(16)突破
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ダンジョンの中で閃いたのはいいとして、問題はその思い付きをどう実行していくかということだ。
まずマナがあるという部屋か空間は、壁で隔たれただけの物理的に繋がっている場所ではないという予想はいい。
その物理的には離れた空間に、どうやって移動するかということが次の難問になる。
それこそダンジョンの転移陣のように転移すればいいというわけではない。
そもそもマナがあるという場所がどういうところにあるかもわかっていないので、転移先がどこになるのかも分からない。
そのため転移しようにも転移先が分からないので、目的の場所に到達することができないということになってしまう。
いくら転移ができたとしても転移する先が分からないのでどうしようもないというわけだ。
いっそのことダンジョンのように転移陣のようなものがあればいいのだけれど、残念ながらこれまでの探索でそんなものは存在していないことは分かっている。
そんなことをループ気味に考えてみたもののそう簡単に答えなど見つかるはずもなく、ダンジョンから帰ってきた翌々日には地脈の中央に向かった。
頭で考えても分からないのだから、現地でウロウロしてみようという脳筋的思考で問題解決を試みてみる。
そして中央や中央付近の地脈の中をウロウロしながら時間的に一時間ほど経ったときのこと。
あることに気付いて、壁のある場所まで戻ってきた。
「やっぱりというか、当たり前だけれどここらあたりの魔力にもきちんと流れがあるよね」
ガイア曰くこの壁はマナのある空間と中央を隔てているだけではなく、マナから魔力への変換も行っている場所になる。
となるとマナが生み出された時にその場に留まっているだけではなく別の場所に移動するための『流れ』があるのだろうと考えたのだ。
その考えは当然のように当たっていて、魔力が壁の中から中央の空間へと流れていくことがわかった。
そのことが分かった時にどこかで似たようなことを感じたことが……と思ったのだけれど、すぐに世界樹で感じたものと同じだと思い出した。
世界樹にもマナを魔力に変換する能力がありそれを行っている場所が葉や根ではないかと当たりを付けていたのだけれど、それが間違いではなかったということだろう。
となるとこの魔力の元を辿れば、マナのある場所にたどり着けるはずだ。
問題はそのルートをどうやって辿っていくかということになる。
素直に壁に向かって進めば、これまで通り壁にぶつかってそれ以上進めないことはわかっている。
となるとその進み方を工夫する必要があるわけで……ということを考えていた時に、ふと『そういえば、魔力の流れを意識して移動したことはなかった』ということを思いついた。
今までは単純に壁に向かって進んでいただけで、それはどちらかといえば物理的な移動になる。
それならば、魔力的な動きで移動すればどうにかなるのではないかと考えたわけだ。
要するに物理的な移動ではなく魔力的に移動することになるわけで、そうなると気が付いた時には魔力珠の中から魂だけが出て魔力の逆の流れに乗っていた。
あまりにも自然な行動だったのでそのことは後で気付くことになるわけだが、理屈を考えればそうなるのは当然のことだと思える。
とにかく魂だけの状態になったまま魔力の流れに逆らって移動することだけに集中して進んで行くと、これまで引っかかっていた壁をするりと乗り越えることができた。
これも後から分かったことだけれど、大切なのはあくまでも魔力の流れに乗ることであって魂だけの存在になるだけでは壁を通ることができないということだ。
早い話が、中央まで長く地脈を旅してくることにも意味があったということになる。
魔力珠の中に入って移動することに関しては、そちらの方がおまけだったということになる。
もっとも完全に無駄だったわけではないことも、あとから知ることになる。
とにかく壁を乗り越えることはできたのは事実で、そのことを気付いた時には久しぶりのメッセージが流れて来ていた。
『マナの壁を乗り越えました。各種解放条件を満たしたためメッセージをご確認ください』
慌ててメッセージとやらを確認しようとしたところで、突然今までいなかったはずの声が聞こえて来た。
「キラ様。今はメッセージの確認よりも、まずは身を守ることをしてください」
「えっ、誰……って、案内人さん!?」
驚いたことに、すぐ傍に運営の案内人さんが来ていることに気付いた。
「はい。案内人です。それよりもあまりゆっくりはできないので、急いで守りを固めてください」
「身を固めるって言われても、結界とかでいいのかな……って、魔力がない!?」
「ここはマナで満たされた場所なので魔力はありません。ですが、今のあなたであればマナを動かす方法も分かっているはずです」
「そんなことを言われても……って、あれ? 本当だ。ちゃんとマナが分かる」
案内人さんに言われて改めて周囲に意識を向けてみると、魔力ではないがそれに似ていながらもさらに根源的な力のようなものを感じた。
今まで感じたことのなかった感覚のはずなのに、それがマナだと確信している自分自身に不思議な感情を覚えた。
周囲にあるものは魔力ではないということは分かったけれど、何故か魔力と同じように扱えることはすぐに理解した。
そこで魔力で結界を作るように自分自身と認識している場所を覆うように、マナを動かして結界を作ってみた。
「……これでどうでしょうか?」
「さすがに魔力操作を鍛えているだけのことはありますね。初めてでそこまで出来れば十分です。時間でいえば一時間ほどは持つでしょう。ここではあまり時間は関係ありませんが」
「何か怖いことを聞いた気がするのですが、とりあえず案内人さんがここにいるということも関係しているのでしょうか」
「そうなります。ですが込み入った話になるので、まずは場所を移しましょうか」
案内人さんがそう言った次の瞬間、俺たちはどこかの建物の一室へと来ていた。
何故かガイアも一緒に来ているのは、これからの話に関係があるからなのだろうと推測したけれど、その答えはすぐに聞くことができた。
「ガイア、あなたもお疲れさまでした」
「わざわざ私という姿見など作らずに、最初から会っていたほうが良かったでしょうに。素直では――」
「それが出来ない事情があることは貴方も知っているでしょうに」
そんなことを言いながらも、案内人さんは腕の一振りでガイアを消し去っていた。
消したといってもその場からどこかに飛ばしたというだけで、存在そのものを消したわけではないことは感覚的にすぐにわかった。
地脈の中央にあるマナに触れたからなのか、あの星が消えていないことが体感的に実感出来ている。
それに、どこか案内人の表情の中に照れ隠しのようなものが見え隠れしていることも、その感覚が間違いではないと訴えていた。
とはいえ今の状況に理解が追い付いていないことも確かなので、戸惑ったまま案内人さんの美しい顔を見てしまった。
「ええと……?」
「申し訳ございません。予定よりも早めのことでしたので、少し慌ててしまいました。――先に申し上げますが、今いる場所はあなたたちプレイヤーが広場と呼んでいる場所の建物の中です」
「広場の……ということは、もしかしなくても運営が管理している中央の建物ですか」
「そうです。それから体も既にいつものものに戻っているので、ご安心ください」
「正直なところ安心すべきことなのかも分からないのですが……ありがとうございます?」
意味が分からずに首を傾げながらお礼を言うと、案内人さんは口元に右手を当ててクスリと笑っていた。
とにかくわざわざ場所を移してまで会っているということは、何かしら話をする必要があるということになる。
その話がどんなものになるのかは分からないけれど、プレイヤーとして重要なものになることは間違いないはずなので、まずはしっかりと案内人さんの話を聞くことにした。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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