(18)世界

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「とりあえず私が直接お話したいことはここまでです。その他にも細かいところがお知らせとしてありますが、そちらはシステム上でご確認ください」

「細かいところ、ですか。例えばどんなものかお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「構いませんよ。代表的なものでいえば、世界樹が進化の条件を満たしたとかでしょうか。主にキラさんが転生先で生きている世界に関わる話になります」

「ああ。プレイヤーとしてというよりも転生先での変更点といったところですか」

「そうなりますね。――他には質問はありますか?」

「ええと……ない……くはないですね。先ほど聞いたお話は、掲示板とかに書いてもいいのでしょうか? 直接話をするとか」

「それは構いませんよ。壁を越える時点で制限をかけているのは、情報を気軽に知って越えることがないようにしているためですから」

「なるほど、壁突破の方法さえ知らせなければいいのですね。そういうことでしたら知らせようと思います」


 運営にとっては、『答え』を知った状態で壁を越えるようなことはしてほしくはないというわけだろう。

 先ほど聞いたマナに関する情報を知れば、そこまでする理由も分からなくはない。

 それに他サーバーと関わることができるようになると知られれば、恐らく大半のプレイヤーが壁の突破を狙い始めるだろう。

 もっとも今でもプレイヤーの半分以上は壁を突破しようと地脈の中をウロウロしているはずなので、その情報がなくともあまり変わらないかもしれないが。

 

「それ以外にはございますか?」

「いえ……ああ、そうか。これからも中央にあるマナの部屋? ――で、訓練はしてもいいのでしょうか?」

「勿論です。むしろそのための場所ですから。これから訓練を積み重ねて長い時間いても大丈夫なようにしてください」

「……そんな情報まで頂いていいのですか?」

「構いませんよ。むしろそれをしないとこれから先、何もできませんから」

「それは……ありがとうございます」


 何となくネタバレっぽいことを言われたような気もするけれど、ありがたい話だったので礼を言っておく。

 少なくとも俺の場合は、この程度の情報を貰ったくらいでネタバレだと騒ぐつもりはない。

 むしろこれから先の訓練のやる気に繋がるので教えてくれてありがとうとお礼を言いたいくらいだった。

 もっとも何となくだが、アルさんの顔が少しばかり「しまった」と言っているような気がしたので、これ以上を探る気にはならなかった。

 そう思わせるためにわざと顔色を変えたということも考えられるが、あまり深いところまで話を聞いても面白くなくなるので、それはそれで構わない。

 

 そしてこれ以上の質問はこの場では思いつかなかったので、ここでの話はこれで終わりとなった。

 この先何か疑問があれば地脈の中央に来れば答えてくれると言ってくれたので、何の心配もなく話を終えることができた。

 その後は掲示板で載せてもいいと言われた二つの重大な話を書きこんで、反応を待つことにした。

 案の定、掲示板は大騒ぎとなるのだがそれはまた別の話。

 とにかくプレイヤーにとってはマナに触れることの大切だということを知らせることができたので、あとは各々の方針に任せることになる。

 何もサーバーにいる全てのプレイヤーが、他サーバーとの交流を求めなくてもいいと考えているから。

 

 掲示板の騒ぎを横目で見つつ、こちらは更新された内容を確認し続けていた。

 更新された内容といっても主に世界樹のことと今の身体の変化のことが主で、こちらはステータス内の変化に留まっている。

 ただしステータスが変わったということは色々なことにおいて変化があったということなので、これからどんな風に変わったのかを確認しないといけないだろう。

 一番大きく変わりそうなのは、アルさんもチラリと触れていた世界樹が進化の条件を満たしているということになる。

 

 世界樹が進化するということはこれまでの経験でより多くのマナを扱えるということでもあるので、これからのことにも大いに役立ってくれそうだ。

 折角条件を満たしているのに拒否するという選択肢はないので、早速ホームに戻って世界樹の進化を行うことにした。

 ……のだけれど、これまた今までの経験上長い期間動けなくなりそうだったので、きちんと事前にアンネリたちに直接話をすることにした。

 もっとも世界樹の進化云々の話はしておらず、ユグホウラでちょっと問題が起こっているということにしておいた。

 

 世界樹が進化するということは、眷属たちも揃って進化ができる余地が生まれるということになるので、嘘は言っていない。

 世界樹という大樹に進化という概念があることは気軽に話せるようなことではないので、こればかりは仕方なしにごまかしの論法で通させてもらった。

 大人組は何となく嘘……とまではいかないまでも本筋から離れた話だということは理解しているようだが、それ以上を聞いて来ることはなかった。

 特にアイリ辺りは世界樹に関わることだと察しているようで、猶更口にすることは出来ないと考えていそうだった。

 

 とにもかくにも、そんなこんなの細かい準備を整えてからいよいよ世界樹の進化を始めた。

 今回も前回と同じように根元に作られている小屋の中で体を横たわらせて、魂は世界樹の中へと入る予定だ。

「――それじゃあ、行ってくるから体はお願いね」

「大丈夫。床ずれなんか絶対起こさせない」


 力強い言葉をアイから貰えたので、安心して笑いながら用意されているベッドの上に寝転がった。

 世界樹の進化にどれくらいの期間がかかるか分からないので、時々体全体を動かしてもらうことにしている。

 そんなことはするのに栄養面は大丈夫なのかと突っ込みがされそうだけれど、不思議なことに世界樹の中に入っているときは大丈夫だと分かっている。

 恐らくだけれど、世界樹から魔力なんかを通して体全体に影響が生き渡るようになっていると思われる。

 

 全ての準備を整えて、アイたちに見守られながら既に慣れた手順で世界樹の中へと入った。

 そこでは前回行ったように、ステータス画面を出してから止まっている進化を許可する。

 進化の許可を出すと、すぐに進化が始まったことが分かった。

 以前と同じようにその場から動くことができない状態になり、徐々に歪みを大量に吸収したことから止まってしまった魔力の流れを整えていく。

 

 以前の進化と違っていたことは、その流れている魔力と歪みの量が比べ物にならないくらいに増えていたことと、さらにもう一つ特筆すべきことがあった。

 それが何かといえば、今回ははっきりとマナの流れが分かったということだ。

 壁を越える前に根と葉でマナの処理をしていることは分かっていたけれど、今回の進化ではそれをはっきりと感じ取ることができた。

 そのお陰かマナに対する感応度というか、探知できる能力も上げることが自然と訓練することができた。

 

 マナは基本的に、魔力や歪みと違って動くことがない。

 だからこそ魔力や歪みに変換するという工程を挟んでから世界にその影響を及ぼすことに

 そうした『理屈』が、実感を伴って理解することができた。

 マナの持つエネルギーはそのまま世界の持つ力であり、その力を利用して様々な法則が働いているということだ。

 

 世界樹の進化に伴って、それらのことを理解することができた。

 そしてそれらすべての作業を終えるときには、特に何事もなく世界樹の進化もしっかりと終えていた。

 最後に進化を終えた世界樹の中で世界樹のステータスを確認すると、種族が《世界樹(伝説)》から《世界樹(世界)》へと変化していることが確認できた。




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m(__)m

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