(14)久しぶりのダンジョン

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 世界樹で探索をすれば道が開ける! ――という希望を抱いて実行してみたものの、どうやっても解決策は見つからなかった。

 というわけで、しばらくリフレッシュも兼ねて『壁』を越える方法を探すのは止めることにした。

 ただし壁を越える方法を探るのを止めるだけで、のんべんだらりとした生活を送ることにしたわけではない。

 世界樹のあるホームからエイリーク王国の拠点に戻った俺は、アンネリたちとダンジョン探索をすべく準備を整え始めた。

 ダンジョン探索がリフレッシュになる時点で大分この世界に馴染んできているなあと思わなくもないが、たまには魔物との戦闘もしておきたい気分になっていた。

 あまり弱い者いじめは好きではないのだけれど、ダンジョンの魔物は駆除する必要があるということを言い訳にしている。

 もっとも魔物を相手に、弱い物いじめも何もないとは思うのだけれど。

 この世界でそんなことを口にしようものなら、狂人を相手にしているような視線を向けられることになることもあり得るだろう。

 

 久しぶりにダンジョン探索に着いて行くと言うと、特にオトとクファの子供組が喜んでいた。

 考えてみれば二人と一緒にダンジョンに潜る事になるのは久しぶりのことだったので、少し寂しい思いをさせてしまったかと反省した。

 もっとも喜ぶのがダンジョン探索ということなのは大丈夫なのかと一瞬考えてしまったけれど、これもこの世界特有の考え方ということで納得することにした。

 勿論その二人以外の他のメンバーも喜んでいたので、たまには一緒に潜ることもしようと考えされられた。

 

 今回は久しぶりなのでそこまで本格的な探索ではなく、あくまでも場繋ぎ的なものでしかない。

 そんなことをダンジョンの中を移動している最中に呟くと、最近では一緒にパーティとして行動しているアーロがため息交じりにこう返してきた。

「さすがと言いますか、キラ様にとってはここでも散歩程度の感覚でしかないのですね」

「アーロ様。ご主人様を基準にされると常識というモノから外れるので、感心するだけに留めておいたほうがいいでしょう」

「あれ、ハロルド。割とひどいことを言っていない? 俺って一応主ってことになっているよね?」

「仕方ありません。ダークエルフの皆さまには、きちんとした常識を教えないと里に戻った時に変なことになりかねませんから」

 その理由には納得できたけれど、どうもハロルドの俺に対する扱いがぞんざいになっている気がする。

 最近放置気味になっていてご機嫌な斜めなのかと内心で首を傾げたが、割と以前からこんな感じだったかとすぐに納得した。

 こちらが訂正するように言えばすぐに直してくれるだろうが、敢えてしていないからこその言動だともいえる。

 

「それよりお師匠様。私とオトもちゃんと成長しているでしょう?」

「それはびっくりしているよ。ちゃんと言われたように訓練を続けていることが良く分かるよ」

 最近より大人びて来たクファが、珍しく褒めてと言わんばかりに笑顔をこちらに向けて来た。

 考えてみれば、そろそろあちらの世界だと中学生に上がった年齢になっているので、精神的に成長していてもおかしくはない。

 それでも時折こうして子供っぽいところを見せて来るのは、やはり信用されているからだと思いたい。

 

 それはともかく、オトとクファは戦闘に関しても驚くほどに成長している。

 普通であればこのくらいの年齢の子供が相手に出来ないような魔物も慌てず騒がず対処出来ていることは、驚嘆に値することだと思う。

 順調に冒険者としてはエリート路線に進んで行っているようで、保護した身としてはホッと胸をなで下ろしたいところだ。

 

 今のところは皆が戦っているところを後ろから観察しているだけだが、きちんとパーティとしても成長していることがよくわかった。

 今回は一緒に着いて来ているアイリはエイリーク王国に来てからは歪み関連のことに関わっているので、ダンジョン探索はほとんど出来ていない。

 それにも関わらず、ちゃんとしたパーティとして動けているところが凄いと思う。

 年齢やら種族やらがバラバラで周りから見ればどんな流れでこんなパーティになったのかと思われそうだけれど、結果として上手く行っているらしいのでこれも安心できる材料となっている。

 

 そして肝心のストレス解消はどうなっているかといえば、正直なところ皆の動きを見ていて既に満足していた。

 自分でも驚いているけれど、特に子供たちの成長を見ることができただけで嬉しくなって、ここ最近の緊張感が薄まっていることには驚いた。

 それだけ自分が単純だともいえるのかもしれないけれど、それ以上に子供たちのことを家族として受け入れているんだと実感することができた。

 以前から、というよりも二人を引き取った時から自覚はあったのだけれど、今回改めてそのことを感じることができたのは嬉しかった。

 

 ちなみにトムとシーリに関しては、端から見てもラブラブでしかないので全く心配していない。

 当人たちはそんなつもりはないという態度を取っているつもりなのだろうが、全く持って隠すことができていない。

 トムは奴隷のままなので少しだけ大丈夫なのだろうかと不安もあったのだけれど、シーリは全くそのことを気にしていないのかトムのことを奴隷扱いすることもない。

 周りの環境がそうさせているということもあるのだろうけれど。

 

 その後は子供たちからせがまれて魔法を披露したり、自分自身が混じっての連携を確認したりと戦闘も行った。

 ドルイドは基本的に魔法職なので、自ら動くことはない――わけではなく、ちゃんと動きながら魔法を使えるようになっている。

 それも魔力操作の訓練を行っているからこそできることで、逆にいえばそれを怠るとただの固定砲台にしかならない。

 

 ちなみにこの世界の魔法職、特に冒険者の魔法使いはしっかりと移動しながらの魔法を使えるようになっている。

 ただし職業軍人の魔法使いは、ほとんどが固定砲台になっている。

 この差は、少人数か集団で戦闘を行うかの差から来ている。

 多くの近接組から守られることが約束されている軍単位の魔法使いは、冒険者の魔法使いほどに動き回る必要がないともいえる。

 そもそも軍がぶつかる戦争では複数人で協力して大魔法を生み出すというのが主流になっていて、個人で動き回るということはほとんどないそうだ。

 

「――というか、こんなことは基本中の基本なんだけれど……やっぱりキラってところね」

「申し訳ない。何分戦争なんてほとんど縁がなかったから」

 ほんの少しだけ呆れが混じったような視線をアンネリから向けられて、思わず頭を下げてしまった。

 これからも国同士の戦争に関わることはないだろうが、知識として知っておくことは大事なことなのできちんと礼はしないといけない。

 

 ちなみに一周目の時は戦争と呼べるような戦いもしてきたけれど、そもそも味方の側は魔物の集団だったので人族同士の戦いとは違っている。

 数と個人個人の武勇だけで押すだけではなくそれなりに戦略も使ってはいたけれど、それ以上の力を発揮する場がなかったともいえる。

 それだけユグホウラの戦力が他を圧倒していたともいえるのだが、経験不足と言われればそれまでの状態だったともいえる。

 もっともこれから先も国同士の戦争に関わることはないだろうと考えているので、得た知識が実戦で必要になるかは微妙なところだ。

 

 とにかく久しぶりのダンジョン探索も順調に進んでいて、アンネリたちにとっても初めての階層というところまで来ることができていた。

 あとはどこまで行って引き返すかが重要になって来るのだけれど、皆のやる気はまだまだあるのでもう少し先に進もうと考えていた。




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m(__)m

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