(3)アイとの話

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 アイとの話し合いの後、すぐにこれまで思いついたことを纏めるために紙に書きだすことにした。

 

・魔力珠を効率的に稼働するためには、今のところ|機械AI的なものと|眷属的なものの二種類が思いつく。

・前者の場合は文字通り機械的で一定の処理をして動かすことに優れ、後者は自ら考え自立して動くことに優れるが意図しない動きをする可能性もある。

・ただしどちらの場合も、作り方や召喚の仕方によって逆転することもあり得る。

・当初目指していたのは機械的なものであって、眷属のような魂のある存在を作ろうとしていたわけではない。

・機械的なものを作る場合には、複雑な命令を下して処理するためにはより高度な技術が必要になる。

・召喚なりをして魔力珠に魂を宿らせて眷属のような存在を作る場合には、メンテナンスは少なくても済む? (※契約などの内容にも変わって来る)

・どちらも一長一短があって、目的によって差別化を図ることができそう?

・眷属の人形種は、魔法技術を使っていわゆるプログラムに似たようなものを作り出すことに成功している――らしい?


 ――簡単にまとめると以上な感じになった。

 こうして文章にして見ると頭の中で取っ散らかっていた内容がすっきりと整理されると感じる今日この頃。

 何をいまさらと思わなくもないけれど、熱中するとつい忘れてしまいがちになるのでこれは反省すべき点ではある。

 

 それはいいとして、問題なのはこれからどの方向に進むべきかということ。

 方向性があちらこちらにずれまくっているので、アイのアドバイス通りにまずは一方向に定めることに決めた。

 そして決めた結論は、魂のようなものがある存在ではなく、機械的な方へ改良を施すということだった。

 折角閃いた眷属云々については、そもそも新しい眷属を作るだけで十分じゃないかということに今更ながらに思い至っていた。

 ただし折角思いついたことなので、後回しにするだけで完全放置するつもりはない。

 

 とにかく進むべき方向性を決めたところで、まずは魔力珠に機械的な改良をするべく動くことにした。

 そしてまず最初に行ったことは、もう一度アイと話をしてドールたちが開発したというプログラムのような働きをするという魔道具を確認するということだった。

 そもそも何故そんな魔道具が開発されたかといえば、別に歴史的な流れで生み出されたというわけではなく、単に一周目の時に俺自身が簡単にコンピュータの話をしたことがあったからだ。

 一応理系出身であるために、コンピュータの簡単な説明くらいはできる。

 とはいえあくまでも「0」と「1」の世界で動いている機械だということと、それをもとにして複雑なプログラムが作られているといことを話したくらいだ。

 その程度のことでコンピュータの走りのような魔道具を作り出したことは、驚きでしかない。

 ついでにいえば電気の代わりに魔力を使うコンピュータと同じものかといえばそうではなく、あくまでも魔力の入出力によって動いている魔道具を発展させたもの――らしい。

 

「――考えてみれば元々ある魔法陣の動きだって、プログラムのようなものだと考えればいいということかな。少し乱暴な気もするけれど」

「そう。様々な文様を組み合わせて結果を発現する魔法陣とか魔道具は、色々な命令文を組み合わせて作るプログラムと似ている。だからそこまで最初の開発は難しくはなかったみたい」

 魔力を使ったプログラムの開発がされた時、アイは寝ていたので詳しく知ったのは起きてからのことらしい。

「あれ? そう考えると普通に魔道具を開発しているのと同じじゃない?」

「そうともいえる。でも外部からの入力によって違った答えを出すということは魔道具ではできなかった」

「ええと……?」

 途端に難しいことを言われて一瞬戸惑ったが、少し考えるとなるほどと納得した。

 今ある魔道具というのは、いわば電卓のようなもので計算の結果を出す一つの機械としてしか使うことができない。

 コンピュータはそうした機能(アプリ、ソフトなど)を色々と上乗せして、様々なことができるようになっていることが大きな違いといえる。

 

 アイが言ったのは、魔道具ではアプリやソフトは作れてもコンピュータ本体は作れていないということだった。

 また今のところは、出来たとしてもとんでもない大きさになってしまって、とてもではないが実用的ではないとのこと。

 ただこれに関しては、初期のコンピューターが超巨大だったということを考えても、技術の進歩による小型化は期待できるとは思う。

 問題は、そもそもコンピューターそのものが作ることができていないということになる。


「そんなに難しいことなのかな?」

「魔力には属性があることが問題。そもそも複数種類ある信号を一つの機械で動くようにするには、とても複雑になってしまってその分巨大になる」

「なるほどね。でもだとすると普通の魔道具は……ああ、そうか。決まった信号しか作らなくていいから大きさも限られるってことか」

「そう。――魔力を使ったコンピュータは、まだまだ研究段階でしかない」


 そう言ったアイの残念そうな表情を見ていると、いつかは開発してくれそうだという気もしてくる。

 それはいいとして、またまたそもそもの話題から大幅にずれてしまっている。

 今気にすべきことは、魔力珠を改良して今のところ無駄に多い魔力を有効活用できないかということだ。

 出来ればAI的なものを作り出して、半自動的に動くようになってほしい。

 

「今ある魔道具みたいに、攻撃を受けたら半自動で反撃するとかは駄目?」

「駄目ではないね。というか、最初はそのつもりだったし。でもそれだと少し味気ないというか、やっぱりある程度受け答えしてもらえたら嬉しいかなって」

「ご主人様、いきなり高いレベルのものを求めすぎ」

「やっぱりそうなるよねえ」


 アイの直球な言い方に苦笑を返すことしかできなかった。

 そんな高度なものを求めてしまうのは、やはり周囲に眷属たちからいるからということにも気が付いている。

 正直なところ魔力珠を使って反撃システムのような物を作ったところで、常に傍にいる眷属には敵わないだろうということは分かっているのだ。

 となるとやはり知性ある存在と契約なりをして魔力珠の制御を任せた方が良いと考えてしまうわけで……。

 

「――……って、あれ? 待てよ?」

「ご主人様……?」

 ふと、とあることを思いついた俺を見て、アイが不思議そうな顔になってこちらを見てきた。

 ただその『思い付き』に意識を取られてしまっていた俺は、アイのその表情に気付くことはなかった。


「いや、でも、できるかそんなこと……? それに結局、並列思考ができるようにならないと……」

 アイどころか周囲の様子を見ることさえ忘れた状態でぶつぶつと呟いていた俺は、端から見れば怪しいことこの上なかっただろう。

 ただこの時は思いついたひらめきに頭が振り切っていて、そんなことを考えている余裕はなかった。

 そしてアイと話をするため室内のいることを思い出した俺は、そのままスッと立って外に向かって歩き始めた。

「ご、ご主人様……!?」

 後から聞いた話によると流石の眷属たちも突然の俺の奇行(?)に戸惑っていたらしい。

 それでもしっかりと後についてきたのは、さすがと言えるだろう。

 話の流れから何かを思いついたらしいということは分かっていても、時々出て来る言葉からは何を考えているのかさっぱりわからなかったとか。

 そんな周囲の様子に気付かないまま外に出た俺は、多少の被害が出たとしても大丈夫な場所まで移動して、閃いた思い付きを早速試してみることにしたのである。




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m(__)m

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