(5)魂(精神)の分離について
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分体生成の応用で、魔力珠を半自動化するという目的は達成できた。
とはいえ、まだまだ調べなければならないことは多い。
何よりも見つけた方法でどこまでできるのかを細かく確認していかないと、出来ることと出来ないことの判断ができずに困ることも出て来るだろう。
そのためにも色々と確認すべきことを要点化してから、一つ一つ上げた項目を潰していくことにした。
一番の問題は、自分自身の精神か魂を分けることに問題が出る可能性があるかどうかだけれど、これについては誰も答えを持っていないので自分自身で確かめるしかない。
リスクがあることは承知のうえで調べていくしかない。
魔力珠に向けて分けた魂が、その状態を解除されたあとにどうなっているかは確認できていない。
もしかすると解除すると同時に自然の中に溶け込んでしまっている場合、自分自身の魂が目減りしていくなんてことも起こりかねない。
魂が目減りしていくなどたまったものではないので勘弁してほしいので、できる限り早く答えを見つけておきたい。
とはいえそれこそ魂が関わっているだけに、誰しもが答えを持っているわけではない。
それはプレイヤーにとっても同じだろうが、まずはその辺りに詳しいであろう人に相談してみることにした。
そのプレイヤーは、職業自体が聖女と呼ばれるようになっているハミルという女性プレイヤーだ。
「――キラさんが私に用があるというのは珍しいですね。何かございましたか?」
「そうですね。まずはこちらを見てもらってもいいでしょうか?」
「魔力珠ですか。それが何か?」
「ええと――」
初めに魂の一部を移した魔力珠を見せてから一通りの説明をした。
そして、今一番気にしている魂の目減り問題が起こっていないかを知りたいと素直に話した。
その問題はすぐにハミルにも伝わったようで、少し難しい顔になって首を左右に振っていた。
「それはまた、とんでもないモノを作り出しましたね。分体生成ができるキラさんだからこそ、とでもいうべきなのでしょうが……質問についてはどうでしょうか」
「魂に関してはハミルさんが一番詳しいと思っての相談だったんだけれど、やっぱり分からないかな?」
「そうですね。正直なところ……こちらの魔力珠に魂が乗っているということも、言われて初めて気づきましたから」
「なるほど。でもこの状態でも魂の一部があると分かるだけでもすごいと思いますよ。私にはさっぱりです」
「ありがとうございます。ですが、それだとキラさんが知りたいことの答えにはなっていないですよね。それに、私たちのようなプレイヤーは、住人たちと違って特殊な部分もありますからよくわからないというのが本音です」
期待していた答えではなかったけれど、ある意味では想像していた通りの答えでもあった。
プレイヤーの魂が特殊な状態であるということは、人生を周回できるようになっているという点から見ても確実に分かることだ。
ハミルさんが魂に詳しいとしても、それはあくまでもそれぞれの世界で生きる住人たちの魂についてであって、プレイヤーの魂についてはそれほどではないというのもわかる。
何しろプレイヤーの魂(?)はその人生を終えると即座にハウスに回収されるので、あまり触れる機会に恵まれないという話だった。
「うーん。中々難しいですね。となるとやはり人身御供となるしかないですか」
「そう考えるのはまだ早いのではありませんか?」
「え? でも魂のことについてハミルさん以上に詳しいとなると、誰も思い当らないのですが……?」
「そう言っていただけるのは有難いのですが、確実に詳しい方はいるじゃないですか」
当然のような顔をしてハミルさんだったが、いくら考えても答えは思い浮かんでこなかった。
そんな俺の顔を見て面白くなったのか、ハミルさんは小さく笑ってからプレイヤーたちを管理している運営が常駐している広場の中央方面を指さして言った。
「あちらにいらっしゃる方なら確実に私以上に詳しいと思いますよ。答えを貰えるとは限りませんが、ことは魂に関わることですからね。もしかすると答えてくれるかもしれません」
「あ、あ~……なるほど。確かに詳しいでしょうが……答えてくれますかね」
「どうでしょうね。ですが、何もしないでいるよりもましだと思いますよ。魂に関わる技術となると、私たちがいる世界にも影響を与えるかもしれませんから」
「そう考えると怖くなってきますね。ですが、確かにそう言われるとそういう気もしてきました。……これから聞きに行こうと思いますが、一緒に来ますか?」
「いいのですか? 是非とも運営が何と答えるのか知りたいので、ご一緒させてください」
プレイヤーの魂のことについてなので恐らく知りたいだろうと誘ってみたが、そのまま運営がいるところまでついて来ることに即座に同意してきた。
どんな答えがもらえるにせよ掲示板に内容は載せるつもりだったので、着いて来てもらっても何ら問題はない……というよりも、魂のことについては俺よりも確実に詳しいハミルさんに着いて来てもらったほうがいいのは間違いない。
――というわけで、早速『中央』へ。
中央の建物は広場の役所的(?)存在になっていて、主に不動産関係の取引を扱っている。
とはいえ広場ができた当初こそ多くのやり取りがされていたけれど、ほとんどのプレイヤーが土地と建物を手に入れている現在は、そちら方面で活用しているプレイヤーはあまりいない。
その代わりと言ってはなんだが、折角運営が常駐しているということで様々な問い合わせをするプレイヤーが増えていた。
勿論、問いかけたからといっても答えが得られるというわけではないが、意外な問いに答えを返してきたりするのでふとしたことを聞きに来るプレイヤーもいる。
……中には美女・イケメンとお近づきになりたいと通っている強者もいるが、今のところ上手く行ったという報告は聞いたことがない。
今となってはあまりプレイヤーが訪れることはないとはいえ、業務時間(朝八時から夕方五時まで)は運営が用意した
ちなみにお役所時間で動いているのはほとんどのプレイヤーが土地を手に入れた頃からで、業務で忙しかったころは二十四時間対応をしていた。
そんな窓口にハミルさんと一緒に近づいて行き、魂の扱いについて質問。
すると受付ドールでは適応範囲外だったのか、すぐに上司を呼んでくるといって奥に消えていった。
それから五分ほど待っていると、対応してくれた受付ドールが運営の一人(男性型?)を連れて戻ってきた。
一緒に来た運営は、プレイヤーの皆が知っているくらいの立場の人(か、どうかは実際のところは分からない)だったので、それなりに大事な事態だということはすぐに理解できた。
もっとも連れられてきた運営さんの表情はニコニコと笑っていたので、悪いことではないのだろうということもわかった。
それから別室に案内されて話をすると、特に問題なしという答えが得られた。
これは勝手に話を聞いていた俺が受け取った印象だけれど、むしろどんどん頑張ってほしいと考えているようにさえ見えた。
言葉で聞いたわけではないので、実際どう考えているのかはよくわからないのだけれど。
その運営さんの話によると、分体生成によって魔力珠に分けられた魂は解除された際にはしっかりと元の魂と合流しているらしい。
なので気にすることなく、必要な時にどんどん使うといいというアドバイスももらえた。
珍しく踏み込んだ助言をしてきたことに俺もハミルさんも驚いたけれど、その助言をありがたく活用させてもらうことにした。
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ギフトありがとうございます。
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