(17)重大な話

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「まず始めに言っておきますが、これからお話しすることはシステム内のメッセージに書かれております。もし後から確認したいことなどありましたらそこをご覧ください」

「あれ……? メッセージとして記載されているのに、わざわざ来られたのですか?」

「あの『壁』の突破は私たち運営にとっても重要な意味がありますので、きちんと顔を合わせてお話したほうがいいということになっております」

「なるほど。だとすると案内人さんがこれから大変そうですね」

「ご心配ありがとうございます。ですが、全てのプレイヤーに私が対応するわけではありませんので、ご心配なさらずとも大丈夫ですよ」

「あれ? そうなんですか」

「はい。基本的には希望制になっております。キラさんの場合は立候補者が多かったので、混乱を避けるために私が来ることにしました」

「ええっと……? 何か珍獣でも見ためとか、そういう理由からでしょうか?」


 妙なところで人気があると言われたけれど、全く実感がなくそんな頓珍漢なことを聞いてしまった。

 それに対して案内人さんは「まあ」と言いながら面白そうに金色に輝く目を円めながら、右手を口元に当てて笑っていた。

 何というか、いわゆるプレイヤーの観察において上から数えたほうが早いくらいには人気があるらしい。

 自分の知らないところで人気を獲得していたと知って何とも面映ゆいと感じてしまうが、案内人さんからは悪目立ちしているわけではないと感じたので素直に喜んでおくことにした。

 

「――そういえば、私の名前はアルハサエルと言います。長いのでアルとでも及びください」

「アルさんですか。わかりました」

 無事に(?)案内人さんの名前をゲットしたところで、彼女はさらりと本題に入った。

「まずは壁の突破、おめでとうございます。サーバー内のみならず全てのプレイヤーで初の快挙になります」

「それは嬉しいですけれど……全てのプレイヤーなんですね。宇宙ものとかのプレイヤーは関係ないと思っていたのですが」

「こちらのサーバーでは共通してマナと呼んでいますが、そういった方面サーバーですとエネルギーと呼んだ方が理解がしやすいと思いますよ」

「エネルギー……なるほど。そういうことですか」

 一言でエネルギーといっても元の世界でも、その性質によって位置エネルギーや自然エネルギーなど様々な呼ばれ方をしていた。

 そうしたエネルギーをひっくるめた根源的な力を『エネルギー』と呼ぶということだと考えることにした。

 

「――一度でもマナに直接触れたキラさんでしたらお分かりかと思いますが、マナは世界を作る最も根源的な力になります。勿論、魂も含めてのことになります」

「まだほんの少ししか触れていないのであまり実感はわきませんが、何となくわかります」

「今はまだそれでいいです。キラさんも、これから壁を越えて来るプレイヤーたちも、徐々に分かって来るはずですから。そんなマナだからこそ、触れることができる者は厳しく制限しております」

「魂なんかを気軽に扱われては困るでしょうからねえ。だとするとプレイヤーはいいのかと疑問は浮かびますが」

「きちんと『審査』はしておりますから大丈夫ですよ」

「審査ですか。上司さんが蟻の観察と公言しているのはそういうこともあるのですね」

「あれは完全に上司の趣味なので間違いありません」


 一応のフォローを入れておいたのだけれど、アルさんは速攻で否定してきた。

 とはいえ運営がプレイヤーの行動を逐一観察していたのは、マナに触れる資格があるかどうかの審査を含めていたのは紛れもない事実だろう。

 アルさんが言っているのは、別にわざわざこのような形を用意して審査をしなくても大丈夫だということだろう。

 そういう意味で、上司の趣味だというのも間違いではないという言い分も分からなくはない。

 

「……コホン。とにかくマナに触れるということは魂の状態になっているというわけです」

「本当の意味?」

「ええ。早い話が何度も人生を繰り返すことができるプレイヤーののままということです。……意味が分かりますか?」

「……プレイヤーであっても素の魂の状態で攻撃されると、復活できなくなるということですか?」

「さすが。ご理解が早いですね。その通りです。正確にいえば、輪廻の輪に戻ると言えばわかりやすいでしょうか」

「輪廻の輪……キャラメイクした時のあの人たちのような?」

「そうなりますね」


 今となっては懐かしい思い出となっているけれど、かつてこのゲームもどきの世界から追放された者たちがいたことを思い出した。

 その時に彼らを追放したのはまさしく目の前にいる案内人さん――改め、アルハサエルさんなのだけれど、今となってはあれくらいの処置はしても当然だと思っている。

 そもそもこの世界で活動で着ていること自体が特別なのであって、それ以上の特別を求めようとした彼らが追放されるのはやむを得ないないと。

 

 いずれにしても『マナに触れている』状態がプレイヤーにとっても危険だということはよくわかった。

「――ああ。もしかして、広場が非戦闘区域になっているのもそういうことが理由ですか? いずれはマナに触れた状態で交流することもあり得ると」

「フフフ。さすがキラさんですね。その通りです。運営側も無用な争いや事故でプレイヤーが去ってしまうのは悲しいですから。――そのように驚かれなくとも、これだけの付き合いをしていれば、私たちにも様々な感情だって湧いてきますよ」

「そ、そうですか。失礼いたしました」

 最初の頃の事務的な対応とは真逆の反応に思わず驚いてしまったが、確かに言われてみれば納得できる気もする。

「謝らないでください。それよりも話の続きを。すべき話として重要なうちの一つは今話した魂のことで、あともう一つあります」

「もう一つ」

「はい。先ほども申し上げた通り、マナは世界の根源的な力となります。それに触れることができたということは、に触れることができるということも意味します」

「別の世界……? ……って、まさか!?」


 アルさんが言いたいことが伝わってきて、本気で驚いてしまった。

 ここでいう別の世界というのは、同じサーバで生きている別のプレイヤーの世界というわけではない。

 敢えて言葉を強調して言うということは、すなわちそういうことだ。

 そう。別のサーバー世界で生きているプレイヤーと触れ合うことができるということになる。

 

「フフフ。ご想像通りで間違いないと思いますよ。ただ、残念ながらというべきか、ショップの解禁の時と同じようにマナに触れた状態のプレイヤーが増えない限りは交流することは不可能ですが」

「ああ~。それは確かに残念……というか、その言い方だとまだ他にはいないということですね」

「ええ。同じサーバーのプレイヤーは勿論、他のサーバーにもマナに触れた者はいないようですね。ちなみにあなた以外に一番近いのは、竜種のラッシュさんになります。さすがですね」

「おっと。ここでその名前を聞くと思いませんでした……いや、意外でもないのか」


 同じサーバー内だけではなく全プレイヤーの中でと聞くと驚くけれど、ラッシュならばという思いもある。

 それにしてもここまで大きなことになるとは思っていなかったけれど、確かに理屈を聞けば納得できる……ような気もする。

 魂だのマナだの元の世界の『常識』からすれば何を馬鹿なと言われそうな理屈ではあるけれど、この世界ではそういうものだと納得するしかない。

 とにかく『マナに触れる』ということがプレイヤーにとっても大きな出来事だということは、アルさんのお陰で認識することができた。




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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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