(13)世界樹の探索

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 魔力や歪みがマナによって繋がっているのだとすると、大元であるマナを『視る』ことができるというひらめきに夢中になっていた俺は、引き続きどうすればマナを見ることができるのかを考えていた。

 そしてそもそもを辿れば、魔力と歪み、さらにマナが一堂にあるはずの場所があることにすぐに気付くことができた。

 何のことはない。世界樹の中であれば、その三つが揃っているはずなのだ。

 元は世界樹がマナを処理して魔力を生み出しているということこから始まっていて、それに加えて歪みを処理するという能力も増えている。

 今までは魔力の流れと歪みを取り込んだ場合の処理をしてきたけれど、どこかでマナを処理しているはずだ。

 魔力の大元と予想されているマナが特定の場所に留まっていると考えることが正しいかは分からないけれど、何かしらの方法で処理していることだけは確かだ。

 地脈の中央に着いた今ならその場所も見つけることができるのではないか――そう淡い期待を抱いての考えでもある。

 さらにいえば、壁を越えるための方法を考えることが行き詰まっているので、時には別の方法を試してみたいという思いもある。

 

 というわけでアンネリやアイリたちには話をして、翌日からはホームに飛んで世界樹の中で探索を行う。

 世界樹もステータスでいえば《伝説》レベルまで上がっているので、物理的にもかなりの大きさになっている。

 今の状態になってからは詳しく調査していなかったので、ちょうどいい機会だと言えた。

 世界樹の中を動き回って何か新しいもの発見できるかは分からないけれど、今の世界樹の状態を把握できるだけでも何かしら得るものはある……と思いたい。

 

 そんな打算的なことを考えつついつものように精神だけを世界樹の中へ移して、世界樹の中の探索を開始した。

「――進化してから何度も入っているけれど……ちゃんと確認するのは初めてだからなあ。少し楽しみだ」

 口があるわけではないので音にもなっていないが、多少の気合を入れるために脳内で呟いてみた。

 当然のように、誰かからの答えがあるわけではないのだけれど。

 

 魂だけの状態になって世界樹の中を移動するのは慣れたもので、スイスイと進んで行く。

 時折歪みの処理が留まっていて所では手助けをしつつ、地脈の時とはまるで違った早さで探索を進めて行った。

 世界樹の中は自分にとってはホームなので、あまり戸惑うこともなくどんどんと進めることができていた。

 ただしやはり物理的な大きさの変化は中の大きさの拡大に繋がっていて、知っているはずのところも『道』が広く(太く?)なっていたりしている。

 

 地脈探索の時と同じようでもあり違った感じでの移動は、不思議な感じがしている。

 それでも世界樹の中での移動が慣れているので、戸惑いといったようなものは起こらなかった。

 むしろこうやって比べてみれば、地脈の中の移動がいかに苦労していたかがわかる。

 世界樹の中は自由自在……とまではいかなくても、ほぼストレスなしに移動することができている。

 

 世界樹の中を探検し終えた次は、いよいよ本題であるマナ探しになる。

 世界樹がマナから魔力を作っていることは確かで、でその作業を行っている……はずである。

 そのどこかが木の中の全体で行っているのか、特定の場所で行っているのかは分からないのだけれど。

 もし特定の場所で変換作業を行っているのであれば、何かしらの変化があるはずなので特定できるのではないかという目論見だ。

 

 マナの変換している場所を探すためにまた世界樹の中を探索することになるわけだが、今度はより注意深く周囲を観察しながらの探検になる。

 魔力の中に歪みという異物があればすぐに気付けているように、何かしらの違いが見つけることが目的になる。

 そうして始まった世界樹の中の探検だけれど、やはりというべきか簡単にはその違いは見つけることができなかった。

「――木の中の全体で行っているとしたら、逆に違いがないということになるからなあ……」


 そう考えると、何度うろついても違いが見つけられないということも納得できる。

 逆にいえば、世界樹の中でマナを認識するという目論見が外れるということにもなるわけで。

 流石にそれは勘弁してほしいなと思いつつも、できる限り隅から隅まで世界樹の中の探索を進めて行く。

 それでも何度目かの探索のあとに、やはり見つけられないという結果が出てしまって落胆しそうになった。

 

 落胆してはやり直しの日々を数日過ごしていたけれど、何度も何度も木の中を巡っているとあることに気が付くことができた。

 移動している最中はその変化が緩やかだったので気付けなかったのだが、木の頭頂部……というか葉のあるところと根の先辺りに行くと魔力の濃度が濃くなっていた。

 濃くなっているといっても数値でいえば一パーセントにも満たない程度の変化だと思われるので、中々気付くことができなかった。

 めげずに何度も通ったお陰だと言えるのかもしれないが、それよりもその差が何を意味しているのかを考えることに集中することにした。

 

 まず濃度が違うということは、物理学的(?)に考えれば濃い所から薄い所に移動しやすいということが考えられる。

 魔力なだけに物理法則が通用するかは疑問なところがあるけれど、一旦それは横に置いておく。

 それに実際、魔力は葉と根から中央に向かって移動しているので、恐らくその法則は当てはまっていると思われる。

 となると世界樹は、自分自身の先端に当たる部分から魔力を集めているということになる。

 

 ――と、ここまで考えたところでふと疑問がわいてきた。

 そもそもこの世界の生き物は、最初から魔力が体内を巡っている。

 それなのに世界樹だけが魔力を周囲から集めるなんてことあるのか、と。

 そして、その疑問が浮かんだ次の瞬間にはその答えを得ていた。

 

 何のことはない。

 恐らくだが、根や葉で物理(生物)的に様々な作業を行いながら、別の所ではマナを魔力に変換する作業も行っているのだと。

 だからこそ根や葉がある場所では魔力が濃くなっていて、変換作業をしていない中央に向かうと魔力の濃度が薄くなっていくのだと。

 だとすれば、根や葉を詳しく調べれば、マナに関する情報も出て来る――かもしれない。

 

 そんな期待に元、葉や根の部分を何度も観察しては戻るということを繰り返し続ける。

 時には地脈の中央に戻って何か共通点のようなところはないかということも確認しておく。

 そんなことを繰り返し続けること早一週間。

 ついに気づいてはいけないとあることに気が付いてしまった。

 

「――そもそもの目的が壁を越えることだったよなあ……」

 今更ではあるが、そんなことを思い出して急にやる気が萎えてしまった。

 世界樹の中で恐らくマナに関わっているであろう部分を見つけるという目的は達成できている。

 問題は、そこでマナらしき存在に『触れる』ことができていないことだ。

 

 恐らくそこでマナに触れることができれば中央にある壁も突破できるのではないか――そんな淡い期待をもとに調べ続けたが、結局ほとんど進展らしい進展はしていない。

 今のままだとどうあがいてもマナに触れることは出来ないだろうと、悪い予感もしてきていた。

 こうなってくると負のスパイラルにはまってしまっていい結果が出てくることはないだろうと思う。

 そこでこれまでのことを整理するために、地脈や世界樹の探索はやめにしてアンネリたちのいる拠点でじっくり考えることにした。




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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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