(4)合流と今後の方針

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 南極大陸やオセアニアの攻略状況を聞いたり、様々な環境での実験などをしながらあふれ出る魔力を押さえる訓練をしていたら半月が過ぎていた。

 マナに対する五感を得た(マナに触れた)ことにより体内にある魔力が一気に増加したことで漏れ出してしまうということは、その溢れる魔力をどうにかして抑えなければならない。

 その抑え込みにどうしてそこまで時間がかかったかといえば、単純に体内に溢れる魔力を閉じ込めようとするだけではだめだと気付くのに時間がかかったためだ。

 最初のうちは、魔力珠に移そうとしたり箱のような物をイメージしてその中に閉じ込めたりしようとしていたのだけれど、それでは上手く行かなかった。

 それじゃあ駄目だと分かってひとしきり悩んで、ようやく体内で循環させる量や速さを変えればいいと気付いたわけだ。

 要するに体内での魔力の循環効率を上げればいいということで、ここまできても魔力操作が重要だったということになる。

 ただそこに気付きさえすればあとは今まで通りの訓練を続ければいいということで、結果的に半月という期間がかかってしまったということになる。

 体内にある魔力が増加したことによって多少訓練も難航したが、どうにかそれだけの期間で抑えることができたのは個人的には早かったと考えている。

 

 満足できるくらいまで漏れ出る魔力を押さえることができたあとは、しばらく顔を合わせていなかったアンネリたちのところへ向かった。

「久しぶり。今回はどう?」

「大丈夫だと思うわ。……たぶん。私は前回のイメージが残っているから少し基準がずれている気がするけれど。……アイリはどう思う?」

「私も同じですわ。恐らく大丈夫だと思います」

「うーん、そうか。かといって、ハロルドたちも前回会っているからなあ。アーロたちにも確認してもらうか」

「そのほうがいいと思うわ。彼らとはまだ会っていないもの」

 壁を越えてすぐに来た前回は、ダークエルフのアーロたちと会うことはできなかった。

 それを利用すれば、今の状態で『一般的』と言えるかどうか確認してもらえるはずだ。

 ただしこの『一般的』という感覚は、あくまでも人族の範疇に収めて考えても不自然ではないかどうかという範囲になる。

 

 というわけで早速別室で休んでいたダークエルフたちを呼んで確認してもらったところ、特に問題ないということが証明された。

「言われたとおりに『人族じゃない』と呼ばれないような範疇に納まっている程度ですが……」

 ――というのがアーロの弁だったが、これ以上は今すぐにどうこうできるわけではないので構わないということにした。

 今以上に魔力の漏れを押さえるとなると、さらに半月どころか下手をすれば半年以上かかるかもしれないから。

 

「うん。まあ、一見して化け物とか呼ばれないようならそれでいいや」

「そうですか。それでしたら大丈夫……いや。むしろ深く探られると言われる可能性はあります」

「探る……専門職とかが魔力探知するとか?」

「そうですね。現に私も似たような技でキラ様の魔力を見ているわけですし」

「それなら仕方ないってところかな。逆に専門職が相手なら牽制になるからいいんじゃない?」

「そうお考えなのでしたら、今の状態で大丈夫でしょう。……私たちも里から出ていなかったので、あまりあてにならないかもしれませんが」

「そこはもう仕方ないよ。それも含めた上で見てもらったんだし。いざとなったらダークエルフの里で訓練していたらこうなったとかで誤魔化すよ」

「初めての方にはそれで通じるでしょうが、顔見知りの相手にはどう説明されるのですか?」

「そっちは今更説明はいらないかな。どのみち人並み外れていたことはばれているから」


 まだまだ二周目の方が人生経験(?)が短いので、人族の知り合いは少ない。

 そのためさほど影響はないと考えている。

 今回は初見さんと会っていきなり化け物(魔力)扱いされなければそれでいい。

 どちらにしても知り合いには戦闘方面で化け物扱いに片足を踏み入れそうになっているので、今更ともいえる。

 

 一応常識(?)の範囲内には収まったことが分かったので、アーロたちとは別れて今度は子供たちと久しぶりに会話をすることにした。

「オト、クファ、久しぶりだね」

「キラ先生だ。お久しぶりです!」

「今回は随分と長かったですね……あれ? ちょっと以前と違っている?」

「オト、どういうこと?」

「おや。オト。どこがどう違っているか、教えてもらえるかな?」

「え、うーんと? どこがといわれるとちょっと言葉にしづらいのですが、何か魔力が変わっているような……? あと、魔力操作も以前とは全然違っています」

 首を傾げながら答えて来たオトを見て、内心では驚いていた。

 オトは確実に、マナに触れて変わった魔力を見抜けているらしい。

 

 クファに聞いてみると「そんなものはわからない」という答えが返ってきたので、本当にオトだけが見抜けているようだった。

 すぐ傍で話を聞いていたアンネリやアイリに視線を向けてみたものの、返ってきた反応は揃って左右の首振りだった。

 となるとオトだけが見抜けている何かしらの理由があるはずなのだけれど、その答えはすぐにわかった。

「緑魔法が使えているかどうかかな……? もっといえば、ドルイド見習いだからとか」

「ええ。恐らくね。緑魔法が先なのか、ドルイドが先なのかは分からないけれど」

「それは今のところ議論できる余地はないよなあ。俺とオトしか例がない以上は、判断のしようがないし。……それよりも」

 アンネリと会話をしながらジッとオトを見た。

「もしかすると同じ緑魔法が使えるから細かい変化にも気付けているのかな?」

「それはあるでしょうね。それ以外は……正直今のところはよくわからないんじゃない?」


 大人組が揃って首を傾げていると、それに合わせるようにオトとクファも同じような顔になっていた。

 それを見ていると可愛いという感情が沸いて来て思わず頭を撫でたくなってしまったが、それはグッとこらえておいた。

 子供たち、特にクファの成長は素晴らしく早く、既に子ども扱いされることを嫌うようになってきている。

 精神的にも順調に育っているようで喜ばしいと思えるけれど、反面寂しいと思う気持ちが沸いて来るのは仕方ないことだと思う。

 

 ――とまあ子供にとっては煩わしいと感じる大人な考えは脇に置いておくとして、無事に拠点に戻ってきたことで今後の予定も話しておくことにした。

 ただ話すといっても既に予定は決まっているともいえる。というのは――、

「クラン本部から連絡が来たんだけれど、今ちょっと困ったことが起こっているらしい」

「あら。カールやラウから救援要請? 珍しいわね。ということは、これからヘディンに移るということでいいのかしら?」

「うーん。全員で移動するかどうかも微妙なところなんだよね。こっちの作業が……特にアイリの作業がどうなっているかが気になるところかな」

「私でしたら特に問題ありませんわ。こちらの巫女たちとの情報共有もほぼ終わっておりますし、より詳細の調査となるとどこまででもできますから」

「そっか。それだったら全員で移動してもいいかな。他の皆も問題なかったら久しぶりにヘディンに戻ることにしようか」

 ――ということになった。

 

 ヘディンで起こっている問題については、ホームにいるときに眷属から聞いた話になる。

 今回は特にどこかの組織がバックについているということではなく、クラン員間の問題として聞いている。

 それはそれで少しややこしい問題なので、出来ることなら俺がいた方が良いのではないかという提案だった。




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m(__)m

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