようなことはない。

としてはいつでもいいのにと待っている状態なのだけれど、当人が動かない以上、余りはしたない真似は出来ないともアイリと話しているけれどね。


 ただし私自身でも『当分今のままで構わない』と考えてしまっているので、キラのことをどうこう言える立場にはいないとも思う。

 あの一件があってからは家族との距離も微妙なものになり、貴族の一員としての義務の一つともいえる婚姻に関してどうこう言われることが無くなった。

 もっとも父は……というよりヘディン家としては、このままキラと一緒になって子供でも産んでくれれば万々歳という思惑も当然のようにあると思うわ。

 そこまで行かなくても、キラと近しいところに私がいるという状況が利になると考えているのは間違いない。

 

 そうした実家の思惑があることは分かった上で、キラは今のままでいいと言ってくれている。

 その言葉に甘えているのも事実なので、もっと積極的になってほしいとこちらから言えないということもあるにはある。

 それに、そんなことを言われたキラがどう態度が変化するのか怖くて言えないと、妙なところで乙女心(?)が出て来ているということもあるわ。

 結果、今のままで構わないという状態がズルズルと続いているわけ。

 

 さらに付け加えると、キラが忙しそうに動き回っているということと合わせて、私自身がそこそこ忙しく動いているということもある。

 最近ではキラから教えてもらった地脈の魔力に触れるということを目標にして、暇を見つけては訓練を行っている。

 これがまたやりがいのある内容で、訓練しているだけで楽しいと思える時間を過ごせている。

 キラに言わせれば、『これが沼にはまるということだね』ということらしいわね。

 

 それらのことはいいとして、キラがいないタイミングを見計らって少し気になったことを護衛としてついてくれている眷属のシルクに聞いてみることにした。

「――少しいいかしら?」

「あら。何かありましたか?」

「こんなことを聞いてもいいのか分からないのだけれど、この機会を逃すと聞けないと思うから……答えたくなければ、そう言ってもらって構わないわ」

「貴方がそういうということは、随分と聞きにくいことなのでしょうね」

「実はそれもよくわからないのよね。――あなたたちはキラと子を成したいとは考えないのかしら?」

「ああ、そのこと。別に隠しているわけではないから構わないですわ。むしろクイン辺りから話をしていたのかと思っていたのですが、されていなかったのですね」

 私としてはキラのことを大事にされているように見える眷属の女性たちが、何故か子供のことには全く言及していないことの方が不思議に思っていたの。

 ですが、今の言葉を聞いて彼女たちにとっては当たり前で隠すほどのことでもない明確な理由があることが判明したわね。

 

「わたくしたちのような存在は、魔力という点において主様と既に交わっているのですわ。ですので……少し生々しい話をしますと、あまり肉体的な繋がりは求めることがありませんの。勿論、求めてきた場合には答えるでしょうが」

「それは……そうなのですか?」

「ええ。そういう意味では、子眷属を生み出しているわたくしのような眷属は、すでに皆主様との子を成しているともいえますわね。主様にそのような感覚はないでしょうが」

 そう言いながらクスリと笑ったシルクを見て、思わず同じように笑ってしまったわ。確かにあのキラであれば、気付いてはいないのだろうと思ってしまったから。

 

 それにしても眷属の皆さまが肉体的な繋がりを求めないというのは、驚き……でもないのかもしれないわね。

 確かにどの眷属を見ていても、傍にいるだけで満足している皆様がほとんど。

 ただ性別が女性は見ていて分かるけれど、男性はどうなのだろうと少し不思議に思うところがある。

 女性のように常に一緒に居たいという欲望はなさそうに見えるのだけれど、その辺りはどうなのだろうかと。

 

 その辺りのことも聞いてみたけれど、返ってきたのは小さく首を傾げた疑問の表情だった。

「――どうなのでしょうね? 敢えてきいたことはないから分からないけれど、そちらの欲はないのではないかと思いますわ。ルフなんかはお嫁さんを貰って子供も多く作っていますから」

「そういえばそうでしたね。数回しか会ったことはありませんが」

「男性陣でアンネリたちがまともに会っているのは、ラックとレオくらいではありませんか? 別に避けられているわけではないので、あまり気にする必要はありませんよ」

「そうなのですか? 敢えて会わないようにしているのかと考えていました」

「ユグホウラが外交で表に出る場合は、基本的に人の姿に成れる眷属が出ることになっているからですわ。第一世代の場合は必然的に女性がその役目を負っているというだけですわね」

「そういうことですか」

 ユグホウラの眷属に世代があるというのは、キラから聞いているわ。

 常にキラの傍にいる眷属たちが第一世代で、ユグホウラの中でも力のある魔物だということも。

 

 キラを筆頭に眷属の皆さまと話していると、人族の間では知られていないユグホウラの情報がぽろぽろと出て来ることがある。

 その聞いた話をどこまでしてもいいのかと悩むことが多々あるけれど、はっきりいえばキラも眷属の皆さまも全部話してしまって構わないからこそ話しているように見受けられる。

 もっともキラたちがユグホウラの関係者だと知っている限られた者たちと話をする機会自体が少ないので、聞かれたこと以外は敢えてこちらからは話さないようにすることにしているわ。

 ユグホウラが不可侵の存在であることは、少なくともノスフィン王国では常識となっているので咎められることはない……はず。

 

 キラの単独行動(眷属は除く)が増えて来た分、私たちの傍にいる眷属から話を聞く機会も増えてきているわ。

 だからといってユグホウラの全てのことが分かったとは思えないけれど……一般的には知られていないことも知ることができるようになっている。

 これからも一緒に行動する限りはどんどん増えていくのだろうと、シルクと話をしていて漠然と考えていた。




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m(__)m

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