(8)クランへの関与?

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 アンネリたちにちょっかいをかけてきていた輩は、結局数か月の牢獄生活となった。

 結果からすれば彼らがやったことはナンパの延長でしかないので、むしろ厳しめの判断となったのではないかと思う。

 これでこちら側にけが人など出ていればまた結果は変わったのかもしれないが、あまりに実力差があり過ぎて毎度余裕で対応できていたのが裏目になったともいえる。

 それを裏目ととるかは立場によって変わって来るのかもしれないけれど、そもそもナンパ野郎に気を使う必要はないと思っているので問題はないだろう。

 さらに彼らの処分を付け加えると、次に同じようなことをした場合には町からの追放処分という刑も加わっている。

『大樹の頂』の面々に近づくことを禁止するのではなく、町からの追放になっていることで行政側がこちらに配慮してくれていることがわかる。

 この程度のことで子爵の鶴の一声があったとは思わないけれど、オーラル辺りが何かを言っている可能性はある。

 どちらにしてもこちらから何かをお願いした結果というわけではないので、特に問題はない……はずだ。

 

 というわけで一時の(?)平和を取り戻した『大樹の頂』は、再びいつも通りの活動を再開している。

 最近では子供たちもしっかりと戦力になりつつあるので、その代わりにクランに入っているサポーターの成長を助けることも仕事の一つになっている。

 アンネリやアイリなんかは稼ぎよりもそちらのほうを重視しているようで、積極的に新しいサポーターをダンジョンに連れて行っているようだ。

 お陰でどのサポーターも一定以上の働きができるようになっていると、カールやラウが喜んでいた。

 

 その一方でじっくり地脈探索にいそしんでいる俺はといえば、次の段階に進んだと考えている。

 というのも、以前大きな地脈の流れに入った時と同じように、これまでと違った密度の魔力が流れている場所にたどり着いたのだ。

 まだ中央までは遠いと思われるが、それでも一歩前進したことには違いない。

 それと同時に先に進むための能力向上も必要になっているので、まだまだ中央に到達するのは先のことだと思われる。

 

 地脈探索に関しては他のプレイヤーもまだまだ攻略中という感じらしいので、じっくり進めて行くしかない。

 そんなことを考えながら日常を暮らしていると、『夜狼』のラウから困り顔でとある相談をされることになった。

「――それで? わざわざこっちの拠点にまで来て相談したいことって、何?」

「済まないな。クランの拠点だと聞かれると少し困ることでな」

「おやまあ。拠点内の防諜はしっかりしていると伝えていたのにそんなことを言って来るということは、そういうことかな?」

「お察しの通りだ。メンバーのパーティが一つ丸々、どこかの手が入ったみたいだな」

「あらあら。ラウがそう言って来るということは、もうどのパーティかは掴んでいるんだね?」

「そうだな。あと狙いが拠点に仕掛けられている魔道具らしいってことと、メインはやっぱりアレってことまでは掴んでいる」

 少し困り顔になって相談してきたラウに、なるほどと頷き返しておいた。

 

 この町の孤児出身であるカールやラウたちは、クラン内だけではなく他のクランからも情報を得るための伝手を持っている。

 勿論それらの情報はこちらのクランの情報を渡しつつ得ているものなので、お互い様というところはあるのだろう。

 今更カールやラウがクランのためにならないことまで話すとは思わないので、どの情報を話すかは完全に彼らに任せている。

 もっともカールやラウが知っていることで外に漏れて困るようなことは、ほとんどないともいえるのだけれど。

 

 それはそれとして、今の問題は外部の影響を受けているというパーティのことだろう。

 聞けばこのパーティ。最近入ってきたばかりではあるけれど、そこそこの実力があるためそれなりの発言権があるそうだ。

 発言権といっても初期からいるメンバーには、ほとんど影響があるわけではないとのこと。

 問題なのは、クランにメンバーを勧誘してはその影響力を増やしているということだろうか。

 

「――なるほどね。分かりやすいと言えばわかりやすいけれど……。いっそのことクランの実権を握っても、拠点に置かれている魔道具は自分たちの物にはならないって伝えたら? アレ、完全に俺個人の持ち物だし」

「いいのか? それだけでかなりの財産があるってばれると思うが?」

「今更といえば今更だしね。それに、このタイミングに発覚したってことが気になるかな」

「あ~。もしかしなくても嬢ちゃん方のナンパか。わざわざ結びつけるってことは、あれも裏があったんだな」


 アンネリやアイリへのナンパ行為に、帝国が絡んでいたということまでは伝えていない。

 それでも具体的にどことは言わなくとも、すぐに結びつけるところはさすがと言える。

 

「まあね。ぶっちゃけると、あれも帝国が転移装置を狙ってやっていたみたいでね。実行犯は数か月檻の中だからしばらくは静かになると思っていたんだけれど……」

「あれが潰されたから、こっちが本格的に動き出したというわけか。さすがにナンパ程度では引っかからないと考えていたのか?」

「どうだろうね。成功したら成功したでラッキー程度には考えていたと思うけれどね」

「俺は見ていないが、一応美形を揃えていたらしいからなあ……」

「顔だけ良いのを揃えてもなあ。アンネリもアイリも見慣れているだろうしねえ」

「それだけじゃないと思うが……まあ、それはいいか」


 少し呆れた顔になって言ってきたラウだったが、敢えてそこには気付かないふりをした。

 何を言いたいかはよくわかるけれど、こちらにも事情はあるのであまり深く突っ込んでほしくはない。

 そのこともよく分かっているのか、ラウがそれ以上言って来ることはなかった。

 それよりも今は、クラン内部でかき乱そうとしているパーティの話が重要である。

 

「とりあえずカールやラウは、さっき言ったように釘だけ刺しておいて。こっちではしっかりと背景を調べておくから」

「それくらいしかできることはないか。問題のパーティ以外に伝えてもいいのか?」

「魔道具が個人所有だってこと? それだったら構わないよ。ノスフィン王国であれば一定の立場以上であれば知っていることになるしね」

「そうなのか? それはそれで問題になるような気もするが……ボスがそう言っているならいいか。――わかった。折角だから皆に伝わるようにしておく」


 これで魔道具を自分たちの物にしようとしても意味がないことが伝わればそれでいい。

 それでもなおクランごと手に入れようとするのであれば、魔道具ごと引き上げることも考える。

 もっともカールやラウが実権を握っている限り、そんなことにはならないはずだ。

 正直なところカールやラウを飛び越えてクラン内で力を握ったとしても、俺がいる限りは二人から実権を取り上げるつもりはない。

 

 ラウが帰ったあとは、眷属を呼んでパーティの動きを監視するように伝えておいた。

 これで、すぐに問題のパーティにどの程度まで不明組織が食い込んでいるかが分かるだろう。

 一応不明組織としているけれど、恐らく同時期にナンパ問題が発生したことから帝国の手が入っているのではないかとは考えている。

 ただし思い込みは問題を複雑にするだけなので、そこはしっかりと調査が完了するまで待つことにしている。

 

 あとは調査が終わってからどう対応をしていくかを考えていくだけだ。

 ただしこれで帝国の関与が確実となれば、今まで通りにやられっぱなしにしておくという認識も改めなければならないだろうとは思う。




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仏の顔も三度まで?

ではなくて、スリーアウト!


是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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